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しっかりさんとゆったりさん

私は靴下を十四足持っている
春夏用と秋冬用
それぞれ七足ずつ

その七足の中の
三足はしっかりさん
四足はゆったりさんだ

私は週三日
派遣で働いている
その三日に履くのは
しっかりさん

他の日は
ライフワークである
刺繍をしている
作品も最近ではまあまあ売れる
その四日(休日も含む)に履くの
はゆったりさん

けれど今週
混乱が生じた
派遣の仕事を
週四日に増やせないか
と言われたのだ

少し考えます
と言って
もやもやした気持ちで帰ってきた

その日履いていたしっかりさんは
事の次第を
他の靴下たちに話してしまった
順序立てて、しっかり

するとゆったりさんの一足が
泣きそうな声で言う

そ、そしたら
ぼくらのなかの誰かが
しっかりさんになるってこと?

ゆったりからしっかりには
なれないわよ
としっかりさん

じゃ、じゃあ
もしかして
新しいしっかりさんがやってきて
も、もしかして
ぼくらのうち誰かが…

ゆったりさんたちは
とても怯えている

私が
まだ返事をしていよ
決まってないんだよ
と言っても

しっかりさんを一週間に
四日にするつもりなの?
三日でもすごい大変なのに?
いつもしっかりさん脱ぐと
倒れ込むほど疲れちゃうのに?
そうゆったりさんに言われて

そうだよね
そうなんだよね
と頷く

しっかり
ゆったりしてもらわないと
しっかり三日も働けないわよ
しっかりさんにも言われる

そうだね
やっぱり、そうだね
うん、わかった
やっぱり今のままで行こう
ごめんね、心配かけて

七足の靴下たちは
(クローゼットの中で聞いていた他の七足も)
ほっとしたみたいだった

明日はゆったりさんを履く日
でも、とりあえず派遣の人に
やっぱり現状維持でお願いします
と電話しよう

理由を聞かれたら
身体の(一部のようなもの) ことを考えて
難しそうだから
と言うことにする

だってそれは
本当のことだから



⚫︎おしゃべり石鹸

⚫︎カタマリコの主張

⚫︎しっかりさんとゆったりさん

⚫︎リンゴがやるべきこと

⚫︎カモさんのちから

⚫︎キラキラさんとスムージー

⚫︎光るごまと読書

⚫︎真夜中のハーブティー



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