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avenir'e座談会〜大原研二×ダニエーレ・レオーニ×三浦葵〜

avenir'e活動一周年を記念して始動した座談会。
最終組は大原研二、ダニエーレ・レオーニ、三浦葵。
2nd createではメインディレクターを担当し、全公演にドラマトゥルクとして関わるほか、外部では俳優としての活躍も目覚ましい大原、母国イタリアで演劇を学び始め、俳優、ダンサー、演出と様々な経歴を持ち、avenir’eでは脚本を担当、満を持して5th createで上演が決まったダニエーレ、そして1st、2nd createに俳優部として参加、3rd createでは音響と照明のオペにも初挑戦し、外部での活動も幅広く積極的に行う三浦。
三人が一年を振り返ることで捉える、avenir'eの現在地とこれからとは。

同時進行で行う事が出来たら「劇場を持たないアンサンブル」的な感じがする(大原)


大原研二(以下、大原):なんか性格出ちゃいそうだな。

三浦葵(以下、三浦):めちゃめちゃ出ると思う。 やだ~(笑)

大原:どうですか?一周年らしいですよ、avenir'e。

三浦:一周年かぁ〜。

ダニエーレ・レオーニ(以下、ダニ):一周年以上だと思う。初めての会議は12月だから。

三浦:ん?あぁそっか!

大原:すごい覚えてるね!

ダニ:変なところ、横浜の場所で。

大原:変なところ(笑)

三浦:(笑)

ダニ:建物見て、怖かった。

三浦:んー!

ダニ:なにも知らなかったから、変な建物みた。

一年前を懐かしみながら、楽しげに始まった座談会
変な建物を見て怖がるダニエーレ

三浦:分かる!私も最初そうだった。

大原:あ、ほんと!

ダニ:ほんと怖かった、逃げたかった。

三浦:あはは!

大原:ダニは一番誰も知らないもんね。

三浦:そうですね、 うん。

大原:そう考えるとすごい濃密だったな。

三浦:ん〜どうですか?体感として。

大原:体感として(笑)

三浦:一年経って。

大原:どのくらい経ってるとか考える暇もなかったから、改めて言われると、あぁ一年経ったんだと思って。

ダニ・三浦:うんうん。

大原:でもやってることが、ちょっと一年にしてはすごい沢山あったなって。

三浦:そうねぇ、確かに。

ダニ:このユニットすごく速いです。

大原:そうだねぇ。

三浦:速いね、 うん。

ダニ:速いです。一年間でパンパンパンって別の劇しました。日本は知らないけど、イタリアのほとんどの劇団は一年間で一つの劇をします。

三浦:ええ!そうなんだ!

大原:わ〜そうなんだ。一本ぐらいなんだね。

ダニ:だから速すぎると思った。

三浦:へぇ〜!じゃあ一年で稽古しっかりやって、本番、みたいな?

ダニ:そしてプロモーションと他のことして、そうしたら一年ぐらい。

大原:色んなことにちゃんと時間をかけるんだ。

ダニ:だからavenir'e入って、「あ、 この人たち工場みたい!」って。

大原・三浦:あはははは(笑)

三浦:たしかにそうかも。 でも、日本でも珍しいですよね?

大原:うん。こんなペースはなかなか。 しかも一本ずつが結構長い。1ヶ月くらい本番やるのをデフォにしているからなかなか珍しいよね。

ダニ:うん。

三浦:だからなんか、普段出てた外部のところとかって、なんだろ…稽古の思い出が多い気がするんだけど。

大原:うんうん。

三浦:けどavenir'eに入ってから、本番の中で色んなことが変わっていったり考えていったりっていうのが多いから、なんだろう。
稽古と本番の境がない?っていうのが新鮮だったな。ほぼずっと本番みたいな気持ちでいた。

ダニ:(笑)

大原:そうか。言われてみたらそうかもね。

三浦:うんうん。

大原:僕はやっぱり、ドラマトゥルクかディレクターとして関わるから。流石に稽古と本番は...(笑)

ダニ・三浦:あはははは(笑)

大原:感覚の違いはかなり大きい(笑)やることもだいぶ変わるから。
でも俳優さんにしてみればそうだろうなぁ。

三浦:そうですねぇ。

大原:でも海外、イタリアとかで一本やるとして、期間はどれくらいなの?一ヶ月とか?

ダニ:そう。一ヶ月くらい。

大原:やっぱりちょっと長いんだ。

三浦:今うち(avenir'e)が一ヶ月…は無いか。三週間くらいでしたっけ?

大原:二週間弱かな。

ダニ:日本の他の劇団に比べると長い?

大原:長いですね。大体小劇場は一週間くらいが多いんじゃないかな。

ダニ:だから私いつも観るの間に合わない。

大原・三浦:あぁ〜!そっかぁ!

三浦:確かにそれはある。

大原:僕もあるもん。だってやっぱり一週間だとそれを知る前に、というかそろそろだなって思った頃にはスケジュール大体決まっちゃってて、そこ埋まっちゃってるともう観る機会が無い。

ダニ・三浦:うんうん。

三浦:本当にそう。 だから長くやっていればお客さんにとってはいいのかもしれないけど、その分興味を引き続けられないと難しいな〜って。

大原:「まだやってるし大丈夫か!」って気持ちにね、なるもんね(笑)

三浦:そうなの〜(笑)

ダニ:ドイツの劇場では毎日違う演劇をします。

大原・三浦:えっ!!

ダニ:同じ劇団だけど毎日違う演劇(演目)をします。 だから毎日同じお客さんも来れます。

大原:毎日違うの!?

三浦:すご!!

ダニ:(笑)

大原:僕あの〜、 昔、 大衆演劇っていう時代劇とか踊りや歌もある三幕もののやつやってた時があって。

三浦:え、 そうなの!?

大原:芝居のゲストでね、入るような形で。そこは毎日違う演目なんですよ。座組の人たち全員どの本も入ってて「明日これやります!」って。

三浦:あ、別の座組で稽古してるとかじゃなくて同じ人たちがやるんだ。

大原:そう、同じ人が。しかも前日だけ稽古して。

三浦:すごいですね、それは。

大原:殺陣とかも前日の芝居が終わった後に集まって「じゃあこのシーン殺陣つけようか?」ってやって。「じゃあこれでお願いします。」って解散してみんなで飲みに行く、みたいな。そういう生活の繰り返し。

三浦:かっこいい!!大変そうだなぁ、憧れるけど。

大原:その日の出番が終わると「お疲れ様でした!」って出てって良い(笑)あとはカーテンコールに帰ってきてね、みたいな。

三浦:いや〜かっこいいね、なんか。

大原:浅草の花やしきの近くでやった時は、出番終わって「終わったね〜。」って出て、目の前に飲み屋さんがあってそこで飲んで、みたいな。

三浦:avenir'eでもそれ出来たらめっちゃカッコよくないですか?プロ集団!みたいな。

ダニ:(笑)

大原:そういう感覚に近くなったら良いなっていうのはある。レパートリーが増えていって、みんなどれでもやれるみたいな。

三浦:いつでも「これできます!」みたいにね。

大原:だったら稽古も割とショートカットできるから負担も少ない。できると、ますますこう、工場みたいにね、すごいスピードで。

ダニ・三浦:あははは!!(笑)

大原:いや、いいのか分かんないけど(笑)

ダニ:ほんとにしたい?

三浦:ちょ、ちょっと考えます...。出来たらカッコいいよねって言ったけど、工場みたいにと言われたら、それはちょっとどうなのかしら?って(笑)

大原:でも全部やる必要はないからね?

三浦:あーそうね、たしかに。

大原:全部に出てる必要はない。

三浦:ガッツリ稽古です!バンッ!てやってぎゅっと公演するのと、なんていうか地続きでやる?っていう両方の良さがありますからね、きっと。

大原:どっちの形式もやれたらいいな〜。ちょっと今の規模だとアレだけど、もっと人数もいて、通年ずっとやってるバージョンもあれば、一本の作品を時間をかけて作ってる、みたいな。
同時進行で行われてる、みたいなのが出来たら「劇場を持たないアンサンブル」(※avenir'eの名前の由来)的な感じがするな〜って。

三浦:その言葉忘れていた…!

大原・ダニ:(笑)

大原:avenir、アポストロフィー"e"のeは、

大原・ダニ:アンサンブル!

三浦:そうだ、前にホームページ見返しててそうだったなって思ったのに(笑)

ダニ:ほんとに忘れてた?

三浦:(ダニの言葉が聞き取れず)なになに?

大原:ほんとに忘れてた?って。

三浦:ほんとに忘れてたの(笑)なんでそこ疑うの?(笑)

ダニ:(笑)

三浦:でも今回おもしろいですね、メンバーが。あみだくじで決まったんだけど。演出と、脚本と、俳優と。

大原:ああ、これね(笑)

ダニ:どうだったの?

三浦:あ、この一年やってきて?

ダニ:うん。

生活も「これか、 これか」っていうことを決めないで一緒にやる(ダニエーレ)

三浦:そうねぇ、こう、一概に楽しかったとも言えないし、苦しかったとも言えないって感じなんですけど。
やっぱり初めての環境になることが多かったから、こう長い日数公演するとか、公演数を多く打つとかで、私は戸惑うことが多かったかなって。
何が大変だったかっていうのが、ロングランをする中での自分の調整とか、体調管理だとか、その芝居をどう楽しみ続けるかっていうのがこう、越えなきゃならないなって思ったかな。

大原:そうだよねぇ。

ダニ:劇団のメンバーは初めてですか?

三浦:劇団のメンバーはね、初めてじゃないんです。前に別の劇団に入ってて。で、そこをavenir'eに入るタイミングで辞めてって感じ。

ダニ:うんうん。

大原:そうだねぇ。なんかこう、ちょっと生活の一部に近づいたりとかするといいなぁっていうのはあって。
あと、世界的にどうなのかは分からないけれど、こう、一個の作品を作るとなると、僕の日本人の作り方のイメージだと、すごく没頭して稽古期間中エナジーも時間も割いて、みたいなのが今までの感じだとあったりするんだけど。
それってその期間、その決められた期間はやれるかもしれないけど、やり続けてたら生活に支障が出たりとかするじゃない?
その支障が出る感じというより、なんか、どっちも充実してる感じみたいな塩梅が、むしろ良い作品が生まれるんじゃないかな〜って感じがする。

ダニ・三浦:うんうん。

大原:やっぱり日本人って真面目だし、グワーってなってる方が良くなるんじゃないかって気もするから。でも疲れちゃうし。

ダニ・三浦:(笑)

大原:それこそ、ちょっと体調が、みたいなことも起こりやすいし。
っていうよりは、ずっとやり続けることが可能な、ずっとダッシュじゃなくて、走ってるけど全然走り続けられますよ、みたいな塩梅が見つかるといいのかなって。 自分を含めてね。

三浦:うんうん。なんかこう、私生活とのバランスっていうのが難しいと思ってて。それで私すごく良いなって思ったのが、ダニがバカンスに行ってたじゃない?

ダニ:うん!

大原:写真送られてきたやつね!

三浦:そう!私、その写真が送られてきたりするのがすごく良いなって。

大原:癒されるよね(笑)

三浦:そういうのって大切にしたほうがいいと思うし、そういうのがOKな環境ですよって言っても、日本人の私…私はね、特に、すぐ順応できるわけでもない、今までのやり方があったから。
でもなんか、これが色んなメンバーがいる良さだなと思って。

大原:すごい分かる。

三浦:そこにバカンスの写真がポンって入ったことで風がぶわぁっと吹いたみたいな(笑)

大原・ダニ:(笑)

三浦:それがすごく良いなって思ったんだよね。

大原:なんか癒されるの。羨ましいって感じじゃなくて、行った気になる(笑)

三浦:そうそうそう。

ダニ:いつも同じ俳優を使うのでなければバカンス出来ますね。行きたい場合はどうぞ!って。

大原:いやほんと。どうぞ!なんだけど、でもこれ日本人はやっぱり感覚的にね、みんな頑張ってるのに〜みたいなのが起こりやすいよね。でも全然そうじゃなくていいんだよね。

ダニ:私もその感じがあります。でも旅行したいから!

大原:絶対そっちの方がいい!

三浦:ほんとに。それがいい。

ダニ:私も昔は生活を半分半分にしてました。
演劇をするか、旅行をするか。どっちかを決めていました。でも、もう40歳になったから、ちょっと、うん(笑)

三浦:ダニ40歳なんだ!知らなかった!

ダニ:41歳です。

三浦:へぇ!

大原:あ、1か!

ダニ:だから、生活も「これか、 これか」っていうことを決めないで、一緒にやります。

三浦:や〜すごい分かる。

ダニ:世界の色んな場所にもいっぱい行きたいけど、一つの生活じゃ足りないから、演劇をしながら同時に旅行したいです。

大原:それ出来るのが一番いいと思うけどなぁ。でもセクションごとにやっている仕事も違うし、働き方も違うから、それは本人の良いように使ってもらうのが一番良いからね。

ダニ・三浦:うんうん。

大原:でも俺自身もなんだかんだ心配になって稽古場行っちゃうしさ、呼ばれてもないのに(笑)

ダニ・三浦:(笑)

大原:ドラマトゥルクだからずっとべったりしてなきゃいけないかって言われると別にそうでもないのよ(笑)

ダニ:ドラマトゥルクは責任を負うから。

大原:そう。だからいない間になんか起きたらって心配になっちゃう(笑)

三浦:いつかそういう概念?みたいのを取り払って、自分のライフスタイルの中で大切なイベントだったりとかと、演劇っていうののバランスをとりながら、自分がどう幸せに生きるかっていうのを考えていきたいなってめっちゃ思ってる。特にここ二、三日(笑)

大原:あ、 ほんと!すごいタイムリー。

三浦:そうなんです!

ダニ:(笑)

大原:ライフスタイルっていいね。たしかにね、なんかそういうのになるといいよね。

三浦:うんうん。

大原:なんかオシャレなインタビューとかされてみたいじゃん。「俳優のライフスタイル」みたいな。

ダニ・三浦:あははは!!

大原:なんかすごい大変な生活送ってるっていうイメージばかり持たれるから(笑)
いや、こういうライフスタイルのセレクトをしてるんです的な感じで取り上げていただけるような生き方をしたいよね。

三浦:目指したいな〜そこを。そういうのが課題、っていうとなんか堅っ苦しいな。目標にしたいと思っている。

大原:それは本当ある。なんでこんな心配性なんだろう(笑)

ダニ:日本の考え方?

大原:うん。ほんとそうだと思う。

ダニ:私も旅行したとき、ちょっと罪悪感を感じました。

大原・三浦:え、そうなんだ!

ダニ:4th create(※avenir'e 4th create 『髙橋さんと家入くん』 『リズム7』)のとき、私沖縄行ったじゃないですか。ちょっと罪悪感感じました。

三浦:わ〜そうだったんだ。

大原:俺はあの写真に癒されてたけどね(笑)

三浦:誰しもがそういうので罪悪感を感じなくていいようにしていきたいですね。

大原:そうなんだよね。 おかしいんだよ。だって感じる必要もないのにね。ちょっとそのへんは(自分が)ドラマトゥルクであったりもするから考えていきたいな。
余裕というものが、創作にとってはなんかこう、「甘いもの」ではないんだよっていうのがみんなの中に実感として残るようにしていきたいな。
それで出来上がる作品と、いい塩梅がとれたらいいよね。「血も涙も骨も全て捧げなければ良い作品はできない」っていう幻想をぶち壊していくためには、そういう成功例?成功体験みたいなのが出来たらいいなと思うから、頑張ります!
率先して僕も沖縄行きます(笑)

ダニ・三浦:あははははは!

三浦:それいいかも(笑)そのためのやり方が、 試しながら徐々にやっていけてるっていうのがavenir'eの良さだと思うな。
例えば「入口出口のワーク」もそうだし、身体もメンタルの状態を数値化するのもそうだし、そういうのを出来るか分からないけどやってみよう!って姿勢がいいのかなって思う。

ダニ:それはあります。

大原:まだ未知だけどね。いいかもしれないと思ったものは取り入れてやってみる、みたいなことはよくやってるしね。

三浦:うんうん。なんかこう、「安心安全」っていうのも言葉で言うのはすごく簡単なんだけど、それってすごくザックリしてて。
最近読んでる『差別感情の哲学』っていう本があって、「差別を無くそう!」っていうのは簡単だし、無くなったほうが良いっていうのも分かってるけど、人間それぞれ嫌悪感だったりとか表出しないけど、思っていることはどうしても消せないから、そこをどうしていくかみたいなことが書かれていて。

大原:実践的なね。

三浦:そうそう。それを理論立てて書いてあるみたいな感じで。
んで、演劇の現場でもハラスメントの事とかあって「安心安全」っていうのが良いっていうのは勿論そうなんだけど、 でもそれをバーンって看板だけ掲げたとしても何も変わらないよね、じゃあどうすればいいのかを考えていかなきゃいけないよね、っていうのがavenir'eだと出来ると思ってるし。
私が別で出演した団体でavenir'eでやっていたことを「これやってみたいです!」って言ってやってみたらちょっと良かったみたいなこともあって。そういうのを広めていけたらいいと思うな。

大原:すごい分かる。

ダニ:うん。

大原:聞こえは良いけどなにを指しているか分からないものに、ちゃんと方法をつけられるといいよね。
「こういうことをするとこういうことが起きやすいですよ」みたいな間を繋ぐ方法みたいのがね。
まぁ、完璧なものは存在しないし、常にアップデートして見直さなきゃいけないけど。
でもなんとなーく看板を立てて、みんなこうだね〜って言えばうまくいくかって言われたらいかないから。
そのための方法はなんだろう?って一緒に考えられる人とじゃないと、なかなか難しいんだろうな〜と思う。

三浦:うんうん。

大原:最近、「意識の共有」みたいなのも大事なんだろうなっていうのはすごく感じるな。さっき言ってた創作と日常のバランスがとれて余裕があるっていうのが大事なんだけど。
それって何のためかって、やっぱりクオリティの高い、プロとしてお客さんに価値を提供するっていうその意識は揃えないと、「余裕があるこの時間でしか作れないからこのくらいでいいや」っていう人が混ざっちゃうと難しいと思う。
「求められるものはココですよ」 っていうのは一緒だけど、でも「それやんなきゃいけないんだから休んでる場合、沖縄行ってる場合じゃないでしょ!」ってことにはならないっていう(笑)

ダニ・三浦:(笑)

大原:沖縄行きながらやれるようにするために、僕たちになにが必要なのかを考えましょうっていう。 それは技術かもしれないし、さっき言った方法論かもしれないし。
そうじゃないと急に「あっ沖縄行くべきじゃないんだ」ってなっちゃう。
いつまでそういう作り方続けられる?80歳までそのやり方できないでしょ(笑)

三浦:30でもちょっとしんどい...。

大原:最近色んな人のワークショップに参加したり、最前線の人の話を聞いていると、意識をしっかり揃えてからスタートしているからオフ中何してても誰も気にしてないもんね。
ここがズレちゃうと「あの人はストイックすぎる」とか「あの人はオフの間遊びすぎている」みたいな気持ちが起きやすい。
だから意識の揃え方って大事だなって思うけど、なかなか難しいところだね。

自分の中の言葉がどんどん無くなっている気がするからそれを取り戻したい(三浦)

ダニ:avenir'eはワークショップをすることも多いですね。

大原・三浦:あ〜たしかに!

ダニ:それも面白いです。

大原:稽古がない時もやってるもんね。

三浦:それって結構大事ですよね。

大原:昨日、制作的な打ち合わせを風くんとかとしてたんだけど、その時にもポッと出たもんね。
ワークショップ的なことで「これやってみたら面白そうじゃない?」っていうのが。 面白そうだからやりたくなっちゃうっていう。

ダニ:すごく分かります。

大原:なんかワークショップっていうと堅苦しく聞こえるかもだけど、きっかけは「試してみたら面白そうじゃない?」ってことでやってるから、そんなに難しいことをしているわけじゃないんだよね。遊びの延長みたいな。

ダニ・三浦:うんうん。

大原:ちょっと大きいホール、安いとこを借りて、みんなでそこで例えば岸田(國士)とシェイクスピアをやり比べてみて、

三浦:うぉ〜!!

大原:一番奥の席まで果たして自分たちの演技が届いているのかどうか検証してみる、みたいなのも面白そうだなって。

三浦:いいですね〜!!

大原:やっぱり今は(上演が)小さい会場が多いから大きな空間ではどうあったらいいか測りかねるところがあるし、やってみると発見が多そうだし面白そうだなって!

三浦:やってみた〜い!ダニエーレはイタリアにいた時とか、どういう劇場でやることが多かった?

ダニ:各州で違います。ミラノには東京みたいに大きな劇場も小さなスペースも色々あります。
私はミラノで二番目に大きい劇場で一回だけ働いて、劇団のメンバーになりそうだったことがあった。 でも本当にクレイジーな人がいて(笑)
働きにくかったし、支払いもいつもしたくないみたいな感じだったから。

三浦:うわぁ!

大原:そうなの!?

ダニ:だし、知り合いで一緒に働いていたメンバーもまあまあミラノで有名になったけど、給料はものすごく低いです。
私もちょっとトラブルがあって出ました。その二年後には日本に来ました。

大原:そのカンパニーって、例えばスカラ座が抱える劇団、みたいなのっていうこと?

ダニ:はい、もちろん。

大原:意外とそういう感じなんだ。

ダニ:劇場の劇団もあるし、独立の劇団もある。日本と一緒で。

大原:そういう所にいる人がそんなクレイジーなんだね。なんかちゃんとしてるのかと思った。

三浦:ちゃんとしていて欲しいっていう気持ちがある(笑)

大原:意外とそうなんだね。 でもそういうシステムが日本にはほとんど無い。 無いっていうか聞いたことないな、劇場が抱えるカンパニーがあるっていうシステムが。

三浦:新国(新国立劇場)のバレエ団くらいのイメージしかないな。

大原:演出家とかが劇場の芸術監督として居るっていうのはあるけど、劇場のカンパニーみたいな感じってあまり無いからね。「劇場を持たないアンサンブル」なので、avenir'eは。
この間、風くんとも喋ったけど「劇場を持たないアンサンブル」 じゃなくて、本当は「劇場を持ちたいアンサンブル」だねって。 カンパニーを抱えたい劇場さんはいつでもどうぞ的な感じで(笑)

三浦:「持たないぞ!」じゃなくて「持ちたいね」ってね。

大原:そうそう、持ちたい!っていう(笑)

ダニ:アゴラ劇場(※こまばアゴラ劇場)くらいの劇場、 いっしょに買いましょう。

大原:劇場ごと!?

三浦:(笑)

大原:でも場所ができるっていうのはいいよね。

三浦:ドラマトゥルクの本でちらっと読んだんですけど、あれはドイツの話だったかな?
劇場があるとそこに決まったお客さんが来るから、お客さんが演劇を見る目がどんどん育っていくみたいな話をしてて。
芝居を見るだけじゃなくて、それに関するいろんなプログラム、例えばavenir'eでやったけど、ワークショップをお客さん向けにやるとか。
そういうのを企画していくからどんどんお客さんが楽しむ力が付いてくる。 だから劇場付きの劇団があるっていうのはそういう意味でも良いって言ってて、なるほどねぇって。

大原:いや〜そうだとは思う。まぁ大変だからね、劇場としても。リスクもあるし劇場の運営自体が大変だから、なかなか持つって発想が難しいんだということも分かりつつね。
avenir'eで「ウチこんな感じでやってますけど任せていただけますか」 って言えるような公演を増やしていきたいなぁと思いはしてます(笑)

三浦:出来ることの幅も広がりそうですしね。

大原:さっき言ってた、継続的に生活の中であれもやってこれもやって、自分はこれの最中休みだから、その休みを使って他のことをやったりっていうのも、年間のプログラムみたいなのがあると作りやすいからね。

三浦:うん。素敵。

大原:だって常に考えてますもん。avenir'eが始まって、一年に4回?4thまで、まぁ間に自分の企画、annex(※研技術研究所 avenir'e annex vol.1 『屋上庭園』 『solo play ある親子の問答』)みたいなのもやったりしたけど。
全部スケジューリングみたいな事とか、こっちの事を進めないと間に合わないな、みたいなのを考えることがすごく多くなったから。

三浦:大原さん大忙しですもんね。

大原:大忙しでは無い(笑)常に稽古場で忙しいんじゃなくて、割とミーティングとかで忙しい感じはあるね。
大したことは言えないんだけど、脚本家チームのミーティングにも居るし(笑)

三浦:あ〜そっか!

大原:それは話を聞いてて、ああ創作するんだったらこういうお客さんとの繋がり方ができると、なんかこう…世の中とも繋がれるんじゃないか、みたいな事を考えるネタみたいなのが皆の話の中にあるから、それを聞くために入ったりとかするんだけど。
まぁ、でもそれをやるには「これくらいには動き出さないとみんな苦しくなるんだろうな」みたいなのは考えていて。

三浦:あれ…私何か喋りたいと思ってたんだけど忘れちゃった!

大原:あら(笑)でも全然、 記事には載らないかもしれないけど、「別巻 三浦葵」 でnoteに載せていただいて(笑)

三浦:(柴田)美波ちゃんの『休刊 柴田美波』(※俳優部の柴田美波が自分が出演しないavenir'eの公演時のみ発行するフリーペーパー)みたいにね(笑)

大原:そうそう。個人noteの方に、続きはこちらって。

三浦:noteね〜。やってたけどなんか文章書くのしんどいなと思って辞めちゃ…いや、 辞めては無いんだけど…。

大原:自分の得手不得手がわかってきた?

三浦:そう!それすごい大きいかもしれない。 何が得意か…得意っていうとアレだけど、何に興味があって何が苦手なのかが分かってきたかな。
noteとかも始めてみて「しんどい、 辞めよ!」で、 スペース(※Xの機能)でなんか喋ったりするのは割と楽しい。
だから読み合わせとかを最近やってるけど、なんだか思ってもなかった好きなことに気づけたのが最近嬉しいことの一つかな。
で、本当に私は『やりたくないことはやりたくない』というタイプなんだなとも思ったので、じゃあ自分の興味のあることでもっと出来ることはないかなって考えるようになったな。

大原:それすごい良いんじゃない?
さっきのダニのクレイジーな演出家もそうだけど、この仕事やってる人ってやりたいことしかできない人ばかりだろうから、基本的に。
だからそれを伸ばしていくほうがいい気がするしね。

ダニ:実は私は、1st(※avenir'e 1st create 『音のない川』)を観る前は心配でした。どんなステージをやるのかなとか、脚本を読んでも疑問がありましたし。

大原:うんうん。少し特殊な作り方してたしね。

ダニ:でも観て、本当にびっくりしました。本当に良かったです。1st creat観て、「このメンバーでやれるのが嬉しい!」って思いました。

三浦:おおおお!!

ダニ:最初は心配があったけど、観てから安心な気持ちになりました。上手でした本当に(拍手)

三浦:嬉しすぎる!(一緒に拍手)

大原:そうだよね。とっても日本的な本だったしね。日本人っぽい、間の余韻みたいなのがなかなか特殊な感じではあった。

ダニ:私はいつもフィジカルな芝居をしていましたから、本を読んだだけではよく分からなかったんです。だからみんなにどうだったのか聞きたかったんです。

大原:僕も1stすごい印象に残ってる。 だってみんな稽古場でずーっと喋ってるんだもん(笑)ディレクターの風くんも含めて。

三浦:そうそうそう(笑)

大原:本読んでないよね今日、 みたいな。 ドラマトゥルクなんだけど 「みんな不安とか過ってませんか?大丈夫ですか?」 って思ってた(笑)

ダニ・三浦:あはははは!!

三浦:たくさん喋れるっていうのが私にはすごく良かったなって思ってて。
avenir'eの顔合わせの時に、「何を目的にavenir'eに入ったか」みたいな話をしたんですけど。
それで私は「自分の中の言葉がどんどん無くなっている気がするからそれを取り戻したい」って言ったんです。
それは今までやってたことが悪いとかでは全く無いんですけど、やっぱりこう「言われた通りにやる、演出どおりにやる」っていうのが染みついちゃってて。
じゃあ自分はどうしたいの?自分はこの作品をどう思ってて、どんな作品にしたいと思ってるの?っていう自分の考えや言葉がどんどん無くなってて、無くなってることにも気づいてなかった。
でも徐々にそれに違和感を感じてきたんです。「あれ?私ってこの本を通じて何をやりたいんだろう?」みたいな感じで。
本当は思いや考えがあったと思うんだけど、 放置して無視してきちゃった感覚があるから、それを取り戻したいなって。
んで、話す時間がすごい長いじゃないですか、avenir'eは。 私は喋ることで考えを整理していく傾向があるから、それがこう、言えるようになってきたのが良かったなって。
最初は戸惑いましたけどね。「あ、 読まないの?モノローグ長いけど大丈夫ですか…?」って(笑)

ダニ・大原:(笑)

三浦:でも最終的に「いっぱい喋れる!イェイ!」ってなったかな。

ダニ:稽古の時間はどのくらいだったんですか?

三浦:稽古時間は….え、どのくらいでしたっけ?

ダニ:一ヶ月?

大原:一ヶ月も無かったと思う。

三浦:うん、たしか。しかも2チームあったから…

ダニ:一ヶ月も無い!?すごい俳優です!!

大原・三浦:あっははははは!!

ダニ:一ヶ月も無くて素敵な劇した!ワオ!!(拍手)

大原:2チームって考えるとそれぞれはもっと短いしね。すごいね!

三浦:すごい!イェーイ!

大原:そういう、いろんな作り方やれそうだしね。そして速くなっていくだろうし。

三浦:体に入ってるといいなぁって思います。
私は3rd(※avenir'e 3rd create 『VALUE!』)は音響照明のオペで入ったし、4thは出てないから、ちょっと積み重なってるかどうかは不安なところなんだけど。 次やった時にそれが自然に出てきたらいいなって思いますね。

大原:ある気はするけどね。 自覚が無くても。 気がついたらすごく創作のスピードが早くなってる気がする、みたいなこととか、見てると結構感じたりするから、気づいたら言います(笑)

ダニ・三浦:(笑)

大原:いっぱい喋りましたが、(三浦に)大丈夫?なんか思い出せた?

三浦:あ、大丈夫です!喋れました!

大原:あ、じゃあちょっと別巻にはならないそうです。

ダニ・三浦:あははは!

三浦:いや分かんない。またスペースとかで喋りだすかも。

大原:いや良いと思うよ。楽しいと思うことをやったほうがいいよ。

三浦:そうですね。や、 本当に思う!出来ないことをやろうとするの辛いから!

大原:年取ってくるといろいろあるからアレだけど、楽しいことをやってて「これもっとこうしたいな」ってなった時に、 苦手だったことが「あ、これが出来たらもっとこう出来るじゃん!」って楽しくなるから。

三浦:わぁ、そっかあ。

大原:苦手なことを、自分出来ないからやらなきゃでやってくと絶対続かない。

三浦:待つのも大事か。

大原:そうそう。待ってる間に繋がってくるから。

三浦:そうですね。考えすぎずにいこう!

大原:そうね!ダニ、次(※5th createはダニエーレの脚本を上演予定)よろしくね!

三浦:台本超おもしろかった!

ダニ:ありがとうございます。

大原:ゲラゲラ笑ったよね(笑)

三浦:…こんな感じ?(笑)

大原:楽しい時間でしたね。

三浦:楽しかった!ありがとうございました。

左:大原研二(おおはら けんじ)
研技術研究所 所長
1975年5月18日生まれ 福島県出身
特技:英語・三味線(予定)
舞台・映像で俳優として活動しながら個人やTOHOKU Roots ProjectとしてWSファシリテートやアクティングトレーナーとしても活動。

真ん中:三浦葵(みうら あおい)
1993年12月6日生まれ 岩手県出身
特技:マッサージ
桐朋学園芸術短期大学卒。
劇団東京乾電池研究所下北沢アクターズ・ラボ卒。
俳優として舞台を中心に活動中。

右:Daniele Leoni(ダニエーレ・レオーニ)
1982年7月6日 イタリア ミラノ出身
映画と演劇を専門とする文化遺産科学の学位を取得
特技:執筆、フィジカルシアター
ミラノ国立大学演劇科、芸術科を卒業。2010年ミラノのFranco Parenti劇場にて俳優として活動。
10年前に日本へ。コンテンポラリーダンサーとして活動。
2016年に福岡のKonya2023にて、サミュエル・ベケットの「幸せな日々」を演出兼出演を担当。
現在東京に居住、劇作を行っている。

編集/三浦葵
録音/斉藤沙紀
構成、撮影/柴田美波


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