うつ・メンタルを崩した人にとっての一番の薬とは(連載#83)
▼前回の連載note記事
「この税金泥棒!」
というクレーム電話や、
「本日〇〇市役所の職員が〜」
という公務員バッシングを経験していることもありましたが、ぼくは「公務員」という職業に誇りを感じられていませんでした。
その根本理由は、住民から
「ありがとう」
と感謝をされることが、ほぼなかったからです。
そして、公務員歴7年目から4年間、ぼくは「精神保健福祉」の担当として、自傷行為や傷害事件を起こすおそれのある人を精神科病院に車で移送したり、そのご家族からの電話相談を受ける日々を過ごしました。
そんなある日、デスクの電話が鳴り、受話器を取ると、小さく
「死にたい」
という声が聞こえ、全身に緊張感が走りました。
他の係員は、出張中。
助けを呼ぶことや電話を変わることはできない。
自分が、聴くしかない。
「もしもし?何がありましたか?」
話を聞いていくと、受験がうまくいかずに落ち込んでいる状態だったことがわかりました。
「自分は親の期待に応えることができない、価値のない人間なんです」
その話を聞きながら
「自分もそうだったなぁ」
と思い出しました。
一浪させてくれて、朝から晩まで勉強させてもらっているのに受験に全敗した時は本当に目の前が真っ暗になりましたし、学校の勉強受験勉強が苦手な自分に、
「なんで自分はこんなに勉強ができないバカなんだ!」
と腹が立ったし、「親に申し訳ない」という気持ちでいっぱいでした。
そんな自分の経験を話したら、、、
「今役所で働いているあなたにもそんな時があったんですね。3日ほど部屋にこもってましたが聞いてもらえて少し落ち着きました。あなたがいてくれて良かったです。ありがとうございました」
と言って、その電話は切れました。
この、
「ありがとう」
と言ってもらえた時の気持ちを、公務員生活14年の中でも色濃く覚えています。
その理由はなぜかというと、
「自分が、この人の話を聴くんだ」
と覚悟して向き合ったからです。
ここまでを読んで、
「職員として自分自身の個人的な想いや経験なんて言う必要ないじゃん」
という意見もあると思います。
でも、あの時に機械的に話をして
「はいはいそうですか」
「いろいろありますね」
とめんどくさそうに聞いていたら、
「ありがとう」
とは、言われなかったと思います。そう思うのは、その時の自分は、対話のテクニックも大したことありませんでしたし、カウンセラーでもなかったからです。
でも、無資格であれ、
「目の前のこの人に向き合うんだ」
と覚悟をして臨んだからこそ伝わったのだと、今振り返ってみても思います。
それまでの自分は、言われた事しかやらない、言われたことすらもできない職員でした。そもそも自分事として仕事をしてなかったんです。
そういう姿勢だと機械的な対応にもなって当たり前ですよね。
「ありがとう」
なんて言われるわけもない。「ありがとう」と言われないのは、そう振る舞っていた自分自身の姿勢の問題だったんです。
「自分で決めて、やる」
という姿勢があれば、人の心は動くんだと実感したエピソードでした。
この経験があったから、後に人生の師匠から
「ええことやってんねんから胸張れ!」
と言われたときにも響いたのかなぁと思います。
もちろんいろんな意見があるのを承知で言いますが、、、うつやメンタルを崩した人にとっての一番の薬は、
精神薬でなく対話
なのだと、ぼくは思います。
「ここでならホンネを言える」という環境・場が必要だと思って、「自分を知る学校」を運営しています。
写真:スナックキャンディ京都プレオープンイベント時(2018年2月)。「公務員辞めるんや!ええやん!」とイロモノ扱いせずに言ってくれたみんなです。
「ハルさん、大切な人が落ち込んでいるんですが、どうコミュニケーションをすれば良いですか?
と相談を受けることは多いです。
やっぱり人間として、「大切な人の役に立ちたいなぁ」という気持ちはあると思います。
「人と向き合う」とか「コミュニケーション」とネットで検索すると、
傾聴
共感
信頼形成
という知識はかいろいろ出てくるんですけど、テクニックだけじゃ限界があります。
ということで、ここからは、「大切な人が落ち込んでいる時の向き合い方」について話をしていきます。
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▼連載:第1話
大切な人が落ち込んでいる時の向き合い方
どう向き合えば良いのか、結論からいうと、
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