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音楽や芝居をやってても、文法を学んだ方がいい理由

あるレッスン中にこんなことが起こしました。

sua [ ́sua] 「あなたの(女性形)」


この単語は「スーア」と読みます。
ところがその日の生徒さんは「スア」と読んでいらっしゃいました。

「suにアクセントがあるので、suの後に伸ばし棒『ー』を入れてください」
そう要求すると、その生徒さんは綺麗に「sua」の発音をしてくださいました。

すると今度は、
生徒さんの方から質問がありました。

「uaが二重母音だと思ってた。でも辞書のアクセント記号を見たら[ ́sua]で、確かにsuにアクセントがあった。ということは音節で分けたらsu-aの2音節になるから、uaは二重母音ではない、という認識で合っていますか?」

修正の余地が全くありませんでした。
「その通りです」という他ないほど、素晴らしい分析でした。

生徒さんが「スア」と、少し違和感のある発音をしていたのは、
uaが二重母音だと思っていたからだったのです。
二重母音を素早く言わなくてはいけないと思っていたため、
アクセントを表現する長音(伸ばし棒)「ー」が抜けてしまっていたのです。

この生徒さんはブラジル音楽を長年歌ってきていらっしゃる方ですが、
元々はポルトガル語の文法に関してそこまで詳しくない方でした。
そこへ私が、文法に関する知識をたくさん教えたら、
瞬時にこのような解釈ができるようになったのです。

自分が教えた生徒さんの知識が育ち、それを使いこなせるようになったことに大変感動しましたが、それ以上に、
「文法をやっていれば、音楽(歌詞)で間違いがあっても、自分の知識だけで解決できる」
と心の底から感じました。

「耳」だけでなく「知識」と「技術」が必要

以前も申し上げましたが、
私たちは日本語が母国語なので、どうしても「日本語基準」でブラジル音楽を作ったり、演奏したり、歌ったりしてしまいます。
しかし、聞き直した時に、「ここはおかしいな」という耳を持っていないといけません。
私はこれを「ポル語耳」と呼んでいますが、
その「耳」だけではなく、「どうしておかしくなったか」「どうすれば解決できるか」という「知識」、そして修正する「技術」も必要になってきます。

先述した生徒さんの質問では、

・二重母音
・アクセント記号の読み方
・ポルトガル語のアクセントをカタカナに直すとどう表記するか
・音節の概念
・音節の分け方

これらの文法的な知識が詰まっています。
これらは全て、私が教えたことです。後から得た知識で、ここまで使いこなしています。

これらの知識を持っているからこそ、私の一言だけで自分の間違いに気付け、原因を理論的に特定し、解決策も見つけることができたのです。
しかもこれらを、一人で行ったのです。
素晴らしいです。
この生徒さんの「ポルトガル語を知りたい、勉強したい」という貪欲な姿勢に脱帽しました。

文法を知らないと歌えない

私自身も、
「まあ、文法を知らなくても、単語や歌詞の意味は調べたら分かるしな…」
と思って落ち込んでしまうことがたくさんあります。
しかし、何名かの歌手の生徒さんにポルトガル語文法を教えて実感したことは、
やっぱり文法を知らないと、歌えない
ということでした。

俳優さんへの文法解説

私は以前、俳優の方に、スペイン語の文法解説をしたことがあります。
コロナ禍だったため文書での解説でしたが、私が依頼を受けた経緯は、
「スペイン語を喋る役だが、スペイン語が分からないので、台詞の抑揚をどのようにつけたらいいか分からない。
英文法は分かるので、英語と対比させて文法解説をしてほしい」
ということでした。

台詞を話すだけなので、正直、カタカナをそのまま読むことだってできます。
スペイン語が分からない方もたくさんいるので、聞き手を誤魔化すこともできます。
しかしこの俳優さんは、たった数行の台詞であるのに
「俳優として、そんなことはできない」と感じたのだと思います。
「さすが、本物は要求してくるレベルが違うな」と感動したものですが、
台詞でも歌でも、作品を本当の意味で噛み砕いていくには、
文法の解釈が必ず必要になってくるはずなのです。

また、別の生徒さんはおっしゃいました。
「歌を歌う時、どこが文法の切れ目なのか分からず、抑揚が付けられない」
俳優でも歌手でも、みなさん、同じことをおっしゃっているのです。

私も俳優になるために母国語を勉強しました

そんなことを言い始めたら、私だって「日本語」の勉強をしました。
母国語が日本語なのに、声優の勉強の一環で、音声学だけでなく、
さまざまなことを学びました。
漢字検定2級、日本語検定は3級だったかな?
漢字検定2級は、常用漢字が出題される範囲の最高レベルです。
漢字を書くだけでなく、
四字熟語やことわざ、熟語の構成など、さまざまな問題が含まれています。
ついでに秘書検定も3級くらいも取りました。
まあ半分は趣味ですしレベルもそんなに高くありませんが笑、
養成所に入る前に、自主的に取得しました。
なぜかというと、これから日本語を扱う仕事に就きたいと思ったからです。
きちんと日本語を話せない人が、伝えられない人が、
声優やナレーターになんかなれるわけがありません。

考えた末に私が取った行動は「日本語を学ぶこと」でした。
本もたくさん読みました。
文章の意味をすぐに理解して、発言の構成をしないといけないからです。

ブラジル留学から帰ってきた翌日くらいから、
まだ時差ぼけもひどい状態でしたが、
そんなこと関係なく、声優になるための色々を準備しました。
人が本気になるときって、自然とこういった無謀にも思える行動をすると思うんです。

それでも、養成所ではたくさんの先生方に何度も叱られました。
「プロミネンスがおかしい。ポルトガル語ばっかやってないで日本語の勉強し直してこい」
「東京にはたくさんベトナム料理店があるでしょ?その人たちの日本語聞いてきた?ベトナム訛りの日本語なんてそこら中にあるのに、それもしないでこの台詞(ベトナム人)言おうと思ったの?」
自分がいかに勉強不足であるか、思い知らされました。

気付かぬ間に自分の成長を止めてしまう

話がそれました。
このように、言語を扱うのであれば、
文法解釈は必須なのだと思うのです。
言語って、意外と重要なのです。
「どうして自分の音楽が上達しないのかと思ったら、ポルトガル語を蔑ろにしていたからだった」
そうおっしゃった楽器演奏者の生徒さんもいらっしゃいます。

楽器演奏の場合はどうかなぁと
今一度考えたのですが、
やはり、文の切れ目や節の塊のことが念頭にあると、
音楽的なグルーヴだけでなく文法(歌詞の意味)も考慮しなくてはいけなくなるので、
演奏に味がつき、
表現の幅が広がるのではないかと思うのです。

もちろん私のレッスンを受けてくだされば、
文法の基礎だけでも分かりやすく全力でお教えしますが(ちょっと宣伝)、
そうでなくても、簡単でもいいのでポルトガル語の文法書を1冊、読み終えていただきたいと思いました。
その方が、ご自身の活動がより良いクオリティーで発揮できるのではないかと思っております。

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
私のレッスンでは、
・発音矯正
・音声学に基づいた「日本語のクセ」と「ポル語の特徴」の解説
・「ポル語グルーヴ」のブラジル音楽への落とし込み方
などを教えています。
YouTubeでミニ講座を投稿している他、オンライン無料レッスンも行っています。
ご興味がある方は是非YouTubeチャンネルHPをご覧ください.*˚✩
♡ ••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈•• ♡

✼••┈ A sua professora ┈••✼
꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』

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