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子供の頃は好きで小説は簡単に読めたのに、成長するにつれて本1冊を丸ごと覚えようとする癖…

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子供の頃は好きで小説は簡単に読めたのに、成長するにつれて本1冊を丸ごと覚えようとする癖がいつのまにかついてしまって全然読めなくなってしまったので、また読めるようになるためのリハビリと自分の考えをまとめる練習もかねて小説についてはできるだけ多くレビューを書いていきます。

最近の記事

ルポルタージュ イスラムに生まれて:知られざる女性たちの私生活

イスラムの女性は"一人の人間"として生きてゆくことを望むが、それを阻む現実がある 前提: イスラム教には男女平等を原則としつつ、男性は女性を守るという思想であり、性を巡る倫理の根幹がある (あとがきから) イスラム教はよく「性弱説」を前提とした宗教だと言われ、「人間は欲求に勝てない」という弱さを認めるからこそ、男女の空間を分けたり、女性の服装を規定したりする。 *一人と言う部分は、対等であるとか平等などを指す意味として使っています。 まず第一に思ったことは、前提にあ

    • 贖罪

      告げられた言葉の呪縛。それはさらなる悲劇を招く 「あんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。」この言葉に縛られた”5人"の女性。 もちろんそれだけがそれぞれの人の運命を狂わせてきたわけではない。今に至るまでに歩んできた道のりもそうだ。 作中の主要人物の一人、晶子は自身の叔父に次の言葉を言われる 人はすべて平等なんて思ってはいけない。生まれたときから、それぞれが与えられているものは違うのだから。

      • チェイス

        未解決事件を再追及する 第一章は27年前におこった少女連続誘拐暴行事件の犯人が実は冤罪なのではないかという話。キーワードは冤罪、DNA鑑定、そして警察、隠蔽。 冤罪を受けた山崎登(平田満)が冤罪が立証されて釈放されたあとの会見のシーンは恐怖を感じてとても印象に残った。27年ものあいだ冤罪を訴えても聞き入れてもらえず、警察からの暴力、そして自身のあきらめから、感情を失ってしまったかのようなつくり笑い。 第二章は放火事件、少年失踪事件ともに容疑者として裁判にかけられながも黙秘

        • 楽園のカンヴァス

          アンリ・ルソーを巡る、7日間のミステリー。 税関吏ルソーと呼ばれ、生前にまったく評価されなかったルソー。その生涯を振り返りながら、彼の代表作「夢」と、それに似た今作の問題点となる「夢をみた」についての謎を明らかにしていく。 読んでいてあたかも「夢をみた」が実際にあるのではないかと思ったり、「夢」に作中にある謎が本当にあるのではないか、と少し思ってしまった。 お世辞にはうまいとはいえない彼の作品。しかし、なにを持ってうまいというのだろうか?彼の作品は写実的にはうまいとはいえ

        ルポルタージュ イスラムに生まれて:知られざる女性たちの私生活

          カフーを待ちわびて

          優柔不断な彼と突然現れた彼女の恋愛物語。 沖縄に住む主人公明青(あきお)が、とある恋愛スポットにて「嫁に来ないか。幸せにします」と書いた絵馬。 それを見てお嫁にしてくださいと実際にきてしまったヒロイン幸(さち)。 そんな二人の淡い(やさしさを感じる)恋の物語。 舞台が沖縄だからか、のどかというか心地よいゆるさというものを感じた。 結末はとてもよかったのだが個人的に気になるというか気に入らない箇所がある。それは、終盤明青が幸との別れを決心した出来事をつくった人物のことで

          カフーを待ちわびて

          夏の夜会

          記憶の曖昧さ。過去は自分の都合の良いように変わってゆく 同級生の結婚式で再会したことがきっかけで小学校の思い出を振り返り、またその時に起こった殺人事件のことを振り返る。 登場人物の名前の読み方が紅白で「いりまざり」や、指弘で「いいず」など特徴的過ぎて、読み終わるまで読み方が覚えられなかった。逆にその特徴のが人物を読み分けやすい点でもある。 全編通して各人の記憶を元に、過去に起きた殺人事件やそれにまつわる出来事について推理していく(思い出していく)というもので、曖昧な記憶が

          夏の夜会

          DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

          DEATH NOTE本編前日譚 Lが竜崎を名乗るきっかけとなる話 メロ(M)を語り手として、原作本編前に起こった南空ナオミとLの出会いの事件をナオミの視点から描く。正確にはメロがLから聞いたこの事件をメロが自身の脚色を加えて語るストーリー、だろうか? 南空ナオミは誰?という人は本編序盤に出てきた人物で、キラが初めて自分の正義以外の目的でノートを使用して殺したFBI捜査官のレイ・ペンバーの恋人といえばいいだろうか。 物語はナオミと竜崎(L)が協力してロサンゼルスBB連続殺人

          DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

          ファントム・ピークス

          不必要なことを書かないありのままの恐怖 犯人当てをする物語ではないのであえて書くがその恐怖の正体は熊である。 解説で黒沢清さんが「不必要なことは書かないストイックさが、全編にみなぎっている」といっていたり、批評家の佐々木敦さんが「余計なケレン味を排した、シノプシス的な平明さこそ、本作の魅力だと思う」と評価しているように、この作品は自然や恐怖を誇張せずにそのまま書いている。その誇張せずに書いたことが、作られた恐怖では表現できない自然が持っているありのままの恐怖、危険性を鮮明に

          ファントム・ピークス

          鹿男あをによし

          シカに選ばれシカたなく従ったら、シカにされたり日本を左右する出来事に巻き込まれたそんなおかしな話 文中でシカで韻を踏んだところがあったので挑戦してみたらあまりうまくいかず… 舞台は奈良。あと少し京都と大阪。 ストーリーに神話や古代史が絡んでくるが、それはテーマの一部にすぎず、そのせいで読むのが難しいということもなく、また登場人物に特徴がきちんとあるのでキャラ読みでもスラスラと読めたしストーリーもキチンと理解できた。 作中での話題にあるように所々「坊っちゃん」に似ている部

          鹿男あをによし

          サイバーテロ 漂流少女

          ITの専門家と女子高生を主人公にインターネット上でのセキュリティをかみ砕いてその危険性を語る物語 インターネット上でのセキュリティを元にしたお話。 実際にあるネットサービスや実際に起こった事件の例も使い、セキュリティについて詳しくない人でもわかりやすいように工夫されており読みやすかったように思う。(目立つ事柄については巻末にまとめて説明されている。) お話の内容自体はミスディレクション。 前半中盤の盛り上がりに対して、終盤に少し物足りなさを感じた。この部分は著者がアナ

          サイバーテロ 漂流少女

          眉山

          決意と想いを胸にしまい最後まで美しく生き抜く 徳島の阿波踊り 自由奔放で明るい男踊りに比べて忍耐と様式美の女踊り。 しかし、その不自由さによってさらに熱くなる心。 劇中でまさしくこう記されている女踊りのような生き方をしていた、母こと神田のお龍。 最後の二人の刹那の出会いは二人に何を思わせたのだろうか。一人は涙をながしながら見つめ続けるが、もう一人は決して目を合わせることもせず、表情すら変えない。 解説には未練があるから男は女をじっと見つめ、未練があるから女は男を見よ

          暗いところで待ち合わせ

          彼の描く暗闇はどうしてこうも私の心を惹きつけるのだろう 私が乙一さんの作品を読んだのは、天帝妖狐、失はれる物語に続きこれが三作目。 失はれる物語では、事故で一部の指を動かすことと、腕の一部の感覚しかなくなった男性が感じる暗闇での孤独を書いていた。 また今作では、目が不自由な女性の一人暮らしのことを描いている。 私が中学生の頃、授業で付き添いの大切さを感じるためにペアになって片方が目隠しをし、もう片方が付き添いをして校内を一周するということをしたことがあった。私はペアにな

          暗いところで待ち合わせ

          怪盗探偵山猫

          現代の義賊あらわる!! 義賊といっても貧しい人たちに恵んでいるわけではなく、なぜそんなことをしているのかは今作では謎のまま。 物語は、女性警察官霧島、雑誌記者勝村二人の視点から描かれる。 所々、男性警察官を苗字と山猫を男とかき分けているが、行間がないため一瞬どちらのことを指しているのかわからない箇所が何ヶ所かある。 なぜ探偵をタイトルにいれたのだろうか。探偵パートは記者である勝村がしているので山猫自身が探偵パートをしている部分は少ない。 2016年にドラマ化しているそ

          怪盗探偵山猫

          きみはポラリス

          三浦しをんが色々なお題で書いた恋愛短編小説 著者三浦しをんさんが色々なお題を元に書いた恋愛短編小説。 どんなお題かは巻末の収録一覧にあります。 それを見ずにそれぞれの短編を読んで私が思った(感じた)お題は記載順に 1. 懐古(読み直して友情) 2. 決意 3. 記憶 4. 熱狂 5. 片思い 6. 許容 7. 8. 9. 10. 初恋 11. 自覚 でした。(7~9はうまく一言で表せず)。 解説にある通り、1編を除いた10編には「秘密」というテーマがある

          きみはポラリス

          殺人鬼フジコの衝動

          その「想い」はあなた自身のものですか? この小説が発売されたころは、イヤミス(後味の悪い小説)が流行っていたそうで、この小説もそれに当てはまるそう。 序盤から人間の底意地の悪さなどを見せつけられ、読んでいる最中ずっと胸が苦しくなるような感覚がずっとあった。 私は、映画とかであるような「ラスト、衝撃の事実が!」みたいな展開は、それちゃんと本編で描けよと思いあまり好きではないのだが、この小説はうまく最後まとめられていたと思う。特にはしがきと、あとがきをこう使うのかと感心した。

          殺人鬼フジコの衝動

          少女

          きっとそれほどあなたは嫌われてないし、不幸じゃない 女子高生二人の視点から「死」というものを見つめていく。 思春期の女子高生二人が、自分自身はなんでもわかっているような、自己陶酔とでもいえるような感情と、自分以外はなにもわかっていないだろうという、他人への蔑みや不安などを抱えて日々を過ごしていく。冒頭で一言で書いたように、 実際は、自分でも自身のことをわかっていないことなんてざらだし、それを他人から言われて気づかされることもある。人はよく思い込みで相手からの気持ちをよく過