備忘録的散文詩:絵描きの罪 (very short short)
罪
歩道に堕ちていた花束
花束といってもきっと誰かへのプレゼントじゃない
498円のシールが花を包むセロハンに貼ってある
近所のスーパーで買ったものかもしれない
徒歩なのか自転車なのか
いずれにせよ持ち主に気づかれぬまま
花はするりと堕ちたのだ
落とし主が気づいて戻って来るかもしれない
拾い上げて歩道沿いのブロック塀に立てかけた
翌日それは少しだけ移動して
交差点脇の電信柱の裾に置いてあった
その翌日ペットボトルのジュースが置かれた
数日後新しい花が添えてあった
誰も何もなってないのに
罪の原因を作ってしまった
塀に立てかけたのがいけなかったの?
交番や思いつくスーパーに届けた方が良かったの?
もう遅いかもしれない
何かがそこに生まれてしまうかもしれない
後悔で泣きそう
罪じゃないよ
君の町には優しい人がいるって証拠さ
信じられる確かなひとが言った
だから泣くのをやめた
花束が増えてしまう前に
お巡りさんに撤去のお願いをした
お騒がせな絵描きの罪
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