妻に本音を伝えようとしたら、なぜか涙が出てきた話。
「おれがね、君が話をしてくれたとき、余計なアドバイスをしてしまうのは、君のことが誰よりも大切だからなんだ…」
木曜日の朝7時。
ふたりで朝ごはんを食べているとき、ぼくは妻にそう言ったんです。
だけど、途中で涙が出てきちゃって、なんどもつっかえながらやっとそう伝えることができたんです。
昨日の記事に書いたように、妻が困っていることを話してくれたとき、ぼくは余計なアドバイスをしてしまうんですが、それで妻と揉めてしまうことがあるんです。
そんなこと言わなくてもいいとわかっているのに言ってしまう。頭がブレーキをかける前に口が勝手に動いているんです。
こうした方がいい。ああした方がいい。おれもこうするよ。そうすれば君も楽になるよ。
そんなことを気がつかないうちに口走っているんです。
他の人にならそんなことは言わないのに。夫婦関係の相談をしてくれる方には「余計なアドバイスはせずに、話を聞いてあげましょう」と言っているのに、なぜぼくができないのか?
それは、相手が妻だからだと思うんです。
誰よりも大切な妻だからなんです。
目の前で、この世で一番大切な妻が困っているのに放っておけないんです。
そのことに気がついたぼくは、この気持ちを妻に伝えることにしました。
◇
妻と揉めた日の翌日の朝、ちょうど子どもたちがダイニングにいなかったので、妻とふたりでご飯を食べたんです。
言おう言おうと思うんですが、自分の気持ちを妻に伝えようと思うんですが、なかなか言葉が出てこないんです。
喉になにかが詰まっているかのように、体の中から言葉が全然出てこないんです。
なにかすごい大きな力で抑えつけられているかのように、ぼくの中の何かが邪魔をするんです。
何度も何度も言葉に詰まりながら話し出したとき、なぜかぼくは泣き出してしまったんです。
話そうとすると言葉が喉に詰まり、喉から言葉がやっと出てこようとすると涙が出てきて、泣きじゃくりながらでないと、妻に自分の気持ちを伝えることができなかったんです。
君のことが誰よりも大切な存在なんだ。困っている君が目の前にいるのに放っておけないんだ。
溢れる涙をタオルで拭きながら、タオルで目を抑えながら、なんとかぼくは妻にそう伝えることができました。
妻は「そうだったんだね」と受け止めてくれて、昨日から今日にかけて、妻がいままで何を感じていたのか、ぼくにどうして欲しいと思っているのかを、しっかりと聞き、妻の気持ちを受け止めることができました。
不安定になったぼくらの関係はなんとか安定したわけですが、それにしても、なぜぼくは本音を出そうとすると涙が出るんでしょうか?
思っていることを素直に言い合うことができればどんなにいいか。
そうすれば、お互いに感じていることがすぐに分かって、お互いへの理解がすぐに深まるのに。
なんで、本音をさらけ出すことはこんなに辛いんでしょう?
実は昨日の夜、心理臨床歴25年の臨床心理士さんとお話をする機会があったのですが、そこでヒントをいただくことができました。
◇
人が心を開いて本音をさらけ出すとき、ものすごく無防備な状態になるんだそうです。
自分の心をパカっと開いて、本当の自分をさらけ出すということは、なにも自分を守るものがない状態なんですね。
その状態で攻撃されてしまうと大きなダメージを受けてしまんです。もしかしたら立ち直れないくらい大きなダメージを。
だから、人に本音をさらけ出すというのは大きな賭けなんです。
もしかしたら、「何言ってんの?」などと全然気持ちを受け取ってもらえず、大きく傷つくことになるかもしれない。
そんなことになるくらいなら、当たり障りないことだけ言って、その場をしのいだ方がいいですよね?
本音なんか出さない方がいいですよね?
”本音を出さずに生きる”というのは、”自分を守る”ことなんです。
心を開いてしまったことで無防備な状態になり、そのときに大きなショックを受けるのならば、”心を開かないことが最善策になる”わけです。
だから、本音を出すということは、精神的にものすごい負担のかかる行為なんです。
もしかしたら立ち直れないくらいの攻撃をされるかもしれない。その”恐怖心”が、本音を出そうとする人間の目から涙を溢れさせるんです。
自分にとってもっとも大切な人、この世でもっとも大切な人から攻撃をされるかもしれない。
それは、他の人から受ける傷とは比べようがないほどの大きな傷を与えることになるんです。
夫婦というのは、それだけ大きな影響を与え合っているんです。
だから、ぼくは、妻に本音をさらけ出そうとしたとき、妻に傷つけられる恐怖を感じて、涙が出てきてしまったんだと思うんです。
妻がぼくを傷つけることはないんだけど、ぼくの中の本能的な恐怖心がそうさせてしまったんです。
”妻を大切に思っている”ことが妻に伝われば、夫婦関係は良い方向に進んでいくけど、その言葉をこの世で一番大切な相手に伝えるとき、100%無防備な状態であり、もっとも攻撃を感じやすい状態なんです。
それが言えればいいことはわかっているけど、その言葉を口から発すること、いや、心からその言葉を発することは大きなエネルギーがいるんです。
もし過去に本音を出して傷ついた経験があったら、余計に心を開けないですよね。
ぼくを一番傷つけることができるのは妻であり、ぼくが一番幸せを感じられる相手もまた妻なんです。
そして、それは妻も同じだと思うんです。
妻をこの世で一番傷つけることができるのはぼくであり、妻をこの世で一番幸せな気持ちにさせることができるのもぼくなんです。
ぼくらはお互いに強い影響を与え合っている。それに気がついていないだけだと思うんです。
その影響力にお互いに気がつくことができたなら、ぼくらはもっと本音を出せ合えるようになる。
目に見えない相手への強い影響力。その存在をしっかりと感じながら妻と接することで、ぼくらの絆はもっと強くなることができる。
そんな気がするんです。
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