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Well Jiing !! 第3章、お寺が今すぐ応えられる市民ニーズ

お寺の価値は数値化しきれない

〜お寺のKPI〜

民間企業は、リピート率や平均単価などをKPI(重要業績評価指標、Key Performance Indicator)として設定し、経営がうまくいっているか把握しています。現実を直視し、計画通りいっていなければやり方を変えるなど、客観的な数値を活用します。

お寺の場合、例えば観光寺院はWebサイトの訪問者数などをKPIとして、広報の効果測定に活用しているかもしれません。しかし多くのお寺の場合は、「安らぎスポットとして近所の人に喜ばれている」など、数値化できない要素が多くあります。

そして数値化しづらいところにこそ、お寺の存在意義はあるのではないかと思います。「いい法話をしてもらって、おじいちゃんもよかったね」、「お寺の〇〇教室にいって元気になったよ」。何かしらで安心して頂き、喜んで頂く。その評価は「感謝」という数値化できないものです。

民間企業は売上や利益といった数値を目標にしますが、お寺は檀信徒や市民の心を救うこと(結果としての布教)が目標なのではないか?言い換えれば、数字を追う「寺院経営」ではなく、目の前の一人一人の役に立つ数値化しきれない活動の繰り返しです。

お寺には、目の前の生きている人に焦点を当て、救いを与える活動を「担う人」と「行う場所」があります。極端に言えば、市民の数だけ存在するニーズの中で、どのような市民ニーズに応えていけるのか、死から生までのアプローチを少しずつ考えていければと思います。

例、自分が死んだ時のニーズ 

私が最近お受けする相談では、墓じまい、永代供養墓の生前申込み、そしてお葬式の生前相談、が増えてきています。それぞれ何かしら不安があるからこそ相談してくださるわけですが、最近は死後事務委任の話も相談されることが多くなりました。その多くは、永代供養墓を申し込んでも、夫が亡くなった後、自分の時にお寺に連絡をしてくれる人がいない、どうしよう、という不安です。

認知症や障害を抱え、法定後見制度や任意後見制度など制度は整ってきていますが、お葬式やお墓の契約をしていても、葬儀社やお寺に連絡をする人がいないとその実行ができないことになりかねません。

費用面を気にせず対応を用意できる場合には、備えとして任意後見制度や遺言、そして死後事務委任の契約といった対策をとっておくことはよろしいかと思います。最近では大きな資本規模を持つ企業が、死後事務委任にも力を入れてきていますから、費用の負担ができるのであれば、とても安心できる仕組みです。お葬式も予約した、お墓のことも契約した、そして死後事務委任契約もした、という方は今後増えるでしょう。

ひるがえって、お寺はお墓の生前契約は普及してきましたが、その手前のお葬式や、死後事務関係にはまだ時代に適した対応をしてきていない印象があります。住職によるお寺の将来観などにより、あまり長期的な取り決めをしたくないという事情もあるかもしれません。その逆にお寺を母体として死後事務委任に取り組まれるNPOなど熱心に取り組むところもあります。活動への取り組みの違いは、住職の意向次第。

もし、今より多くのお寺がエンディング前後のサポートを担えたら、それだけ多くの地域で、市民の方々に安心を提供できるのではないでしょうか?

例、独居死しないニーズ 

人が亡くなる時、何かしらのコミュニティに属していれば、独居死への不安は抱えなくても良いと思います。

ご近所、グループホーム、友人、毎日のように連絡する趣味の仲間。もちろん、人との関係が面倒、という方もいらっしゃいますから、無理強いできることではありませんが、出来うることなら、特に体調がすぐれないなど不安になったら、まずは一人で住まない方法を考えていただくのも一つだと思います。最近はシェアハウスも増えましたし、独身で趣味の合う方々とルームシェアする、などのライフスタイルも今後は増えていくのではないかと思います。

子供が多い時代に幼稚園を運営し始めたお寺が多いように、これからは認知症者のグループホームの需要は増加して行くと思います。

また、家族が認知症になった時、相談をできる窓口は地域包括支援センターや社会福祉協議会などありますが、その手前、どういう時にどこに相談したらいいのか、どういう支援の仕組みがあるのか、を周知することも今を生きる人と付き合うお寺として大切な役割なのではないかと思います。

(こういう時はここに相談をすると良い、というフローチャートを用意するなどの方法や、近隣との福祉連携を是非。)

例、誤嚥性肺炎にならないニーズ

朝夕のお経に皆さん来てください、という方法もよいですし、町に出ていく方法もあります。

お経を読むことはその経文の意味を染み込ませる意味でも喉を鍛えることにもつながります。住職1人でなく近所の方々に参加頂くことは地域のために有益かもしれません。何しろ高齢者の死因の一つになる誤嚥性肺炎は、喉の衰えが一因として挙げられるからです。

また、行動としては、例えば住職が近所を回って檀家さんの家にピンポンしてゆく安否確認代わりの行動も、気軽に開始できることです。

集まってもらう方法に関しては、何しろお寺には境内や部屋があることを活かす道があります。

ラジオ体操の場として毎朝集まってもらってもいい。

お堂や部屋で、セミナーや集まりの会も行いやすい。

そして例えば、棺を用意すれば、葬送の場もすぐ出来上がります。緊急災害時の備えにもなります。

住職がお寺の外へ出て行く活動をすればするほどに、結果として安否確認や孤独死の削減につながります。

市民に、何かしらを届けることの繰り返しに、市民とお寺の明るい未来があると思います。

長文お読みいただき、ありがとうございました。

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