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宇宙遊星間旅行

■ 感想

「宇宙遊星間旅行」(作)中江嘉男(画)上野紀子(ポプラ社)P62

片目を隠す為、片時も望遠鏡を手放さない女の子・チコ。ある日出掛けようとすると望遠鏡の方からチコの眼にくっつき離れない。

否応なしに望遠鏡が焦点を合わせる光景を見るしかなくなったチコの眼に映ったのは、部屋を飛び出し、鳥や雲を越え、空の青、そして星の瞬く真っ暗な宙へ。星との対話で過去と未来の境目、一瞬の”点”である今に思いを馳せてゆくことに。辛い現実を見つめない心は常に自分から乖離し、今を捉えることも今と歩調を合わせることも出来ない。

光速すら追いつくことができない速さで巡ることはできても現在地を正しく捉えることが難しい思考の世界を、果てしない宇宙と照らし合わせながら見つめていく不思議な遊星間旅行。

遠くを見つめるチコと、遠くから内側へとコンタクトしてくる星に託された望遠鏡の想いが美しい。宇宙を漂いながら今を見つめ、私を旅するコンダクター絵本。

■ 漂流図書

■スコープ少年の不思議な旅/巌谷國士・桑原弘明

時間も空間も自在に変容するチコの旅と同じように、桑原弘明さんのスコープの世界も小さな箱の中に無限の宇宙が詰まっている。

近くまた新しいスコープの世界に出会えるのもとても楽しみ。

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