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富士山が世界自然遺産になれなかったのは、本当にゴミ問題?

皆様こんにちは。
本田拓郎(Takuro Honda)と申します。
この記事へお越しくださいまして、ありがとうございます。

 このnoteでは、今現在観光業に就いている私が、私の目線で、「観光・旅行・歴史・文化・教育」について、知識や新たな発見の提供、その他自論を展開し、「勉強になった!」や、「こんな考え方もできるなぁ」という、古代ギリシャでいう「アゴラ」のような場所を目指します。私が勉強していることを皆様とも一緒に学ぶというスタイルで、記事を創っていきます。

 今回の記事は、日本の最高峰「富士山」についてです。2013年に世界文化遺産として登録された富士山は、日本人が世界に誇る財産です。では、なぜ山なのに文化遺産に登録されたのでしょうか。世界遺産の概念と一緒に考えてみましょう。

拙い文章力と乏しい考察力ではありますが、
最後までお付き合い、お願いいたします。

1. 富士山が世界文化遺産になった理由

 現在日本には、23件の世界遺産があり、そのうち19件が文化遺産4件が自然遺産です。世界に目を向けると、1,121件の世界遺産が登録されています。富士山は日本の世界遺産ではまだ新しい方で、その裏には紆余曲折があったとか、なかったとか...

 富士山が評価された点は大きく2つあります。
 1つ目は、古代から続く、山岳信仰の伝統が強く残っていることです。「富士講」と呼ばれる山岳信仰組織を中心に、富士山自体を神様として信仰していた歴史が評価されました。
 2つ目は、古くから文学や、絵画の題材とされていたことです。日本最古の物語である『竹取物語』にも登場し、江戸時代には葛飾北斎の『富嶽三十六景』のテーマになり、ヨーロッパ文化にも影響を与えました。

 世界遺産になるには「世界遺産にしたい!」って意思表示から、登録まで最短でも1年半かかります。かなり長い道のりです。その中で、富士山が文化遺産として認められた背景には、「文化的景観」という世界遺産の概念の1つがあります。

 「文化的景観」とは、「自然と人間の共同作品」と定義付けされており、自然と共に歩んだ人間の歴史や文化が見られる世界遺産のことです。日本では、「紀伊山地の霊場と参詣道」で初めて認められました。外国では、ワインブドウ畑やテキーラ畑などの農業地域や、その国のアイデンティティを創造した渓谷や山岳地帯が登録されています。富士山も雄大な自然を持ち、古くから日本人の文化と共に歩んだ歴史が評価され、世界遺産になったんですね。

2. ゴミ問題だけじゃない、自然遺産としての価値

 おそらく日本としては、国の宝である富士山をどうしても世界遺産にしたかったのでしょう。初夢で見る縁起物でもあるし。でも、富士山周辺で見られた不法投棄等のゴミは、一時期社会問題になるまで大きく発展します。世界自然遺産には、美しい自然環境はもちろん、独自の生態系の保護などが求められ、国を挙げて管理を徹底しなければなりません。

 でも、富士山にはほかにも、自然的価値が認められない理由がありました。まず、「成層火山の典型例」であることです。簡単に言うと、同じような形の山が日本だけでなく、世界中にたっっっっくさんあり、自然美や景観美、独特な自然現象の顕著な例ではないということです。鹿児島県にある成層火山の開聞岳を例に挙げてみましょう。こちらの山も美しい成層火山で、春先は菜の花との景観がとてもきれいな山ですね。その美しさから、愛称は「薩摩富士」です。北海道の羊蹄山も見てみましょう。キタキツネやエゾリスなどの生息地で日本百名山にも選ばれているこの山の愛称は「蝦夷富士」です。このように日本だけでも富士山にそっくりな山が多くあり、自然美の価値が薄れているのですね。

 さらに、かなり類似した事例として、他の世界遺産が先に自然遺産として登録されていたことも挙げられます。ニュージーランドにある世界遺産の「トンガリロ国立公園」は、富士山が世界遺産に登録される23年前に世界自然遺産になってます。富士山と見間違えるほどそっくりなナウルホエ山など、3つの活火山が1990年に特有の火山地形が評価されて世界自然遺産に認められました。さらに、1993年には、先住民マオリの聖地として、世界で初めて文化的景観が認められ、文化遺産としても範囲が拡大し、どちらの要素も併せ持つ、世界複合遺産として登録されています。要するに、世界遺産に似たようなものはいくつも必要ないということで、富士山の自然遺産的価値は認められなかったのです。

3. 圧倒的ネームバリューと三保松原

 それでも富士山は2013年に世界遺産登録を果たします。富士山だけでなく、周りにあるいくつもの関連遺産と一緒に認められたのです。トンガリロの文化的景観と大きくことなるのは、周囲の構成資産の豊かさです。富士山信仰の中心組織「富士講」の遺跡や、現代の富士山信仰の象徴である富士山浅間神社など、一帯の統一感が富士山にはあったのです。

 さらに、江戸時代の芸術作品に影響を受け、ヨーロッパの芸術作品にも登場していた富士山は、日本文化の象徴として、世界中に圧倒的なネームバリューがあったのです。

 そして、文化遺産の調査をする国際機関ICOMOSが絶賛したのが、日本三大松原の「三保松原」でした。富士山からはかなり離れている三保の松原ですが、そこからの遠景が和歌の題材や浮世絵のモチーフとなっていたため、周辺地域との完全性が認められることになりました。また、「羽衣伝説」などの神話的エピソードも、登録を後押ししていたのかもしれません。

 余談ですが、静岡県をホームにし、J1で戦う清水エスパルスのマスコット、「パルちゃん」は、三保松原羽衣伝説の天女をモチーフにしたキャラクターです。ぱっと見男の子ですがアクティブで愛嬌があって、とってもかわいい女の子のマスコットです!!このように、現代文化にも大きな影響を与えているのがよくわかる例でした笑

4. もっと、世界の"Mt.Fuji"へ

 昨日、今年の夏、富士登山口全てが閉鎖されることが決まりました。私も富士登山は死ぬまでに一度は経験したいのですが、今年はそのチャンスはなさそうです。

 古くから、富士山というご神体を登って参拝する、「登拝」だけでなく、遠くから参拝する「遥拝」という習慣が日本にはありました。では、今はその習慣を知っているのは日本人でどのくらいいるでしょうか。富士山が世界遺産に登録された意味をもっと学び、その文化を後世へ継承していくのが、今を生きる私たちの役目ではないかと思うのです。

 そのために、もっと富士山を身近に感じれるプロモーションをすれば、日本だけでなく、世界に富士山が浸透していくと思います。富士山って静岡県、山梨県だけで見れるものではないですよね。東京都庁の展望台からも、神奈川県の江の島からも、遠くて和歌山県からも(相当気象条件が揃わないといけませんが笑)、移動中の新幹線からも、見ることができます。新幹線の車内アナウンスで、ちょこっとだけ信仰文化の紹介とかあったら、面白いと思うし、もっと富士山に興味が沸くのではないでしょうか。

 日本最高峰の富士山は、一番高いところから、私たちを見守ってくれてます。富士山は、世界に誇れる文化遺産として、環境保護と共に、いつまでも美しくあってほしいと思います。今は外出自粛で、富士山まで足を運ぶことが出来ませんが、収束した時の旅行先の第一候補としていかがでしょうか。神的なパワーを授かりたいですね!

長くなりましたが、
読んでくださいまして誠にありがとうございます。
Ciao...

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