見出し画像

モノやコトが個人に帰属するWeb3の世界。そこで発展するトークンエコノミーについて③

株式会社アトノイの代表・川本栄介が考えるWeb3の世界におけるトークンエコノミーについて。今回は、体験や想いもトークン化できるからこそ生まれるプライスレスな価値や、活動や熱量が刻まれることで本当の生き様がトークンに証明され、それが誤解のないより良い関係性を構築するという話をお伝えします。②はこちら。

ニッチなコミュニティであっても、トークンが証明することでより良い関係性が生まれる

トークンにはいろいろな種類があると述べましたが、もし世界に一つしかないことや希少価値を証明したいのであれば、代替不可能なNFTでトークン化すればいいのです。絵や写真、文章など創作したものはもちろん、貴重なコンサートのチケット、サイン入りのTシャツなどもNFTでトークン化できます。そして、それを欲しいという人が現れれば、その人に譲って(あるいは売って)いいかどうかを相手の持っているトークンを見て判断すればいいというわけです。その人が素晴らしいコレクターなのか、ただのにわかファンなのか、あるいは地味だけれど真剣にコツコツ応援している人なのか、そういったことも分かります。

NFTでトークン化できるのは、モノだけではありません。体験や想いの記録もトークン化することが可能です。たとえば、あるアーティストのファンコミュニティがあるとします。そこに集まっているファンは、皆同じベクトルを持っています。ブロックチェーン上のトークンは、「見える化」されているので、どんな人がいて、どんなトークンを持っているのかは一目瞭然です。どれだけの熱量で応援しているのか、何度コンサートに行っているかなどもトークン化していれば分かります。SNSでもファンアピールはできますが、SNSは嘘も書けますし、大げさに脚色することもできます。SNSのイイねが多いから本当のファンかというと、そうとは限りません。ただの承認欲求の道具かもしれません。時期が過ぎれば、それを消すこともできます。情報の真正性という点ではかなり怪しい部分もあるわけです。しかし、トークン化していれば、それはファンの証明に繋がります。ずっと記録が残るわけですから、一過性のブームに乗りたいだけの人はトークン化をしないでしょう。わざわざ面倒なアクションを起こしてまでトランザクションに刻むことはしないはずです。むしろ、早い時代からファンであった人やより熱量の高い人は、ファンとしての生き様の証明としてトランザクションに刻むでしょう。また、コミュニティにいる人は、SNSの投稿の華やかな見た目に惑わされる必要もなくなるわけです。コミュニティを運営している側も、トークンに記されている活動や熱量を見て、たとえ地味だったとしてもその人が真剣に本気で応援してくれている人であるかを確認することができます。そこにはお金では買えないものが存在し、そのコミュニティを通じて、コアな想いを持った人たちによる本当に良い関係性を築いていけると思います。コミュニティがさらに発展していくと、運営側から日ごろの感謝を込めた特別なトークンが一部のファンに贈られる可能性もあります。それは動かすことができないSBT(ソウルバウンドトークン)かもしれませんし、運営に影響を与えられるGT(ガバナンストークン)かもしれません。トークンが一般化し、みんながNFTを持つようになると、一人でたくさんのNFTを持つ人も現れるでしょう。そうなるとすべての価値をチェックするのは難しくなるのですが、NFT1個ずつに重みづけをするとか、AIを駆使して評価を分かりやすくするといったニーズや発展も考えられます。

アーティストのファンコミュニティを例に出しましたが、企業のコミュニティの場合も同様です。これまでロイヤルカスタマーというのは、たくさん商品を買ってくれた人、お金をたくさん落としてくれる人とされてきましたが、トークンエコノミーの世界では、金額だけではなく、その企業のことをどれだけ応援しているかという熱量や活動量、貢献度で測られるのです。派手さはなかったとしても、そうした真のロイヤルカスタマーは、企業からGTを与えられるかもしれません。あるいは一緒に新しい商品開発に取り組むことができる機会が与えられるかもしれません。コミュニティ内での価値を運営側やメンバーたちに「見える化」することで賞賛や恩恵が生まれるこの仕組みは、情報が個に帰属するという前提があるから成り立つものです。また、企業は自社の価値を世の中に証明していかなければなりませんが、売上の金額だけで評価される時代は終わりました。私たちの想いに賛同し、応援してくれるコミュニティのファン(消費者)がいるので、私たちの商品は売れていますというストーリーのほうが多くの共感を呼ぶと思います。

トークンエコノミーのコミュニティは、それぞれが何かに特化しています。SDGsであればSDGs、エンタメであればエンタメ、企業のコミュニティもあるでしょう。いずれにしても、同じベクトルを向いている人たちが集まったコミュニティであり、それが経済圏として育っていきます。参加している人たちが満足できる場であればいいので、ニッチでもいいわけです。その経済圏で何でもできるわけではありませんが、みんなの努力によって活性化させることは可能です。お金持ちの人がお金だけばらまいて、流行りそうだからと何かのコミュニティを作ったところで(それもありかもしれませんが)、そこに集まってくる人たちの繋がりは薄っぺらなものでしかありません。

参加している人たちが持つトークンの保有数や中身はそれぞれです。中には熱狂的なファンもいるでしょうし、そこまでではないけれどそれなりにファンという方もいるでしょう。そのコミュニティに参加するかどうか考えている人は、どんな人たちがそこにいるかをトークンから読み取ることもできます。もし、そこに自分が憧れる人や共感できる人がいた場合、その人が持っているトークンをどのようにして手に入れたのかということも知り得ることが可能です。

④へ続く

<構成・リライト:徳積ナマコ>

本記事の本文はNFTです(EhpzYTPL7WGHtetiboQM1PYGn9aLsbxL5QbnDLrwvi8r