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絵描きは穴に執着したい

決して堕ちたいわけではないけれど

こんにちは。絵描きの弘生です。
前回「絵描きは匂いでタイムスリップする」で、幼き頃のモグラの穴の話が出たところで、引き続き穴について……。

「穴」というと、深く底など見えない井戸、出口の確かめられない洞窟、トンネル……。
竪穴、横穴、落とし穴。まずは落とし穴でしょうか。誰かに背中や胸を押されておちたり、うっかり気づかずおちたり、自らあえておちてみたり。
這い上がれるかどうかもわからない穴に身を投じるのは、とても怖いですね。
でも、投じたい時もある。それが好奇心なのか自虐なのか、探求心なのか放棄なのか。
おちていく穴がウサギの穴なら、アリスの異世界に通じます。実に怖いけど魅力的です。
私の個人的「匂いによるタイムスリップ」は、長くディープなトンネルを瞬く間に通り抜け、予期せぬ懐古に時間がとまり、突然現実を疑問視したり。
物理的に気になるのは、穴の奥には何があるのか、どこへ通じているのか、到達点に光はあるのか。
ポケットの穴から、入れたはずのものが消えて無くなっていて、単に落としただけなのに、不思議な感覚を覚えます。

〈上記の穴は194cm×164cmの作品をほんの小さく切り取った一部分です〉

樹の幹の穴などは、ジッと見ていると、その中にワープできそうな気がします。蜂の巣の穴は、なんで美しい六角形の穴の集合体なのだろう、とか、カブトムシの薄い羽が、あの大きな体を飛ばす事ができるのは、羽に孔があいているからだというけれど、どういう仕組みなのだろう、とか。
だんだん違う方向に話が逸れてきましたが、今こうして書きながら、私の作品の中には「穴」の他に「ムシ」もこっそり登場していることを思い出しました。気になるものは、思考がどうしてもつながってしまうのだなと、改めて気づきました。あっ、実際の虫はものすごく苦手ですが!

「領域ー蜘蛛の糸シリーズより」

〈164cm×167cm  キャンバス、段ボールに油彩、いろいろコラージュしてます。気になる穴がこちらを向いていますが、ムシさん達もたくさんうごめいています。探してみてください。都美術館で発表した作品です。まだ破壊していません〉

日常に突如現る暗く派手な穴

蛇足かもしれませんが、少し前に大きな落とし穴に遭遇しました。
本業絵描きとはいえ、売れるベクトルの絵画ではなく、表現のツールとしてのベクトルの創作なので、売れたらラッキー! ということで、生活のために医療従事をしています。
その勤務先に車が突っ込みました。ガラス張りの待合室が破壊され、患者さん数名の怪我人が出ましたが、いずれも軽症で不幸中の幸いでした。まさに壁に大穴です!
予期せぬ事故の穴。怖いです。
でも、ふさぐ事のできる穴、土を均して元に戻る穴であれば、メンタルのダメージも回復できると思います。

ただ、故意な奸計による落とし穴は、本当に這い上がるのは難しいです。まして、自分自身ではなく、それが家族だったり近しい者だったりした場合、自分の事より辛くなります。さらにそれが原因で、家族や近親者を失ってしまった場合はなおさらです。
這い上がるよりむしろ掘り下げて、別の出口を探すほうがメンタル回復には有効な事もあります。おそろしく時間はかかりますが。

〈おまけ〉
幼きムスコちゃんの陶芸作品です。
やっぱりおなかに大きな穴が空いています。


#エッセイ #絵画 #写真 #404美術館 #アート #あな

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