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学びと混乱

「こ、これからも楽しみにしています、、!」

緊張に思考を支配された私は、この言葉を絞り出すのが精一杯だった。

憧れの人を目の前にすると何も言葉が出てこなくなるという言説へ、「いやいや、寧ろ愛が昂って話しすぎて後悔するんじゃないの?」そんな疑いを抱いていたけれど、まんまと自分もその言説通りになった。

名刺を渡すも、足はガクブル状態。ブーツのヒールがカタコト音を立てて、膝の振動はこれを綴る電車の中でも続いている。

憧れの人、塩谷舞さんの登壇するセミナーへ現地参加したのだ。

心を病んで深海の底に居た時、優しい空気を送り込んでくれた動画クリエイターのnaoさんの動画がきっかけで、暗闇にひとりでぽつんと座っている横にそっと寄り添って「わかるわかる」と相槌を打ってもらえているような塩谷さんの文章に出会い、幾度となく惹き込まれて救われた。

(私の2022年に光を注いでくれた大切な友人との再会も、塩谷さんの著書がきっかけだった!)

告知をTwitterで見つけた後、関西の開催、それもオフラインがあるとの文章と、「SNSを通したファンづくり」という私にクリーンヒットな題目に魅せられ、即参加を決めた。

近鉄奈良駅近く、鹿注意の看板が並ぶ通りに会場はあった。

到着した後、会場に既に塩谷さんがいらっしゃることには気づいていた。言い表せないソワソワを取り繕いつつ、大学の時からの癖で1番前の真ん中の席を陣取る。

実はメンバーシップの掲示板で、現地参加します!との書き込みをしたところ、ご本人から「ぜひお声掛けください!」との有難いご返信を頂いていたけれど、流石に登壇前に話しかけるのはどうだろう、、?と思い、小説片手に平静を装いつつも完全に落ち着きを失ってキョロキョロしていた。

ついに時間が来て、塩谷さんが前にいらっしゃった時、湖のような人だなと思った。

陽の光を受けてキラキラとする時もあれば、深く言葉には表せない魅力を持っていらっしゃるなと。視点を変えるとまた違う色が見えるような温かさも謎めいた深みも持っていて、実際に会うと、より一層人柄も、世界観も、持っていらっしゃる感性も好きになった。

SNSというまさに無常な世界、このSNS時代にたくさんの人が路頭に迷うのだろう。実際に私が関わらさせて頂く方の多くが困惑し、誰もが喉から手が出るほどそのノウハウを求めている。

それも時代の流れなのか、「はやく、すぐに、目に見えるような効果」が期待されることも多くて、IT関連のサポートをしている私も路頭に迷っていた当事者の1人だった。
(見事に自分のSNSを動かすことに苦戦中)

それでも彼女の語るSNSへのアプローチは、小手先のテクニック頼みではなく、ホスピタリティに溢れていた。

「これを、お客さん目線で考えると」
「こんな情報があると嬉しいですよね」

事あるごとに、彼女はそう語る。

徹底的にお客さん目線に立ち、その目線を失わぬように努力されてきたんだろうなと、彼女の繊細で丁寧な姿勢を垣間見て、その努力をお裾分けして下さることへの感謝が溢れる。

もちろん、こうした方が良く見えるとか、こうした方が見つけてもらえやすくなるとかの、ある程度の法則はあるのだと思う。

でも、どこまでも相手への配慮を忘れていないその姿勢が根本にあるのだと改めて痛感した。

一見、成功法則がありそうに見えるものも、たゆまない心配りの積み重ねなのだと、一瞬で得られる魔法などほとんどないのだと、SNSだけではない、生きていくのにも大切な姿勢を学ばさせてもらえたように思う。

最近は自分の方向性に悩んでいて、もくもくとした暗雲の心模様だったはずなのに、セミナーが終わる頃には雲間から光が差して見事な晴天になった。とにかくホームページもSNSも、そして自分のビジネス自体も、丸く尖る柱を構築し直そうと改めて地を強く踏み締める。

そして、そうした深い学びに心も体も浸っていた後、イベントが終わったのを確認して、塩谷さんに話しかけに行った。

「あ、あの、、noteでコメントしました郁香です、、」

そうすると、目をまんまるにして喜んでくださった。その姿が嬉しくて嬉しくて、もう嬉しいとしか表現できなくて。その喜びと抱えていた緊張とが化学反応を起こし、話そうと思っていたことは全て吹っ飛んで、頭は真っ白になった。

結果、緊張から声のキーが3つくらい上がり、取り止めもないというか、よく分からん言葉だけペラペラと話し、去り際の去り方が分からず、あたふたしながら冒頭の言葉を伝えた。

そうしてほっと一息していると、持参した彼女の著書である『ここじゃない世界に行きたかった』へサインをしてもらいたいという意気込みを忘れていたことを思い出し、彼女へ話しに行く方々の列を待つ。

少し時間が経って、本を持ってサインをお願いすると、丁寧にサインを書いてくださった。そしてまたもや緊張が解けない私は、冒頭の言葉を伝えてまたあたふたと去ってしまった!

その忙しない自分の姿が脳内を未だに駆け巡って赤面してしまう。

24歳、去り際の振る舞いと深呼吸を覚えたい。そして次の機会こそ、余計な笑い声なんか入れずに、私は憧れの人と穏やかに話せますように。

そしてあれほど他人の目線に寄り添える塩谷さんが少しでも心を休めて頂けますようにと祈りを込めて、帰りの電車で言葉を紡ぐ。

かみつれ日記 2022.12.15

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