好きな本 〜児童文学〜
ぐうたらな私は、1メートル先の椅子に向かうことすらせず、本棚の目の前で本を読むのが好きだった。
本棚からなんとなく1冊取り出したら、本棚に背を向けてその場に座り込む。体育座りをした自分の太ももに、本を立てかけてページを捲っていく。ページが進むにつれ、だんだんお尻とか背中に痛みが出てくる。座面は床、背もたれは本棚なのだからそりゃそうだ。
そのうち、お尻や背中が「もう限界!」って言い出したところで、スッと本を閉じる。
ぐうたらな私は、ゴロゴロしながら本を読むのも好きだった。
ベッドやソファで仰向けに寝転がり、左膝の上に右足のふくらはぎを乗せて、適度に圧をかけながら。ブラブラさせた右足の先で謎のリズムを刻みつつ、ページを捲る。
本を支える腕がプルプルするたび、楽な姿勢を探そうと何度も何度も寝返りを打つ。
そして腕が「もう無理!」って言い出したところで本を閉じる。
読書自体は好きだったけれど、大抵こうしておかしな姿勢で読んでいたから、分厚い長編は最後まで辿り着かなかった。
好んで読んでいたのは、気楽に読み切れる厚さで、登場人物がマイペースで、ちょっとシュールなお話だった。
1. 寺村輝夫作品
たぶん最初にハマったのは、寺村輝夫の『ぼくは王さま』シリーズと『わかったさん』シリーズ。
内容をあまり覚えていなかったので、あらすじを読み返してみたところ、まぁ実に私が好きそうな設定だった。
王さまの秘密をにわとりが卵の中に隠しちゃうとか、わかったさんが砂糖の砂場やレモンの扉、フルーツの森の迷路に迷い込むとか。
2.『海底二万マイル』
『エルマーのぼうけん』を読んで面白いと言っていた私に、「冒険ものが好きならこれはどう?」と母が薦めてくれた。案の定、どハマりした。
細部まで描かれている綺麗な挿絵を参考に、海の中の風景を頭いっぱいに思い浮かべながら、何度も読んだ。
特にネモ艦長のサロンのシーンが好きだった。
優雅な部屋で穏やかに話すネモ、窓の外は色鮮やかな生き物がゆったり漂う綺麗な海。しかしネモも海もいつ荒ぶるか分からない。一見、平穏に見えるその部屋の、危うさ・脆さ・儚さが、なんか好きだった。
3.『ムーミン谷の彗星』
ムーミン谷シリーズは色々読んだけれど、宇宙好きな私としては、これが断トツで面白かった。
その中でも特にお気に入りのシーンがある。
彗星の衝突が迫っていようが自分には関係ないと切手整理をし続けていたヘムルさんが、彗星接近に伴う暴風でコレクションがふっ飛ばされ大声で喚くシーンだ。(ちなみにヘムルは、このシーンの直前に登場し、このシーンのあと更に残念な目に遭う)
ヘムルさんには悪いけど、あまりの踏んだり蹴ったりぶりに思わず笑ってしまうんだよね。
4.『鏡の国のアリス』
『不思議の国のアリス』よりもシュールさが増していて、こちらの方が好きだった。
ちょうど学校でボードゲームが流行っていて、チェスのルールを知った直後だったというのも一因かもしれない。
特に、アリスがトゥイードルダムとトゥイードルディーから聞かされた、長ったらしい詩「セイウチと大工」は、おかしな世界過ぎて大好きだった。
(ちなみに詩の内容は、セイウチと大工が、海中にいた若い牡蠣たちを口車に乗せ浜辺へ誘い出した末、牡蠣たちの運命に同情して嗚咽し涙しつつも全て食い尽くすというもの)
5. 漫画版『平家物語』
「宇宙」や「天気」の図鑑を愛読していた私は、自分のことを理系だと思っていたし、古典も歴史も大して興味がなかった。
しかしあの日、小学校の図書室で、なぜか私は漫画版の『平家物語』を手に取り、おもむろに読み始める。独特の世界観や平清盛にすっかり魅了され、気付けばあっという間に読み切ってしまっていた。
「諸行無常」「盛者必衰」は好きな言葉になったし、時を経て厳島神社や六波羅蜜寺にも足を運んだ。
なぜこの本を手に取ったかさっぱり思い出せないけれど、おかげさまで、日本史に興味を持ち、寺社や美術品に興味を持ち、なんやかんやでその後しっかり文系に進んだので、本当に良い転機だったと思う。
*どこの出版社のものだったか、探してみたけれど結局分からなかった…。
※【番外編】『青い鳥』※
これはとても衝撃的だった。だって、台本形式で書かれているんだもの!場面描写はト書きで書かれ、各セリフの上には、
チルチル「○○○○」
ミチル「◇◇◇◇◇」
みたいな感じで名前が記載される。
最初はとても読みづらかったが、頭の中で舞台を見ているような感覚になれるので、それはそれで面白かった。ただ、ハマる感じではなかったんだよなぁ。ということで番外編でした。