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絵描きの個展裏話 新作編(個展の話2)


あっという間に1ヶ月

前記事投稿から間を空けずに第2弾を投稿するつもりでしたのに、すっかり夏風邪の奴めにからだを乗っ取られまして、気がついたら、個展を終えて既に丸々一ヶ月が経っておりました。
既に随分と過去のような気がしてしまいます。

前回記事
↓↓↓


第2弾のこの記事は、個展のメインの新作制作中の絵描き自身の心の中のお話です。


新作
敢えて題をつけるならば
『怪物 ~エレメント~』


怪物 〜エレメント〜



あたしの要素


 個展に向けて新作を制作する中で、メインとなる怪物を召喚しなくてはならなかった。
 昨年夏、図らずも産み落としてしまった愛しくて切ない怪物が、今回の展示のコアなのだが、それとは別に、もっと洗練された、言ってみれば泥臭さを浄化させた怪物の姿を求めていた。
 元々フォルム無きフォルムを偶発的にまたは意図的に産み出そうとしているのだから、久々に張った真っさらな白キャンバスをどうしたものかと、どれだけ睨み倒していただろう。
 ある日、自分の影がヒト型の怪物のようにくねくねと白キャンの表面を泳いでいた。

 そう、あたしにとって産み出す作品は自画像なのだ。
 今回の新作が今までと違うのは、過去の作品を破壊した上に成り立ってゆく、時の刻みを積み重ねた自画像ではなく、真っ新な「今」の自画像を描こうとしているのかもしれないということ。
 「今」って何? いつのこと? 「今」って言った瞬間「今」が過去になる。目に見えない「今」。「今」のかたち、質量、色、匂い、音……存在が曖昧だ。
 あたしは考えることを止めた。何も考えずにひたすらパレットナイフだけを動かした。右母指が腱鞘炎を起こすほどに、無心に、何を描こうなどと考えない。

 けれど、考えていたことはある。
 「あたし」という物質を動かしている要素って何?
 「あたし」が絵を描かずにはいられない要因を作ってるのは何?
 そんな疑問が生じた時、そして実際口に出した時、一気に筆が動いた。
 答えがわかったのではなく、衝動が抑えられなくなっただけ。
 欲しい線、欲しい色が出現しては消えてゆく。
 そこに道理も理屈も計算もない……と見せかけて、実は道理も理屈も計算も無意識下でいやらしくもしていたんだと、後から気付く。
 そしてそれは、冷静に怪物に生成されてゆくのだ。

 さて、ここからはモチーフの話。
 目に見えない観念を描いているのだから、モチーフなど基本無いのだが、唯一あたしが人体から離れられない部分がある。
 それは「指」。あたしにとっては、顔以上に表情を感じやすい。「指」が好きだ。
 偶然出会った線から、まず爪が見えてくる。そうすると自ずと「指」が姿を現してくる。それに伴って、怪物の……いえ、あたしの心臓の在処ありかを見つけることができる。
 「あたしの心臓」が鼓動を打ち始める。怪物の誕生だ。

 描いている間、炎に灼かれ、水の渦に飲まれ、竜巻に巻き上げられ、そして産土の大地に落とされる。
 そこでは恵みの太陽、恵みの雨、癒しの風が、穏やかにその大地にあたしを横たえるの。「あたしの居場所」。他には何も無い、空っぽなんだ。
 これがあたしの、今、描きたかった自画像なのかもしれない。
 醜いものが美しい世界、穢れたものが浄い世界だと思える、見えないものを識った時、きっとあたしの心の怪物の目が開いて、何かわからないけれど敬虔な気持ちになるのかもしれない。

 個展開催の一ヶ月ほど前から、精神衛生上良くないことが続いて、ぱったりと描けなくなってしまった。
 もう無理に描かないと決めて、個展に臨んだ。

 元々、横方向で描いていたこの新作は、ギャラリーという地に降り立った時、縦方向に転換することで完成を遂げた。
 縦に置くことでこの作品が昇華されていくような気さえした。
 ほら、天に昇ってゆく何かが容を成してゆく。

 そして、あたしの中は目論見通りに空っぽになるのです。


そしてそして、『怪物 ~エレメント~』に究極の詩を届けてくれた怪物仲間のアポロ
ありがとう
怪物が天にも昇る悦びを地上に撒き散らせております

Element of Hope


Element of Hope

希望に満ちてる
ラブあんどピース♡


次回、個展の裏話第3段に続きます。 
ちょっと面白いから、良かったら読んで下さい。



スキスキありがとう♡




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