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ブラジルやポルトガル、ポルトガル語に対する日本人の意識

昨日、少しFBでコメントした内容です。

日本とブラジル、そしてポルトガル

日本人が最初に接触した西洋人はポルトガル人であり、
ブラジルへの日本人移民が多いのに、
現代の日本人はポルトガル、ブラジル、ポルトガル語に関する知識が少なすぎるなぁと日々感じています。
以下は、私がこれまで言われてきた言葉です。

「ポ、ポルトガル語…?」

「ポルトガル語の先生をしています」と申し上げると、
「なんでそんな辺鄙な言葉を?」という目で見られます。

ポルトガル語は世界で7番目(年や統計機関によって若干異なる)に話者数が多い言語で、
公用語として使用されている国の数では5番目に多い言語です。
そりゃ英語やスペイン語には負けてしまいますが、
「世界的な主要言語のひとつ」と言っても過言ではないのです。
だけど、マイナーな言語というイメージがとても強いようです。

「ブラジルってポルトガル語なんだ!」

そして「母が日系ブラジル人で〜」と説明を始めると、
次の反応がこちらです。
「ブラジル語じゃないの?」と質問する方も少なくありません。

日本はやはり、海外=アメリカのイメージが強いですし、
その次に着目するのがアジアやヨーロッパだったりするので、
南米にまで興味が向かないことも理解しています。
しかし日本とブラジルやポルトガルは、
とても関係性が深い国であるのに、
ここまで無知な人が多いというのも
悲しい話です。

憶測ですが、戦前は日本の「海外」といえば、
中国もそうでしょうが、ポルトガルやオランダを真っ先に思い浮かべたのではないかと思います。
(イギリスもあると思います。)
昔からある外来語も、ポルトガル語やオランダ語のものが多いです。
私がいつも言っている「パン」「コップ」「カッパ」「カルタ」はポルトガル語ですし、
オランダ語由来だと「ランドセル」や「ポン酢」なんかもそうですね。

医学は、明治以降はドイツから学びました。
日本では「レントゲン」と言いますが、英語は「X-ray」です。
レントゲンはドイツ語です。(X線の発見者がレントゲンさん)
日本の医学はドイツから学んだという証ですね。

ちなみにポルトガル語でレントゲンは Raio X [ ́xaiu ́ʃis] と言います。
raioは「光線、光」という意味なので、英語のrayと同じです。
ブラジルの医学はアメリカからの影響を受けたということが分かります。

話がそれました。
つまり、戦前はアメリカ以上に関係が深かった国々がたくさんあったのです。
イギリスから英語も多少は入ってきたかもしれませんが、
それ以外の国の言葉も飛び交っていたのではないかと想像します。

現代日本人は「全て英語由来」だと思ってしまいがちなので、
言葉の由来を知るチャンスを失ってしまっていますね。
もったいないです。

「ブラジルってポルトガルの植民地だったんだ!」

「サッカーが強い国」「カーニバル」
というイメージが強いため、
どこかの植民地だったというイメージがないのでしょう。

そこまで関心がない人からすると、
ブラジルという国がどういうように成り立っていったのか
知る機会もないでしょう。

そういえば、20年くらい前になりますが、
ブラジルがアフリカの国だったと思ってた友人もいました。
とても貧しい国で、市場で売っている食べ物も貧相で、更にハエがたかっているのかと思った、とも言われました。
確かに、アフリカから奴隷として連れてこられた人々の子孫がたくさんいますし、
地域差が大きいので貧しい土地もある…とは思いますが、
その友人がイメージするほどの貧しい場所は流石にないと思います。
「サンパウロの都心は、新宿とか大手町みたいだよ?」と言うと、ひっくり返りそうなほど驚いていました。
そんなに驚かなくてもいいじゃん。笑

「ポルトガルってどこにあるの?」

この質問も多いです。
私も地理が苦手で、47都道府県も怪しいですが笑、
「ヨーロッパの最西端」という特別な場所があるのですから、
知っている方がもう少し多くてもいいのではないかと思います。

大航海時代、ポルトガルが貿易でブイブイ言わせていたことも知らない方が多いです。
「当時のポルトガルは世界最強だったんだよ?(ちょっと言い過ぎ?笑)」
「紅茶は、ポルトガルがイギリスに教えてあげたんだよ?(ポルトガル人女王がイギリスに輿入れする時の嫁入り道具)」と言っても、
コロンブスやアメリゴ・ヴェスプッチ(どちらもイタリア出身)などが有名であるため、
全く信じられず、イメージが湧かない方が多いです。
バスコ・ダ・ガマは知っていても、彼がポルトガル人であることを知っている人は少ないのではないでしょうか。
航海王子エンリケのことも、多くの方が知らないと思います。
(恥ずかしながら、私も大学に入るまでエンリケ王子のことを知りませんでした笑)

ちなみにヨーロッパ大陸の最西端にあるロカ岬というところに行ったことがあります。
名前と日付を入れた「ここにきました!」という証明書を発行してもらえます。
私は家の中で紛失してしまいました…。笑

「ポルトガルからブラジルって真反対なのに植民地だったの?」

「ポルトガルはスペインの真横にあるんだけど、こんなに大小差があるのに呑み込まれなかったんだよ?すごくない?(色々あったけど)」と説明すると、
次の質問がこれです。
ヨーロッパと南米が、頭の中では真逆の世界に位置しています。

これは日本人の中の「それぞれの国のイメージ」もあるのではないでしょうか。
ヨーロッパは、整然としていてなんだかオシャレ。
南米は、情熱的で野生的。
このイメージの乖離も、物理的な距離のイメージも作り上げていると思いますが、
ヨーロッパと南米は、斜め上下の位置関係です。
「地球は丸いんだよ。世界地図を丸めたら、ポルトガルのすぐ斜め下がブラジルになるでしょ?」
これを話すとようやく理解してくれます。

「『パン』って英語じゃないの!?」

これは私がいつも言っている話ですし、
私の鉄板ネタです。
「『パン』って英語じゃないの!?」
「じゃあ英語で『パン』ってなんて言う?」
「ブレッドだぁ〜!」
不思議なことに、一語一句必ずこの会話になりますし、
この流れが本当に好きです。笑

ところで、ハンバーガー用のパンのことを「バンズ」と言いますが、
これを「パンズ」と言ってしまう日本人がとても多いです。
バンズは英語bunsで、単数系はbun「バン」です。
普通のパンはbreadですが、
バンズは「速成パン」と呼ばれ、発酵時間が不要なパンのことを指します。

これと、ポルトガル語の「パン」が混ざってしまって「パンズ」と言ってしまうのですが、
語源を見れば一目瞭然であるのに、
耳だけで聞いているだけだと、こういう間違いが起こってしまいます。

こういうことは日本語でも起こりますよね。
「ふいんき」だと思ったら「ふんいき」だったとか、
メッセージのやり取りの中で
「いちおう(一応)」を「いちよう」とひらがなで書いていらっしゃる方もよく見かけます。

歴史の話をしていました

大学でポルトガルとブラジルの歴史の勉強をしましたが、もうほとんど覚えていません。
歴史は大好きなのですが、記憶に定着させておくのが苦手らしく、
なんとなく…しか覚えていません。
検定試験(趣味)のために金沢や沖縄の歴史についてもたくさん勉強しましたが
(大河ドラマ『利家とまつ』は3周見ましたし、沖縄の高校生の教科書を読破しました)、
あんまり覚えていません。笑

先日どなたかに、
「ブラジルがポルトガルの植民地だったとか、歴史のことよく知ってるね!」
と褒められましたが、
ポルトガル語学科の卒業生としては当然ですし、
これくらいしか解説できないことも悲しいですし、
一般の人は「ブラジルがポルトガルの植民地だった」ということも知らないこともまた悲しいです。

生きていれば、知らないこともたくさんあるんだなぁと思い知らされることが何度もあります。
私だって、「ポン酢がオランダ語由来」と知った時は驚きましたし、
「エンリケ王子なんて聞いたことなかったなぁ」と大学の講義中に焦ったものです。
ですがせめて、
「アメリカは英語だ」と同じくらいの認知度で「ブラジルはポルトガル語だ」という知識を広めていきたいと思います。

♡ ••┈いつもご覧くださりありがとうございます┈•• ♡
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꧁愛マリアンジェラ꧂

著書
『日常ポルトガル語会話ネイティブ表現』(出版: 語研)
※共著

電子書籍 (すべてKindle Unlimited対応)
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話』
『ブラジルとブラジル音楽とポルトガル語の話2』

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