見出し画像

東大でフレンチを食べた


先日紹介したフランス料理屋をようやく訪問することができた。記事の執筆時点では「営業再開初日に行ってやろうか」などと目論んでいたのだが、いろいろと都合が合わず先延ばしにしてしまっていたのだ。

「みんな知らないだろうから教えてやろうしめしめ」と思い、自信満々で行きたい旨を友人らに伝えたのだが、思いの外反応は渋かった。少し不機嫌気味に理由を問いただすと、本当に1100円もの価値があるのかどうか信じ難いらしい。挙句の果てに生協の200円のカップヌードルを食べたいなどといいだすものだから私は呆れた。渋谷至近にありながら木々が茂り、ちょうちょうがとぶキャンパスにフレンチレストランなんて、もう本当に雰囲気ドンピシャではないか。どこの誰だか知らないが、よくもまあ「よし、東大にフレンチレストランを作るぞ」なんて思い立ったものだ。心の底から褒めてあげたいし、この際味なんてどうでもいいではないか。美味しければそれに越したことはないが1時間バイトすれば貯まる額だし、うかうかしてる間に再度休業なんてこともあるかもしれない。大事なのは駒場でフレンチを食べるという経験なのだ。もはや学食の丼があそこで提供されてもそういうものだと思い込んで納得してしまうかもしれない。

店頭で論争を繰り広げた末に、とうとう友人4人らと共に入店することとなった。会話の中身を聞かれていやしまいかと不安だったが、シェフらしき方がにこやかに案内してくれたのでその心配はなさそうだ。学内らしく落ち着きながらも風格を漂わせる内装で、長距離走後の薄汚いシューズで入店したことを心の中で今更恥じた。

画像2

予想通りといえば予想通りだが、我々意外に生徒らしき人はいなかった。5人全員緊張しているのが伝わってくる。なんとか無事に全員注文を済ませ、サラダビュッフェとパンを各々調達した。サラダビュッフェと名乗りながらもパングラタンやライスサラダなど10数種の前菜が並んでいるので舌を巻いた。さっきまであれほど渋ってた友人も目の色を変えて野菜たちを物色している。もう言うまでもないがどれも美味しかった。瑠璃色のガラス瓶からグラスに注いでもらったただの水さえ美味しく感じる。

そんなこんなである程度腹を膨らましたところでメインが運ばれて来た。肉か魚かを選べるのだが、全員「ミートローフ 玉ねぎと白ワインのソース」をチョイスした。そう、私はあれだけ魚を選ぶと前回の記事で太字にまでしておいたのに肉を選んでしまった。でもそういう人間だから仕方がない。散々無駄な時間をかけて悩み、いざというときには周りに合わせたり、気分に任せたりするのだ。今回に関してはミートローフが大変美味しかったので正解だったと言わざるを得ないのが悩ましい。黄色いソースが特に美味しく、みんな「うめ~」と羊の如く口をそろえてバクバク食べていた。風味はハンバーグに通じるものがあるが、もう少し濃い味付けがなされている。然るべき場所には然るべき店が建つのだと食べながら感動した。1100円でも十分安いが、コロナ禍前は800円のセットもあったというのだから驚くほかない。

画像2

そうして、食後の一杯が提供されて優雅すぎるランチタイムは幕を閉じた。実は私は苦いものが苦手でコーヒーもダメなのだが、雰囲気に酔ってコーヒーをオーダーした(紅茶も選択できるので甘党の同士諸君はご心配なく)。相変わらず苦みと酸味しか感じなかったが、友達は褒め称えていたので「美味しいねえ」などと適当に相槌を打っておいた。

こうして、幸福感で腹を満たして私たちは店を後にした。「フランス語を勉強して、本場のフレンチを食べに行きたいなあ」と余韻に浸っていたら、韓国語の小テストを思い出して少し陰鬱な気持ちになった。近いうちに新大久保に韓国料理も食べに行かねばなるまい。

ルヴェソンヴェール駒場HPhttps://leversonverre-tokyo.com/restaurant/komaba.html




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?