西谷史

★Death Head 日本語版、現在、順次公開中        ★Digital D…

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★Death Head 日本語版、現在、順次公開中        ★Digital Devil Story 第三巻、日本語版完成       ★Digital Devil Story 第三巻、四章まで、英語に翻訳

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デス・ヘッド Death's Head

第三章 濃姫の伝説  1  翌週の金曜日、加奈子は町役場に勤めてから初めての休暇をとった。  残業時間が規定を大きく上まわってしまったため、代休をとるように命…

西谷史
4日前
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デス・ヘッド Death's Head

第二章 夢遊病 1  ヘルパーとして働きはじめて、二日目の朝のことである。 「さすがベテランね。昨日訪問してもらったお年寄りは、みんなあなたのことを誉めてた…

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7日前
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デス・ヘッド Death's Head

第一章 伊勢の洋館  1  四月の下旬。  伊勢地方では田植えがまっさかりのとある日曜日、達也は南都スクールで初めての授業を行った。 「新学期になってからの、み…

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2週間前
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デス・ヘッド Death's Head

序 章 1  二〇〇三年の東京は、春先に寒い日が多かったせいか、いつもの年より桜の開花が遅く、三月の末になってようやく蕾がほころびはじめると、人々は待ちかねた…

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2週間前
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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉           第七章 狂乱の後に

  1  十一月六日。  めくれあがったアスファルトの下から赤土の覗く青梅街道を、数万の人の群れが西に向かっていた。  東京拘置所においての公開処刑には無理があ…

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1か月前
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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉         第六章 受難の法廷          

  1  十月二十二日。  霞が関、午前五時。  まだ夜も明けきっていないというのに、法務省に隣接して建つ最高裁判所のビルを、テレビや新聞の取材クルーと、傍聴券…

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1か月前
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The Digital Devil Story 第三巻 転生の終焉 第五章 罠

  1  十月十四日。  東京インターナショナル・ホスピタルの正面玄関に立った中島と弓子の頭上には、鱗雲をちりばめた、抜けるように青い秋の空が広がっていた。  …

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1か月前
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The Digital Devil Story       第三巻 転生の終焉         第四章 魔性現出

  1  お茶の水、東京インターナショナル・ホスピタル。  弓子が収容されている病室の掛け時計は、午前二時をさしていた。  弓子は軽やかな寝息をたてて、安息の中…

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1か月前
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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉            第三章 混迷の首都

  1  十月八日。  血糊のついた六つの札束が、みすぼらしいアパートの床の上に、ドサリと投げ出された。 「結構持ってやがったな、あの銀行員」  頬の傷を撫でな…

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1か月前
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The Digital Devil Story  第三巻 転生の終焉 第二章 魔性胎動 

  1  十月三日。  高層ビル街と新宿中央公園にはさまれて、赤土をさらしたままの空き地がある。  三年後、ここには東京都庁が建設されるのだが、この時期はまだ一…

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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉          第一章 偽りの聖歌

1   十月一日。  セトの死が確認されてからすでに一月あまりがたった今も、幾体かの悪魔が日本に降臨したという米空軍情報部〈AIF〉からの情報もあって、首都圏には…

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1か月前
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The Digital Devil Story                     第三巻 転生の終焉         序章

黄泉の空は薄墨を流したように重く澱み、生温かい風が不毛の大地を舐めるように吹いていた。 その大地に聳える岩山の間を縫うようにして、緩やかな上り勾配を描く坂道がど…

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1か月前
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The DDS Volume3 Chapter3 No4

We should go back to the early morning of 9 October. Two weeks have passed since the entry and exit ban was lifted, but international flights to and from Narit…

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The DDS Volume3             Chapter3 No3 …

It’s 6 p.m. the next day. Two hours before the curfew, Shibuya Park Avenue was packed with people enjoying the twilight time. The three were in a white car t…

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3か月前
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The DDS Volume3           Chapter3 No2

Over 100,000 people are filling all the streets from Shinjuku Chuo Park to National Highway 20.  Siren is singing to the people from a stage in a grass square…

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4か月前
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The DDS Volume3      Chapter3 No1

8 October. “That bank clerk had a lot of cash much than I thought.” Kitazono threw six bloodstained wads of cash on the floor of a shabby flat and stroking …

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4か月前
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第三章 濃姫の伝説 



 翌週の金曜日、加奈子は町役場に勤めてから初めての休暇をとった。
 残業時間が規定を大きく上まわってしまったため、代休をとるように命じられたのである。
 その朝はゆかりを送り出してから、ひさしぶりにのんびりして、たまった新聞を読みはじめた。
 東京にいると、東京を中心としたニュースが、日本全国に同じように配信されていると思いがちだが、伊勢の新聞には地元の記事が多い

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第二章 夢遊病





 ヘルパーとして働きはじめて、二日目の朝のことである。

「さすがベテランね。昨日訪問してもらったお年寄りは、みんなあなたのことを誉めてたわ。今日の予定表を作っておいたから、頼むわね」

 出勤すると、山口小百合が待ちかねたように彼女のところにやってきて、新しい訪問リストを手渡した。

 それに目を通していた加奈子は、新しい利用者が並んでいる中に、昨日訪問したばかり

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第一章 伊勢の洋館 



 四月の下旬。
 伊勢地方では田植えがまっさかりのとある日曜日、達也は南都スクールで初めての授業を行った。
「新学期になってからの、みなさんの英語のテスト結果は見せてもらった。長文読解力はあるけど、発音がいまいちの人が多いね」
 そう言って、達也は教室の中を見回した。
 生徒たちは、この春高校に入学したばかりの新一年生である。
 外見は東京の高校生と変わらないが、

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デス・ヘッド Death's Head

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序 章



 二〇〇三年の東京は、春先に寒い日が多かったせいか、いつもの年より桜の開花が遅く、三月の末になってようやく蕾がほころびはじめると、人々は待ちかねたように花見にくりだした。
 ここ武蔵野市でも、JR吉祥寺駅から井の頭公園へと続く道は一日中ごった返し、午後五時をまわってからは夜桜見物にむかうサラリーマンが加わって、たいへんな人出であった。
 自転車に乗って駅前を通りかかった城戸加奈

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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉           第七章 狂乱の後に

The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉           第七章 狂乱の後に

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 十一月六日。

 めくれあがったアスファルトの下から赤土の覗く青梅街道を、数万の人の群れが西に向かっていた。

 東京拘置所においての公開処刑には無理があり、中島朱実の処刑場は大破壊によって広大な荒れ野と化した、多摩地区の一郭に定められた。

 瓦礫の拭い取られた八万平方メートルほどの敷地の中央に、鉄骨によって組みあげられた高さ四メートルほどの巨大な処刑台が、数百名の警官隊に守られて建

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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉         第六章 受難の法廷          

The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉         第六章 受難の法廷          

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 十月二十二日。

 霞が関、午前五時。

 まだ夜も明けきっていないというのに、法務省に隣接して建つ最高裁判所のビルを、テレビや新聞の取材クルーと、傍聴券を求める数千の群衆が取り巻いていた。

 その中には、中島忠義の姿もあった。

 中島朱実に対する特別法廷が今日開かれることは、日本中に知れわたっている。

 中島に対する嫌疑の内容もさることながら、対悪魔国家防衛法が適用されるはじめ

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The Digital Devil Story                      第三巻 転生の終焉                             第五章 罠

The Digital Devil Story 第三巻 転生の終焉 第五章 罠

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 十月十四日。

 東京インターナショナル・ホスピタルの正面玄関に立った中島と弓子の頭上には、鱗雲をちりばめた、抜けるように青い秋の空が広がっていた。

 渋面で二人を見つめていたボディーガードは、

「飛鳥に旅行中のあなたがたの身の安全について、我々は一切関知しない。よろしいですな?」

 中島に念を押すように囁くと、さっさと院内に入ってしまった。

「朱実君……」

「大丈夫だよ、ぼ

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The Digital Devil Story       第三巻 転生の終焉         第四章 魔性現出

The Digital Devil Story       第三巻 転生の終焉         第四章 魔性現出

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 お茶の水、東京インターナショナル・ホスピタル。

 弓子が収容されている病室の掛け時計は、午前二時をさしていた。

 弓子は軽やかな寝息をたてて、安息の中にあった。

 側のベッドに腰かけて、死人のような顔を床に向ける中島の傍には、

「悪魔、渋谷に出現す」

「セイレーン、悪魔を撃退」

 と、派手な見出しを掲げた新聞が、乱雑に折りたたまれていた。

(悪魔がまた現れた……歌で撃退す

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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉            第三章 混迷の首都

The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉            第三章 混迷の首都

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 十月八日。

 血糊のついた六つの札束が、みすぼらしいアパートの床の上に、ドサリと投げ出された。

「結構持ってやがったな、あの銀行員」

 頬の傷を撫でながら、北園が呟く。

 室町はおもむろに札束に腕を伸ばすと、二つを北園に、一つを村井の膝に放り投げて、残りを自分のジャンパーのポケットにねじこんだ。

「……」

 村井は黙ってうつむいたまま、手を出そうともしない。

「おまえは人

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The Digital Devil Story                     第三巻 転生の終焉                             第二章 魔性胎動 

The Digital Devil Story  第三巻 転生の終焉 第二章 魔性胎動 

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 十月三日。

 高層ビル街と新宿中央公園にはさまれて、赤土をさらしたままの空き地がある。

 三年後、ここには東京都庁が建設されるのだが、この時期はまだ一般に開放されていて、しばしばコンサートが開かれていた。

 その空き地に、白の装いをこらした二百名ほどの若者が集まっていた。

 あの夜、ライブハウスでセイレーンと出会い、その熱狂的なファンとなった若者達である。白はセイレーンのシンボ

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The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉          第一章 偽りの聖歌

The Digital Devil Story        第三巻 転生の終焉          第一章 偽りの聖歌

1 

 十月一日。

 セトの死が確認されてからすでに一月あまりがたった今も、幾体かの悪魔が日本に降臨したという米空軍情報部〈AIF〉からの情報もあって、首都圏には八時以降の夜間外出禁止令が施行されていた。

 新宿駅東口、午前〇時。

 煌々と照明の照りはえる駅舎に、おなじみの酔っぱらいの姿はない。

 幾名かの自衛隊員達が、駅ビルを守るように歩哨に立っているばかりである。

 新宿は悪魔セト

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The Digital Devil Story                     第三巻 転生の終焉         序章

The Digital Devil Story                     第三巻 転生の終焉         序章

黄泉の空は薄墨を流したように重く澱み、生温かい風が不毛の大地を舐めるように吹いていた。

その大地に聳える岩山の間を縫うようにして、緩やかな上り勾配を描く坂道がどこまでも続いている。

 神話時代、イザナギがイザナミの追跡を逃れ、ひたすら駆け抜けた黄泉比良坂である。

 かつて現世の豊葦原へと続いていたその坂道の頂きに立ったイザナミは、美しい瞳を次元の壁ともいうべき目の前の厚い闇に向けていた。

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The DDS  Volume3                                 Chapter3  No4

The DDS Volume3 Chapter3 No4

We should go back to the early morning of 9 October.

Two weeks have passed since the entry and exit ban was lifted, but international flights to and from Narita Airport are restricted to 24 flights a

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The DDS Volume3                                                                         Chapter3  No3

The DDS Volume3             Chapter3 No3

It’s 6 p.m. the next day.

Two hours before the curfew, Shibuya Park Avenue was packed with people enjoying the twilight time.

The three were in a white car that was parked in front of the Shibuya Pu

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The DDS Volume3           Chapter3 No2

The DDS Volume3           Chapter3 No2

Over 100,000 people are filling all the streets from Shinjuku Chuo Park to National Highway 20. 

Siren is singing to the people from a stage in a grass square lies between the high-rise buildings and

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The DDS Volume3      Chapter3 No1

The DDS Volume3      Chapter3 No1

8 October.

“That bank clerk had a lot of cash much than I thought.”

Kitazono threw six bloodstained wads of cash on the floor of a shabby flat and stroking the wound on his cheek.

Muromachi had a f

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