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いかにしてスタートアップは舞い上がるか~イーロン・マスク氏のスペースXに見る~

 日経電子版の記事【火星移住へマスク氏の反骨心、スペースXが拓く宇宙開発】は、稀代のシリアルアントレプレナー(連続起業家)であるイーロン・マスク氏のスペースXが、2002年ロス郊外の倉庫でその産声を上げてから、この5月31日に「クルードラゴン」によって人を国際宇宙ステーション(ISS)に送り届けるまでの軌跡を、マスク氏の過去の発言を通して鮮やかな浮き彫りにして再現しています。



 このホメロスの叙事詩オデッセイアにも比肩する雄大な物語は、一つのスタートアップの飛躍を辿るストーリーでもあり、そこには、「いかにしてスタートアップは舞い上がるのか」、そのエッセンスの数々が秘められているように思います――

▶いかにしてスタートアップは舞い上がるのか

(1)人類の未来という大きな時間軸の上に立ったビジョン
   「(記事より)地球を超えて生命が複数の惑星に広がること」という
  国境(空間)も時間も超越した人類共通の目的をビジョンとしている。

(2)社会の共感を醸成し、世論を味方に付ける
   「(記事より)宇宙について人々を興奮させる方法の1つは、民間
  資金による火星のロボット探査だと考えた」というように、一つの
  プロジェクトは、その資金を集めるにせよ、取引を円滑に進めるに
  せよ、大きな賛同という社会の共感を必要としており、そのための
  努力を惜しまない


(3)誰もいなければ自分がやる(自主開発)
   「(記事より)代替案として01~02年にロシアを3回訪れ、大陸間
  弾道ミサイル(ICBM)の購入を試みている。金額が折り合わず交渉が
  決裂」のように、手段がなければ、自分で作る

(4)常識に囚われない(ブレークスルー)
   「(記事より)当時のロケット業界では1回限りの使い捨てが常識
  だったが、マスク氏は創業当初から繰り返し使うことをロケット設計の
  基本思想に据えた」とあるように、今までにない大きな(一見
  荒唐無稽にも思える)プロジェクトは、過去の常識の延長線上では
  成立しない


(5)コストという名の現状分析を忘れない
   「(記事より)コスト効率の高い再利用性だ」とあるように、
  プロジェクト(経営)は、ビジョンだけでは成り立たない。
  プロジェクトの現実味(実現性)はコスト感覚によって担保される


(6)既得権を打ち破る
   「(記事より)軍事打ち上げ市場の独占を批判し、参入を求めて裁判
  所に申し立てる」とあるように、新しいコトを立ち上げようとする
  時は、その前進を阻む非合理な既得権益・独占・官需体質などと闘う
  覚悟も必要



 大きな夢、ビジョンを持って、それを周囲と共有し、自らそれを実行に移す。そして、その実行に当たっては、常識を疑い、コストを計算して(現状分析)、場合によっては既得権とも争う……。
 この記事は、改めて、スタートアップの何たるか、人類の未来を切り拓いていく事の何たるかを再確認させてくれました。




(付記:2020年5月19日、皆様のおかげをもちまして、noteへの連続投稿が500日を達成できましたことに、改めてお礼を申し上げます。下記の拙稿で振り返りをしています。)




連続投稿521日目。
 当ページにご来訪いただき、ありがとうございました!

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