対話者としての自分自身を深めるということ 道なき道を自らあゆむ探究者たちの挑戦

ともに未来をつくるために必要な対話とは

一年前と数ヶ月前、こんな記事を書きました。

現在わたしたちが直面する地球規模の課題を乗り越えていくため、また、ひとりひとりが日々の中で自分自身の命にしっかりとつながって生きていくためには、お互いの考えや欲求の背景にあるものを知り、さらに新しいアイディアをつくっていくような、共感型・生成型・共創型のコミュニケーションが必要なのではないかと、そんなことを考えていました。

多様な文化や背景を持った相手と繋がりをつくり、合意形成をしていくためには、相手に対する共感を向けるコミュニケーションが必要ですが、そのためにまずは自分自身を深く知るための内省が必要です。

なぜなら、自分の考えや欲求の出所を自分自身で理解していなければ考えや欲求の違う他者の考えや欲求をフラットに受け止めることができないためです。

内省は一人でも行うことができますが、他者との対話や支援によって、人はより高度な内省能力を発揮することができます。

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さらに、内省や共感から一歩踏み出し、具体的な行動を起こしていくためには、新たなアイディアや考えを生み出すための生成的・共創的な対話が必要となります。

これらは、今あるお互いの考えや経験を共有し合うのではなく、そこに生まれている対話の場や、自分たちが身を置き、直面しているシステム全体から学びを得るような対話でもあります。

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この共創型のコミュニケーション(生成的な対話・共創的な対話)というのは、決まった型を使えるようになりさらにいくつもの型やフローをクライアントに合わせて自由に活用できるようになった先にコーチが発揮する探究的・相互学習的な関わりとも共通したものがあるように感じています。

コーチとしての「離」のステージ

自分自身の哲学や成功体験に捉われず、より有機的・相互学習的にクライアント自身が持つ変容や成長の力が発揮される機会を提供するステージ。

好奇心を原動力に実践する、体験から学ぶ

では、共創型のコミュニケーションとはどのように発揮されていくのでしょうか。

これまで10年にわたってコーチとして、またコーチングスキルのトレーナーとしてさまざまな方や組織・チームと携わってきた経験を通じて実感しているのは「わたしたちは現在の力では乗り越えることが困難な現実(課題)と直面したときに新たな力や視点が発揮される」ということです。

どんなに書籍を読んでも講座に参加していても、自分自身が現実の暮らしや仕事の中でそのテーマに直面していなければ、「なるほどそうなのか」「知って良かったな」で終わってしまうことになるでしょう。

学びが血肉になっていくためには、真剣に向き合わざるを得ない現実がそこにあるということが必要です。

そもそも生成的・共創的な対話というのはスキルや型を学んだり、書籍を読んだり、一方的に講義を聞いたりして身に付くものではありません。

実際に歩んできた道や価値観、視点が違う人たちと対話を重ねることによって「違いの出どころを捉える視点」や「未来をともに紡ぐ力」は段々と発揮されていくようになります。


もともとわたしたちは「体験から学ぶ」という力を持っています。

理論として整理されていることの多くは、わたしたちが普段体験していることが紐解かれたものであり(ときに体験や実感・直感に反するものもありますが)わたしたちは、そのときの自分に必要な学びの種に日々出会っているのです。

さらに、関心や好奇心を原動力にすれば、無理矢理がんばろう・学ぼうとしなくてもどんどんと自分で実践と探究を続けていくことができます。


しかし今はさまざまな情報に簡単にアクセスできるようになったこともあり、「自分が本当に関心があることはどんなことなんだろう?」「その奥にはどんな想いや願いがあるんだろう?」と自分自身に問いかけることなく、自分の外側にある情報に手を伸ばし続けるということが起こってしまっています。

気づけばいつまで経っても「正しいとされていることを教えてもらう側」「誰かが発信していることを受け取る側」で居続け、「まだ足りないような気がする」という焦りに駆られ続けるということも起きているかもしれません。

対話者として自らを深めるために

コンテンツの消費者としての学びではなく、日々を生きることと直接つながりをつくり、さらに学びから何かが生まれるような生成的な学びの場や関係性をつくることはできないだろうか。

生成的・共創的な対話を対象として学ぶのではなく、自然と生成的・共創的な対話が生まれるような場や関係性をつくることはできないだろうか。

そんな想いから、対話者としての自分自身を深めるために、自らテーマを設定し、仲間とともに実践と探究する取り組み「CO-INQUIRY for Authentic Professional -Integration-対話者としての自己を深める・さまざまな自己を統合する」を開催することにしました。

これは、2021年の1月から開催してきた「CO-INQUIRY for Authentic Professional」の締めくくりであり、さまざまな自己を統合する統合ステージでもあります。

実践探究者のみなさんの探究テーマとこれまでの旅路

この取り組みは、これまであゆんで来られた道のりも、現在のお仕事や想いもさまざまな6名の方とご一緒しています。

取り組みが始まって約2ヶ月、「探究テーマを自ら決める」という、みなさんとの実践と学びの時間から、それぞれの方にとって大切なものにつながり、深めるような体験が生まれていることを感じています。

前置きが長くなりましたが、ともに実践と探究に取り組んでいる実践探究者のみなさんの取り組みを今日はたっぷりご紹介します!

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お名前(もしくはニックネーム)
お仕事
探究テーマ

(お写真)

これまでの気づきや学び・ご感想

(綴られているものや取り組み)

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Miyuki Suto

宇宙感覚と物質世界をつなぐアーティスト /
発達志向型組織を目指し急角度で成長するスタートアップではたらくわたし / 直感と透視に長けた対人支援家

探究テーマ
わたしがわたしであることの探求 / わたしがわたしでありながら他者と関わることの探求、他者との関係性 / わたしがわたしでありながら組織と関わることの探求、組織でのhealthyな才能発露

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私個人のテーマが、気づけばグループ全体のテーマにもなりました。それぞれのジャーニーに共通するものがあり、「わたし」「わたしと組織」「わたしとあなた」というテーマを各個人sideのナラティブと場のナラティブがそれぞれあるように感じています。
個人で深めることと、ひととともに深めていくことで、深い探求に繋がっています。自分におきていることを言葉にする機会と、言葉にしあえる仲間がいることで、グループで手をつなぎながら深海に潜ってく。そのような体験をしています。

Miyuki Sutoさんの日々の言葉たち
つぶやき(Twitter):日々の表現 / ビジネス感覚と宇宙感覚の共存
リフレクションジャーナル(note):

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ゆき

対話する人

探究テーマ
自分と、対話する相手の中にそれぞれ存在する種を育み、観察したい

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勉強会の最初のあたりは、自己を開示することへの抵抗がかなり強かったです。でもそれはわたしがわたしを受け入れていなかったのではという結論に至り、勉強会をペースメーカーとしながら、可能な限り自然と触れ合い、わたしと対話する時間を持ちました。
わたしのペースでゆっくりわたしを受け止めればいい。わたしは、わたしの一番の場所であり続けたい。どんなに変わっても、どんな状態にいたとしても、弱くっても、小さくっても、悲しみの底にいても、わたしは、わたしとともにあり続ける。わたしは、ありのままにわたしと関わる。
 そんな決意のような想いが湧き上がってきたとともに、閉じられていた感覚が少しずつ戻ってきて、自然と触れ合うことがさらに心地よくなり、わたしの声を、耳にする機会が増えました。
また、関わる相手に対して、うまくまだ言葉にできませんが、内側から発光するようなイメージをいだくようになり、どんな色なのだろう?どんな風に変わっていくのだろう?と種から花よりもその育っていく・変容していくプロセスに興味がわき、他者を知ることへの好奇心が、より育っているのを感じます。
そうさんを含め、勉強会に参加されている皆様とともに時間をご一緒させて頂くことで、世界の見え方がまた変わってきました。一人じゃできなかった、見えなかった景色をプレゼントしていただき、ありがとうございます。今後とも、よろしくお願い致します。 

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Aya

対話と選書で言葉の贈り物を届けるパーソナルコーチ / HR(採用支援)

探究テーマ
感性や感情を表現しながら、
社会の中でより活き活きと力を発揮していくには?

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Ayaさんはこれまでの学びをnoteに綴られています。

AyaさんのLinktree(SNSやPodcastなど)はこちら

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嶋浦顕嶺(しまうらあきお)

羊毛照明 「Ovis Lamp」代表、
灯りと対話の場「yoritoco七芽の羊」運営者

探究テーマ
自分の魂を知り、磨き、震わせること。
ことばにならないものごとを、受け止め、味わい、深めること。

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「ことば」というものの、意味について、感覚について、違いについて、あらためて根源から感じ直すような時間を過ごせています。
ことばを扱うことに意識をおいたメンバーと時間をともにできることからも、その探求の広がり方深まり方に相乗効果が高まっているように感じます。
ひとつひとつ、丁寧に、向き合う大切さと方法を学んでいます。

嶋浦顕嶺さんの取り組みはこちら
『yoritoco七芽の羊』
「灯りで安心な場をつくり、対話で自分を知っていく」
自身の2つの活動である、「灯りのものづくりと対話の探求」を合わせた取り組みです。

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さき

対話を通じて、夢や目標の実現を応援するパーソナルコーチ

探究テーマ
自分のあり方について

毎回のセッションを重ねる中で、「わたし」や人との関係性についての考えが深まっていく感覚があります。それは、一人ではきっと辿り着かなかったものばかりで、そうさんからの問いや、探求会をご一緒させていただている皆様からの影響が大きいなと感じています。
同じ問いでも、そこからうまれてくるものは人によって全く違うこともとても面白いです。その違いが、自分のオリジナリティーでもあり、さらに「わたし」について理解を深めるきっかけにもなっています。

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岡部友理子(ゆり)

パーソナルコーチ、ファシリテーター

探究テーマ
「愛」そして「パートナーシップ」とは?

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私らしい愛・パートナーシップを探求したいと思い、このテーマにしました。
これまで「愛は自ら与えるもの」となんとなく思っていましたが、今はそうではなく、「自分を満たした先にあふれ出るもの」と思うようになりました。そう考えると誰よりも自分が自分らしく、自由で軽やかにあることが一番の愛なのだと思うようになり、そうあれるよう日々実践を続けています。
「パートナーシップ」については、社会の中の役割や価値観にとらわれず、本当の意味でその人たちらしくあれることがこれからの「パートナーシップ」なのではと思うようになり、こちらもいろいろな変化が起こっています。不思議とこういったことをテーマにすると実生活でいろいろなことが起こり、絶賛探求・実践中です。

岡部友理子さんのつぶやき(Twitter)はこちら

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ともに学び、問いを更新し続ける

「自らテーマを設定し、実践し、探究を続ける」というのは、テーマや情報を与えられることに慣れているわたしたちにとって決して簡単なことではありません。

しかし同時に実は、とても創造的でわたしたちの命が喜ぶ取り組みでもあります。

ともに実践をし、探究をする仲間がいることで自然と「わたし」という存在や感性のユニークさが立ち現れてきて、さらに「わたし」や「わたしたち」の境界がゆらぐ。

それは自分自身や世界を見つめる視点が更新されることであり、生きるプロセスで身につけてきた囚われからの解放と、さまざまな違いを持つ他者との調和が起こっていく、そんな体験を探究者のみなさんとともにしているように感じています。

実践と探究の旅路は折り返しにやってきたところ。

そしてこの取り組みが終わってもずっと続いていくことでしょう。

これからもこの、奇跡のようなご縁でご一緒しているみなさんとともに学び、問いを更新し続けていければと思っています。


最終回を終えての実践者の皆さんの声や取り組みのデザインについてはこちら▼


このページをご覧くださってありがとうございます。あなたの心の底にあるものと何かつながることがあれば嬉しいです。言葉と言葉にならないものたちに静かに向き合い続けるために、贈りものは心と体を整えることに役立てさせていただきます。