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芥川龍之介の桃太郎

■ 感想

「芥川龍之介の桃太郎」芥川龍之介(画)寺門孝之(河出書房新社)P48

ある深い山の奥、大きな桃の木が一本あった。その木の枝は雲の上に広がり、根は大地の底の黄泉の国にさえ及ぶほど大きく、世界の夜明け以来一万年に一度花開き、一万年に一度実をつける。核のある所には美しい赤児を一人ずつ孕み、一千年の時を経てある寂しい朝運命は一羽の八咫烏となり、その実を一つ遥か下の谷川へと落とす。

その実を拾いしは、川に洗濯へと出かけた彼のお婆さん。桃より生まれ腕白過ぎた故にお爺さんとお婆さんに内心愛想をつかされていた桃太郎は、ある日鬼ヶ島への討伐を思い立つ。これ幸いと早速支度を整え送り出し、自慢の黍団子を手に桃太郎・いざ出陣。そして「一つ下さい、お供しましょう」と声をかける犬、猿、雉に、「半分やろう」と持たざる者を圧し、服従させ、一行は嘆息し、いがみ合いながら征伐の地・鬼ヶ島へ。絶海の孤島にありながら、ヤシの木が聳え、極楽鳥が囀り、美しい天然の楽土として平和を愛する鬼たち。その島では酒呑童子の時代から、人間は欲深く、自惚れが強く、仲間同士が殺しあう手の付けられない獣として語り継がれていた。そこに建国以来の恐ろしさを与えにやってきた桃太郎。

あらゆる罪悪を行い、宝物を一つ残さず献上させ、鬼の酋長の子供を人質に故郷へと凱旋。人とは何か、鬼とは何を意味するのか、物語の光と影に揺蕩う人の欲望と傲慢さにユーモラスを交えてシニカルに描く芥川版桃太郎。今もなお山奥で静かに運命の八咫烏を待つ無数の大きな赤い実。次に生まれし赤児は一体何人だろうか。

■ 漂流図書

■図説日本の昔話 裏を知るとよくわかる!

桃太郎だけでなく、猿蟹合戦、浦島太郎、かぐや姫などよく知られている昔話の深い部分を知れるという本書。

浦島太郎と桃太郎はいろんな版を読み重ねて個人的に研究をしているので新たな情報があるといいな✨

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