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夢を録画する

「夢を録画できる機械を発明したらノーベル賞」


昨日だったか一昨日だったか、水道橋博士氏の生配信を見ていたら、こんな興味深い発言をなさっておりました。
なるほど、素晴らしい機械だ……とは思いませんでした。

少し話がそれますが、その理由をつらつらと書き連ねるので読んで頂けたら幸いです。
絶賛、業績不振、凋落にあえいでいる真っ最中のTBSラジオで、かつて22時から『荻上チキ・Session-22』という様々なトピックを扱うニュース・情報番組が放送されていました。
放送されていたと過去形にしたのは、放送時間帯の変更に伴って名前も変わったからで、現在は昼か夕方に放送されているそうです。私は22時台に放送されていた時点で、『水曜日のダウンタウン』がおもしろすぎて徐々にリスナーではなくなりましたが。

さて、その番組内で睡眠特集が放送されたんです。
睡眠の量や質は大切です。健康やパフォーマンスや性格に影響を与え、その結果、人間関係など多大な影響を及ぼしますから。番組は、睡眠の専門家つまりお医者さんを呼んで色々な話を訊いた上で、リスナーからの質問メールをぶつけます。
するとほとんどのメール内容が、睡眠に関するものではなく夢に関するものだったんです。
「こんな夢を見るけど何でしょうか?」
「正夢ってあるんでしょうか?」
「夢を覚えていないんですけど大丈夫でしょうか?」
記憶が定かではないのですが、おそらくこんな内容のメールが届いたはずです。その都度、専門家は真摯に答えるのですが、まあ番組趣旨からはズレていますよね。で、最終的に専門家は夢に関してこういう私見を述べるのです。

「夢なんか見ない方がいい。夢はぜんぶ悪夢だから」

まるで、「いつか必ず白馬の王子様が迎えに来るんだ」と夢見ている少女に投げかけるハラスメント的言葉。しかしこれは、睡眠中に見る夢の話です。

私は、えらく首肯しました。
夢ほど思い通りにならない物はないと思いませんか? 夢ほど筋の通らない支離滅裂な話はないと思いませんか。
成人して、住んでいる場所も変わったのに、今の家からなぜか小学校に向かい、挙句に遅刻するなんて夢はよくあると思います。しかも当時、遅刻なんて歯牙にもかけていなかったのに、どういうわけか教師に怒られることをやたらとビビっている。で、ついた場所は小学校ではなく受験会場。試験官は会社の上司。上司となぜかお墓を購入できるかどうかの、意味不明の面接。
悪夢ですよ、悪夢。キチガイ夢です。

科学的には、起きている時間に見聞きした情報を脳が勝手に再編集した物、それが睡眠中に見る夢と言われているらしいです。しかも眠っている最中にも外界からの影響を受けます。
夢の中で、「ゆう子! ゆう子!」と呼びかけられてハタと目を覚ますと、恋人が自分を起こしている最中だったなんてことあるでしょう。そのとき、現実で行われていたことが、夢の中でも行われていた、と思ってしまいがちです。
しかしあれは、外界から名前を呼ばれた瞬間に、瞬時に新情報を取り入れて夢の中に組み込んでいるだけです。外界に影響されているんですね。

そんな理由で、「夢を録画できる機械を発明したらノーベル賞」には頷くことができないのでした。支離滅裂な悪夢を見ても楽しくないですから。一人か二人の悪夢を見て飽きられるのが関の山でしょう。

それにしたって夢はぜんぶ悪夢は、私にとって金言でした。