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『天使の翼』第11章(56)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 あれこれ考えているうちに、思考が一足飛びで一点を指し示した。
 シャルルは、危険かつ微妙な場面で、わたしと兄が予期せず鉢合わせするような事態を危惧して、わたしの心が激しく揺れ動いて、自ら危険に飛び込んでいくような結果になるのを恐れて、ケインのことを、先手を打って、積極材料として、取り込もうとしているのではないか?……うがちすぎのような気がしないでもないが……
 シャルルには、今までの経験から確実に言えることが一つある。――複数の単純ではない状況を、同時に、統合的に乗り越えていこうとする性向だ。最初のうち、それでわたしも振り回された――しかも、わたしは、同時に、彼への愛もはぐくんでいた。今では、そんなシャルルの行動パターンをどうにか読み解けるようになっているし、信頼もしている……
 わたしの心から、スーっとわだかまりが消えていった。要は、常に冷静で居ることだ。シャルルのように――といって、聞いたわけではないが――自分自身を客体化して見るのだ……心の中に、自信のなさが泡のようにふつふつと湧き上がってきたが、わたしは、しいて自分に言い聞かせた――わたしは、使命を達成すべく飛び立った天使である、と。

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