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Pierre Hermé&Patrick Jouin @ 新ショコラトリーオープン/Paris 75002 Innovation Food News From Paris 2024/05/01

ピエール・エルメさんがパリのオペラ座そば、キャプシーヌ大通りの39番地にショコラトリーをオープンしたというので、足を運んできました。世界を征するパティシエでもあり、たくさんのイノヴェーションを起こしてきた彼がどんなチョコレートの世界を生み出していくのか。今までパティスリー、マカロン店を展開してきましたが、チョコレートのみに焦点を絞った店をオープンしたのは今回初めて。パッケージも改めて作り、ここでしか買えないチョコレートを展開。新ブランドを成立させたというスタート地点に立ったところです。

エルメさんの強さは、そのイノヴェーション力だと感じています。例えばフランスにはクラシックと言われるパティスリーがある。
フランス人なら誰もが知っている、「ミルフィーユ」や「エクレア」、「サントノレ」など。その構成の決まりがありますが、「香り」から、クラシックといわれるスイーツの構成を生み出したのは、エルメさんだと思って止みません。

「イスパハン」という香りの組み合わせ。彼が「フォション」のシェフ・パティシエだったころに生み出した、ライチとローズ、フランボワーズの三位一体の香りで、自身のブティック「ピエール・エルメ」のエンブレムでもある。この香りにインスピレーションを受けて、「イスパハン」の香りを、あらゆるパティシエたちが取り入れていったことは、多くの同業者に知られるところです。

ピエール・エルメさんは代々続くパン・菓子職人の家計に生まれて、父親がチョコレートにも興味を持ち、当時はスイスにしかなかったチョコレートを学べるLa Cobasという学校に行って学んだと聞いて、なるほどと思いました。

エルメさんの生涯の師でもあるガストン・ルノートルさんをはじめ、あの「メゾン・デュ・ショコラ」を立ち上げたランクスさんも、「ル・ルー」のルルーさんもLa Cobasに学んでいます。時代を感じるのとともに、フランスのチョコレートの威信を築き上げた先人たちの、ゼロから生み出すエネルギーを思わずにはいられません。

パトリック・ジュアンさんは、アラン・デュカス・グループとのコラボレーションでも知られる建築デザイナーですが、エルメさんがパリ17区に所有している一軒家のラボのインテリアを2008年に完成させた時から、エルメさんの店舗を手掛けてきた方です。新店でも、フランス産のオーク、銅という素材を使って、チョコレートが持つ原子的(アトミック)な世界を表現したと伝えてくれたのが、印象的でした。

ジュアンさんに、最も気に入っている今回の最新チョコレートは何かと聞くと、海苔風味ガナッシュということ。なんと海苔のガナッシュと柚子のゼリーを層にしたチョコレートで、テクスチュアと風味の重奏がサプライズ。塩味をフルール・ド・セルに頼らず、重奏的な海苔の風味で表したのに、常識にとらわれないイノヴェーションを感じました。





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