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モノやコトが個人に帰属するWeb3の世界。そこで発展するトークンエコノミーについて④

株式会社アトノイの代表・川本栄介が考えるWeb3の世界におけるトークンエコノミーについて。最終回はトークンが世の中に循環していくとどのような社会が生まれるか、トークンの登場によって見えてくる本当の意味での「経済」の在り方を考察します。③はこちら。

トークンが循環していくことで活性化する市場、そして育まれていく正直な社会

コミュニティ、経済圏が成長していくとさまざまな可能性が生まれ、あらゆるトークンが活用されます。たとえば、あるコミュニティで一生懸命活動し、NFTもたくさん持っていた人が、その功績を認められて運営側からたくさんのGTをもらったとします。運営に関しての投票権を持っているわけですから、そのコミュニティにおいてその人は運営側に物を申すことができる人と評価されます。その人の行動はコミュニティの中でみんなが注目します。その人が何か新しいことを始める際も、みんなが注目して見ているわけです。その人自身の資産価値のようなものが浮き彫りになっていきます。そこで、STを使った「個人の証券化」の登場です。それを見て、その人に投資する人たちが現れるかもしれません。その投資によってコミュニティがさらに活発化した暁には、投資した人たちにトークンが増えて返ってくるかもしれません。ちなみに、経済圏の中での取引の支払いや決済手段はFT(ファンジブルトークン)を用いると、現金よりもずっと透明性のある形でのやり取りが可能です。

このように、ひとつのコミュニティの中でも、多種多様なトークンのやり取りが繰り広げられ、トークンは循環していきます。これらのやり取りによって生まれるトランザクションはすべて個人へ帰属します。このトランザクションから過去の信用と未来の信頼が生まれていきます。個人と直結したこの与信は、今の経済圏にある第三者による与信とは大きく異なります。学校、会社、年収、家族といった表面的なものだけで作られる信用信頼とは違い、これまでやってきたこと、想い、ほかとの関わりなど、もっと個にコミットしたものから得る信用と信頼なのです。

さらに、個に帰属したトークンが循環していくことによって、誤解のない健全なコミュニティが作られていきます。トークンに記された情報は、改ざん、削除ができないため、そこに残るのは事実のみ。たとえ嘘をついたとしても、その嘘自体は消されることはありません。そのため、自然と抑止力や自浄作用が働き、そこには見栄もなくなり、妬みや嫉みから起こるトラブル、だましだまされといった行為も減っていくでしょう。トークンに記された事実に基づいて、人は評価をされ、その価値を認めてもらえるようになります。争いごとの原因の大半は、互いの誤解です。トークンが循環していくと、その誤解がなくなり、互いが分かり合えるコミュニティが育っていくと思います。

個に帰属している「見える化」された情報が、需要と供給による最適なマッチングも可能にしていきます。それにより、モノの価値の捉え方も変わってくるでしょう。そのような個が集まったコミュニティから派生した経済圏は、そこにある経済力も「見える化」され、オープンな状態に。それはすべてのステークホルダーに対して開かれた市場であり、そこから新たな事業などが生まれる可能性も十分秘めています。現在の法定通貨の市場がいつかすべてトークンエコノミーに置き換わったら、すべての人が互いを尊重し、等身大で経済活動を行うことができる正直な世界が生まれ、金額だけで価値を図り切れない時代がやってくるでしょう。それが、争いのない、誰一人取り残さない社会作りにも繋がっていくと考えています。

今回、「トークンエコノミー」という呼称を使いましたが、この呼び方が正解かどうかは、正直、僕自身分かりません。エコノミー、経済圏という言葉を使うと、お金のやり取りを想像される方が圧倒的だと思います。しかし、トークンというツールを使った世界、仕組みを深掘りして考えていくと、そこにはお金を飛び越えた新しい世界が広がっていると気が付きました。「経済」という言葉は、もともと「経世済民」という中国の古典にある言葉が語源です。これは、「世を経(おさ)め、民の苦しみを済(すく)う」という意味です。資本主義社会である今は、お金のやり取りやお金の循環=経済とされていますが、本来、経済という言葉にお金のやり取りという意味はなかったのです。今ある貨幣経済を否定するつもりはありません。貨幣経済とトークンというツールを使った新しい経済、どちらもあっていいと思っています。それらが融合しながら、新しい仕組みの経済社会へシフトしていく段階が目の前まで来ている気がしています。トークンを用いて、個に正面からフォーカスすることが、今の社会が抱えている閉塞感、資本主義の限界、持続可能な社会への課題などの解決策を導き出すのではないかと考えています。まだまだ探求、研さんしている最中ではありますが、トークンエコノミーが素晴らしい仕組みへ発展する可能性があると胸を張って言いたいですし、この仕組みがたくさんの人の理解と熱意のもと、適正に運用され、より良い社会を創造していく軸になることを期待しています。

<構成・リライト:徳積ナマコ>

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