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わたしの梅物語

5月。

少しふわふわとした表面の青梅をしっかり水につけてアクを抜く。そして水気を丁寧に拭き取りながら、ヘタを竹串で丁寧に取り除いた。

そして瓶に同じ量のきび砂糖を交互に、きび砂糖が梅を包み込むように詰めていって、戸棚の中で毎日瓶を振りながら待った。

6月。

5月に仕込んだ梅たちが、ぎゅっと萎んで、そのエキスが濃縮した液体がどんどん増えていく。

そうして梅を漬けて1ヶ月経って、その出来上がったべっこう飴のような、艶やかな色の液体を、コップの5分の1ほどに注ぐ。

そのコップに炭酸水をなみなみに注ぎ、小さな気泡が踊り狂うその音に少し心を躍らせながら、ぐびっと喉元に気泡たちが通り抜けていった。

初めて作った梅シロップの梅ジュースは、それからというものの私の執筆中のお供になった。

9月。

梅のクエン酸が夏の暑さを飛ばしてくれて、3ヶ月くらい経った。

3つあったはずの梅シロップの瓶は、もう既に最後の1つ。

残り少ない最後の1つの中身が減ることに、名残惜しい寂しさを感じながら、今日も1杯の梅ジュースで身体を潤わせた。

来年もまた離れ難くなるだろうから、次は倍の量を漬けることを既に心に決めている。夏の終わりに、来年の夏の始まりに心を躍らせることが出来たのは、梅仕事に出会えたおかげ。

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かみつれ

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