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新たな街へ —紀行、2023夏①

今年も休みを取った。

去年の休暇の後に現実との落差で苦しくなったけれど、一度自由を知ってしまったからには後の苦しみを見て見ぬ振りしてまで自由を欲してしまうのだ。

期間は5日間。
今回もまた偶然に次ぐ偶然で、縁もゆかりもない地に滞在先のつてがあったので、そこで過ごすことにした。
ただし、飛行機を使わないといけない場所で、去年よりも多少はりきった準備が必要だった。
去年より短いけれど、現地でも仕事をしようとしていた去年に比べ、今年は初めから周囲に休暇を宣言してその間だけは会議やメールのやりとりから離れることにした。

・・・・・・

1日目。

昨日の最終便で移動してきていたので、朝から街に出て、中心部を回った。
観光地としても有名な街だったから、シンボルとなっているものをできる限り訪ねた。

午後はバスで少し離れた丘に行き、街を見渡した。
初めて来る街だった。
今年はここが“私の街”になるのか、と少し感慨深かった。


2日目。

隣町にも知られた名所がある。
ずっと昔から気になっていた場所だったので、1日を潰してでも行こうと思った。

どんどんと街の喧騒が消え、気づいた頃には空と、海と、電車と、それから広いまっすぐな道路を走る車しか目に入らなくなった。
太陽が真上にあるような時間にようやく到着して、お昼ご飯。
私が昔から憧れていたその地は、私を裏切らなかった。


3日目。

山に登ろう、と思った。
なぜならそこに山があったから。

去年過ごした町は、すぐ裏が山で、ちょっと散歩がてら山に続く道を歩いていくことができた。
今年、過ごしているところはそこそこ栄えた街で、周囲が山に囲まれている程度だった。
だからこそ、見えている山に、登りに行かなければならないと思った。

———この辺りから、目に見えて何かがおかしくなっていた。

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