見出し画像

なぜあの人は期待通りに動いてくれないのか

「若手の部下が主体的に動かない」
「年上の部下がさくさくと仕事を進めてくれない」



管理職の方々にとって「部下」に関する悩みは尽きることがありません。

「あの人が期待通りに動いてくれるといいのに」というのは、管理職に限らずきっと多くの方が抱える思いではと思います。

ではなぜ、人は自分の期待通りに動いてくれないのでしょうか。

今日は、「期待外れ」が起こるメカニズムとその対策をご紹介します。

「自分ばかりが忙しい」と悩んでいる管理職の方や
「期待とは違うことがよく起こる」という方に
参考にしていただければと思います。

1. あなたは本当に「やってほしいこと」を伝えていますか?

「期待通りに動いてくれない」というケースで一番多いのが「期待を伝えていない」という状況です。

え!? まさか!それはさすがに伝えているよ!!

と思われるかもしれません。でも本当にそうでしょうか?

たとえば、作成を依頼した資料に誤りがあった場合。
「なるべく早く修正して」と伝えるかもしれません。
そんなとき、あなたの頭の中には「今日この後の会議で使うのだから、すぐにやるだろう」という期待があるかもしれません。

しかし相手が「なるべく早く」を「この後の会議の前に」とイメージするとは限りません。「今日中ならいいだろう」「明日の朝までに出せばいいだろう」と相手が考えた場合、あなたの期待は外れることになります。

私たちは無意識のうちに「自分の常識」を身につけています。
「急いで」「すぐに」「正確に」「丁寧に」…これらの言葉から具体的にどんなことをイメージするかは人によって違ってきます。

「自分の常識」には、「組織や共同体の常識」や「世代の常識」「社会の常識」なども含まれています。「こんなこと、言わなくても分かるはず」ということのほとんどが、この3つの中のどれかからできていると言っても過言ではありません。

あなたはあなたが生きてきた時間の分だけ、「自分の常識」と一体になっています。しかし、相手にも同じように相手の生きてきた時間の分だけ「自分の常識」があるのです。

極端ですが「言葉が通じる」というのと、「同じ認識を持つことができる」というのは全く別物だと捉えた方がいいでしょう。相手のことを「異星人だ」と思うくらいがちょうどいいかもしれません。

スタバで注文をするときは、飲み物の種類と、大きさ、トッピングなどを全て指定して伝えますよね?心の中でどんなに「トールサイズのキャラメルマキアートにホイップを追加して!」と全力で唱えても、それが伝わることはないでしょう。(常連さんになっていると、注文を覚えられているかもしれませんがそれは「お互いの常識」を共有できているからこそ起こることです。)

ほとんどの人は超能力者ではありません。
「やってほしいことを相手の常識や認識・経験に則って受け取ることができるよう具体的に伝えているか」をまずは振り返ってみていただければと思います。

「そんなに言わないといけなかったら余計忙しくなる!」と思われるかもしれません。しかし、もし今まで具体的に伝えていなかったのなら、これまで通りでいつか勝手にできるようになるでしょうか?今、時間と手間をかけることが将来への投資になると思ってまずは「相手の常識」と向き合ってみてはいかがでしょうか。

2. 「主体的に動く」を期待しない

企業において、「期待通りに動いてくれたらいいのに」の中身の多くは「主体的に動いてほしい」という期待だったりします。

ここまで読んで来られた方なら「主体的ってどういうこと?」というツッコミが来ることを予想されるかもしれません。その通りです。

「指示されないでもやってくれないかなあ」「もっと自分で気づいて欲しいなあ」ということを、無言のうちに期待していてもその期待はほぼ成就しないでしょう。なぜなら、指示しないでもやれるならとっくにやっているだろうから。自分で気づいて動くならすでにそうしているだろうからです。

指示されないとできないから、指示されないとやらないのです。
気づいていないから、やらないのです。

そういう相手には、まず、具体的な指示をする。「気づいて欲しい」と思っている内容を具体的に伝えることが必要です。その上で「これについては指示がなくてもやってほしい」「こういう状況だったら自分で動いてほしい」とさらに言葉にすることまでしてはじめて、相手にとっては「こういうことを期待されていたんだ」ということが理解できることになります。

「コーチングを学びたい」と思っている方の中には、「コーチングスキルが使えるようになったら相手が気づくようになるだろう」「言わなくても自分からやるようになるだろう」という期待を抱いている方もいらっしゃいますが、コーチングは相手を自分の思い通りに動かすスキルではありません。エスパーのように、以心伝心で思っていることを言わなくても伝えられるようになるスキルでもありません。

そもそも、なんでもかんでも「自分で考えて自分で動く」をやると、多くの場合、特に企業においては「いやいや、ちょっと待ってよ」ということになるのではと思います。「ここまでは言われなくてもやってほしい」「でもこういうことは確認してね」「これは自分で勝手に決めないでね」という複雑で見えない線引きがあるのが現実です。それを忖度しながら「主体性」を発揮することを期待するのは、この上なく高度なことを期待していると思った方がいいでしょう。

「主体的に」という曖昧な言葉ではなく「具体的に」何をすればいいのかを伝え、その上で、上手くいったことは続けられるように、上手くいかないことは変えていけるように、そこでコーチングスキルを活用するのが効果的です。

3. 「気の持ちよう」まで期待しない

「主体的に」の話にも近いですが、私たちが相手に指示をしたり、教えたり、提案をすることができるのは「行動」についてです。

行動は自分の意識で選択をすることができますが、気の持ちようは本人も選択ができない場合も多くあります。あなたとしても結局のところ、物事がスムーズに進んだり、完了することを希望しているのではないでしょうか。もちろん、それを、気分良くやってもらえるに越したことはありませんが、それは具体的な行動をしているという次の段階の話として切り分けた方が気が楽です。(「相手がどんな気持ちになるとしても、とにかくやらせればいいんだ」と言っているわけではありません。)

人間、明るい気分のときもあれば、落ち込んでいるときもあるでしょう。ネガティブな思考の人もいればポジティブな思考の人もいます。

もし仮に、落ち込んでいる人・ネガティブな人に影響を受けるとしたら、それは相手の問題ではなく、あなた自身の問題です。

人は、他人が上手くいっていないときはそれをその人のパーソナリティ(内面)のせいにする一方で、自分が上手くいかないときはそれを環境や状況(外面)のせいにするという思考の傾向があると言われています。

そういう傾向があるので、それはそれで仕方のないことですが、上手くいかないことを相手の内面のせいにしても物事が解決するわけではありません。あくまで、「具体的に」「何をしてほしいのか」を「行動として」伝えることが、お互いの間にあるものごとを上手くいかせることにつながっていきます。

4. 「期待はずれ」をなくすには?

「期待はずれ」が起こるメカニズムについてまとめると、多くの場合

・そもそも「期待」を伝えていない
・「期待」の内容が曖昧
・「気の持ちよう」まで期待している

が原因です。

「期待外れ」が起こることへの対策は、「心の中の曖昧な期待」をやめて、「具体的な行動」として相手に伝えるということです。

もし「期待」を具体的に言葉で伝えることに抵抗があるとすると

・自分の経験では「期待」は無言で察するものだった
・細かいことを言われるとやる気をなくすんじゃないか、嫌われるんじゃないか
・細かいことを言うのは失礼ではないか
・細かいことを言うと自分が威厳を失うんじゃないか
といった経験上のバイアスや、恐れを持っている可能性があります。

自分の内面にしっかりと向き合うことも大切ですし、まずはやはり自分に対しても「私には何ができるだろう」と新たな行動を検討してみることをおすすめします。

もちろん、どんなに具体的に詳しく伝えても相手がなかなか理解してくれないということもありますが、伝えること・受け取ることは共同作業です。あなた自身ができることが他にはないか、そもそも本当に伝えているのか?ともう一歩考えてみることで、新たな選択肢が見つかるかもしれません。

                           awai 佐藤 草


Integral Human Science Lab では、人間の行動や心理に関するメカニズムや、「本来持っている力を発揮する」ためのヒントについてご紹介しています。あなたの今日が、少しでも楽に楽しいものになると嬉しいです!

画像1







このページをご覧くださってありがとうございます。あなたの心の底にあるものと何かつながることがあれば嬉しいです。言葉と言葉にならないものたちに静かに向き合い続けるために、贈りものは心と体を整えることに役立てさせていただきます。