【メルカリ業績分析|第一回】メルカリの誇張されたユーザー層

日本初のユニコーン企業「メルカリ」がついに上場を果たした。
直近の連結決算では最終損益▲42億円の赤字上場でありながら、時価総額は5,805億円(2018/7/5時点)とマザーズ市場でのトップ銘柄となった。

それもそのはず。連結決算では子会社(主に米国)への投資がかさみ赤字だが、国内事業は既に黒字化(2017年6月期の経常利益約45億円)、業績は好調だ。


国内事業は順調に成長

まずは単体決算(国内事業)の推移、2018年6月期の推定値をご覧いただこう。

■流通総額:メルカリ内での売買額
・2017年6月期:約2,300億円(YoY+77%)
・2018年6月期:推定約3,420億円(*3)(YoY+49%)
売上高:売買時の手数料(10%)
・2017年6月期:約212億円(YoY+73%)
・2018年6月期:推定約316億円(*4)(YoY+49%)
経常利益
・2017年6月期:約45億円(YoY+67%)
・2018年6月期:推定不可

メルカリCEOの山田氏は、国内事業だけでもさらに10倍は伸びると発言。

"「CtoCといっても、フリマアプリのような「モノ」から、これから始めるteachaのような「スキル」まで様々なものがありますが、モノだけで見ても、国内だけで10倍は伸びるでしょうね。社内でも、「10X(テンエックス)」といって、各カテゴリーの取扱高をひとまず10倍にしようという計画を掲げて、本気で取り組んでいます。」"
出典元:https://newspicks.com/news/2902467/body/

メディアも同様、米国市場への挑戦を不安視する記事が載ることはあっても、国内事業における成長を疑問視する声はほとんど見られない。

果たして本当だろうか? 
本記事では盤石に見える国内事業におけるリスクを指摘したいと思う。

国内事業抱える3つのリスク

1.ARPU:伸び悩む1ユーザーあたりの平均収益
2.MAU:少ない利用ユーザーの拡大余地
3.競合アプリ:削られる営業利益

まずはARPUについて。ARPUとは、Average Revenue Per User の略で、1ユーザーあたりの平均収益を指す。
今回はメルカリのビジネス特性に合わせ、「1ユーザーあたりの平均流通額」を考察する。(*流通額の10%が売買手数料としてメルカリの売上)

メルカリ「新規上場申請のための有価証券報告書」より

出典元:https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000033s70-att/06Mercari-1s.pdf

登録MAUとは、「登録 Monthly Active User」の略。メルカリに登録しているユーザーの内、1ヶ月に1度以上メルカリを利用したユーザー数です。
すなわち、
「1ユーザーあたりの平均流通額」は、流通総額を登録MAUで割ることで計算できる。直近平成30年3Qでは約9,030円1ヶ月では約3,010円となる。

平均流通額の昨年対比伸び率はこちら

1ヶ月間では5千円に満たない少額でありながら、成長率は低く低下傾向にあり、平成28年3Q以降、+10%を超えていない。さらに、直近平成30年3Qではほぼ昨年同額と成長が止まってしまっている危機的状況である。メルカリにとって、「1ユーザーあたりの平均流通額」が伸びていないことは知られたくない数値であろう。

と言うのも、メルカリは単に出品が容易なフリマアプリを提供しているだけではなく、新しいライフスタイルを作ったとされている。

メルカリCOOの小泉氏は言う、

"-メルカリは世の中の何を変えたのでしょうか
「ライフスタイルだ。何かモノを買うときにメルカリで対象物を検索して『メルカリで売れる(モノだ)から買おう』という声を町なかで聞く(中略)
最近は40-50代にも広がっている。子どものお小遣い制をやめて、メルカリ(でもうけたお金をお小遣い)にしたなんて人もいる。『家のいらないものを売ってお小遣いにしていいよ』売ることを前提にモノを買って利用し、市場を“クローゼット”と捉える方もいる」"
出典元:https://newswitch.jp/p/13353

しかし、2015年以降大きく伸びていない「1ユーザーあたりの平均流通額」から判断するにその発言は誇張であると言わざるを得ない。

2015年3Q間の1ヶ月流通額約2,500円から、2018年3Q間の約3,010円まで、3年経ったにも関わらずわずか510円の増加に止まる。ライフスタイルの変化まで及んでいるならば、大幅な平均収益の増加に繋がっているハズである。残念ながらその兆しはまだない。

メルカリの流通総額の増加はライフスタイルの変化などではなく、103億円の広告宣伝費(*平成29年6月期)によるユーザー数の増加により持たらされている。当然ながら、既に四半期で1,000万人を超えるユーザー数を10倍に伸ばすことは不可能であろう。

では、利用ユーザー数の拡大余地はどれほど残っているのか?
続きは次回7月8日公開予定の第二回記事にて

---------------------------------------------------------------------------注釈
*1 2018年7月5日時点の時価総額、平成29年期の 売上高より算出。
*2 2018年7月5日時点の時価総額、平成29年期の 売上高より算出。
*3 新規上場の目論見書記載の流通総額合計額と合わせて、平成30年4Qの流通額を3Qの93億円と同額と仮定し計算
*4 売上額/流通総額の数値を平成29年期実績の9.2%として仮定し逆算
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