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クライアントが上手くいっているとき、 セッションでは何をすればいいですか? -フィギアスケートに学ぶコーチの役割-

今日はコーチングの実践を重ねている新米コーチからこんなご質問をいただきました。(もう新米ではないですね!)

クライアントさん、最近迷いがなくてすっきりしている状態になったそうです!そんな中で昨日セッションがあったのですが、リクエストが特になかったんです!何をしたらいいのかなぁと逆に困ってしまいました。

人間関係や環境面、健康面、エネルギーロスなど視点を変えて聞いてみたのですが特に不満はないとのこと…。

今迷いはないです!聞いてほしい話もないです!気がかりも特にありません!な状態の時、そうさんだったら何をするかお聞きしたいです!

こんにちは、ご質問をいただきありがとうございます。
「最近迷いがなくなってスッキリしている状態になった」素晴らしいですね!コーチングを効果的に活用いただいているからこその状態なのではと思います。

そんなときのセッションではどうしたらいいのかというはある意味嬉しい悩みかもしれません。そんなときはどんな風にセッションをしたらいいのか…そのヒントを、ちょうど昨日と一昨日に観戦したフィギアスケートの大会での選手とコーチの様子から学んだことを参考にご紹介します。

今回のようなことはコーチングが軌道に乗ってくると起こることでもあるので、質問者さんと同じような悩みを持っているコーチの方や、部下にコーチングをしている方、コーチをつけていて「今は割と順調だけど、コーチングをどうやって活用しよう」と感じている方に役立てていただけると嬉しいです。

1. 上手くいってもいかなくても、選手はコーチと話をする


私は昨日と一昨日、オランダのハーグで開かれたチャレンジカップというフィギアスケートの大会を観に行きました。(シニア男子では宇野昌磨選手が優勝、田中刑事選手が準優勝、シニア女子では紀平梨花選手が優勝、横井ゆは菜選手が準優勝と日本人選手が大活躍をしていました!)

演技が始まる前の練習では4人から6人くらいの選手が同時にリンクに出てで滑りますが、各選手のコーチはそれをリンクサイドで見守っています。そのときに、誰がどの選手のコーチかは一目で分かります。それは、コーチは自分がコーチをしている選手から決して目を離さないからです。

練習をする選手は、ジャンプやステップが成功することもあればそうでないこともあります。そんな中、どんなタイミングで選手がコーチの方を見たとしてもコーチは必ず視線を返していました。選手は時折コーチのところに行って何か話をします。そしてまたリンクを滑り始めます。

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*練習中に選手とコーチが話をする様子

演技の前には、選手とコーチは、ハグをしたり、ハイタッチをしたり、言葉を交わしたり。それぞれの方法でコーチは選手の後押しをします。演技が始まるとコーチはやはりリンクサイドで選手の様子をじっと見守ります。

そして演技が終わると、リンクサイドで選手を迎え、キス・アンド・クライで選手と一緒に点数が出るのを待ちます。さらに、次の選手の演技が始まっても、選手とコーチはそのまま話をしていることも多くあります。

前日、全くミスをしなかった選手も次の日の演技の前に必ずコーチと話をしています。そして新たな演技でミスをした選手も、そうでない選手も、必ず試合の後にコーチと話をしています。コーチのいない選手はいません。

これはなぜでしょうか。


それは、選手はこれからも試合に参加し続けるためです。

もし試合が1度きりなら、「滑りきって終わり」でもいいかもしれません。しかし、実際には選手にとって試合は1度きりではなく、これからも何度も試合に参加し続けていくのです。

だから、「上手くいったこと」も「上手くいかなかったこと」も今後の成長や成功に向けた学びやエネルギーに変えていく必要があるのです。

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*ビクトリーランをする宇野昌磨選手と田中刑事選手 挑戦はこれからも続いていく

2. 「上手くいっているとき」は成長や成功に秘訣を見つけるチャンス


フィギアスケートの演技は、フリープログラムでも4分という限られた時間ですが(と言ってもとても長く感じるし、そこにはものすごい集中力やエネルギーが必要になります)、私たちの仕事や人生にも同じことが言えるのではないでしょうか。

「今」もしくは「数週間」「数ヶ月」という短いスパンで切り取ったとき「上手くいっている」かもしれませんが、長い目で見るとこのさきまた色々な状態のときもあるかもしれません。クライアントが成長とともに新しいことにチャレンジをしようとするとその分ぶつかる壁も困難なものになるでしょう。

そのため、上手くいっているときほど、「上手くいく秘訣」を見つけておいたり、今後に向けて筋肉や精神力をつけておくことを後押しをするのがコーチの役割なのです。(今回男子シニアで優勝をした宇野昌磨選手も昨年から今年にかけてコーチ不在の時期がありましたが、その間、宇野選手は持っている力を出しきれない状態になってしまっていたそうです)

もしあなたがフィギアスケート選手のコーチだとして、選手が完璧な演技をしたら、その後にどんなことを話しますか?

きっとこの質問から色々なことを想像してもらえるかと思いますので、私からはポイントだけご紹介します。

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*美しい滑りで優勝をした紀平梨花選手 完璧に見える滑りをしても終了後にコーチと話をする

3. クライアントが上手くいっているときのコーチングセッションのポイント

<クライアントが上手くいっているときのセッションのポイント>
①上手くいっているときは「上手くいくメカニズム」を見つけるチャンス!
②「以前はできなかったこと」ができるようになっているかも!?
③人生は長い道のり、成功や成長の「再現性」を高めよう!
④余裕があるときほど自信を貯蓄しておく
⑤上手くいっている喜びを一緒に味わい、見守り続ける

ポイントというか、なんだか格言のようにもなってしまいましたが笑

コーチングを学び実践している方であれば、①から⑤に対して具体的にどのようなことをすればいいのかというのは色々なアイディアが湧いてくるのではと思いますがいかがでしょうか。

大切なのは、コーチがどのようなスタンスでクライアントとともにあるかです。課題や不満を解決・解消するだけがコーチの役割ではないですよね?

「上手くいっています!」
「そうなんですね!」
というだけでは、普通の会話と変わらなくなってしまいます。

どうやってそれができるようになったのか、どうしたら持続できそうか、以前の自分にはできなくて今できていることは何か、現在の体験から学べることは何か、今後に活かせることは何か…etc...

今の状態だけでなく、その人の長い人生を想うと、聞いてみたいことは色々出てくるのではないでしょうか。

上手くいっているときはセッションの頻度を下げてもいいかもしれませんが、どんな状況からも学びやエネルギーを得ることができる習慣をつけることで、人は持っている力を発揮して活き活きと毎日を過ごし続けていくことができるようになるのではないか、コーチはどんな場面でもそれを後押しすることができるのではと思います。


フィギアスケートでは、選手の演技中、観客が拍手をしていないところでコーチだけが拍手をしていることがありました。もしかしたらそれは選手が以前はできなかったことができたり、できたところがさらに美しくなっていたところだったのかもしれません。

そんな風に、他の人には分からないことも見つけて、「できているよ」と知らせることも、いつも選手の様子をじっくりと見ているコーチだからこそできることかもしれません。

「どんなに上手くいっている選手でもコーチをつけている」

その理由に思いを巡らせると、やれることがまだまだ見えてくるのではと思います。

ところで、あなたは今回、どうやってクライアントが今の状態になることを後押しできたのでしょうか。

またぜひお話しを聞かせてください。

                                                                                                       a w a i 佐藤 草

*個人的にいただいたご相談を元に相談者の許可を得て、ご相談内容を編集したものに回答を記載しています。通常のコーチングセッションでは、お悩みの相談をお受けすることやアドバイス・セッション内容の公開は行なっておりません。

Integral Human Science Lab では、「本来持っている力を発揮するためのヒント」をご紹介しています。

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