見出し画像

『天使の翼』第11章(71)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 窓の外を見ると、今、列車は、峨々として連なる山々の、尾根を少し下った辺りを――尾根を吹き抜ける強風を避けるためでもあろうが――山肌に張り付くようにして疾駆していたのだが、ガタガタ,ガタガタと車体を震わせて急速に速度を落としていた。
 と、この列車は電気機関車であるから、当然架線がある訳で、今にもその架線に引っ掛かって墜落するのではないかという勢いで、不吉な黒色のエアカーの一群が突っ込んできた。その数10機を超えるか……
 咄嗟に近代的山賊の『機甲師団』に急襲されたかと思ったが、我々の車窓と並行して滑空するそのうちの一台の車腹には、黒いボディーを切り裂くナイフのような字体で、メタリックに白く『SSIP』と刻まれていた。
 黒いヘルメットをかぶった操縦席の男が、ミラーグラスの向こうからわたし達の車窓を覗き込んだ……

この記事が参加している募集

#宇宙SF

6,010件

#SF小説が好き

3,100件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?