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モノやコトが個人に帰属するWeb3の世界。そこで発展するトークンエコノミーについて②

株式会社アトノイの代表・川本栄介が考えるWeb3の世界におけるトークンエコノミーについて。今回は、現在世の中にあるトークンについて説明するほか、モノやコトをトークン化することで本来の価値を証明することの意味、そして価値を分かった上で私たちが自分で判断し、選択していくことの大切さについてお伝えします。①はこちら。

トークンは多種多彩。目的や用途によってトークンを作り出すことができる

さて、トークンにはさまざまな種類があると冒頭で触れました。ここでは、今世の中にある代表的なものについて簡単に説明したいと思います。各トークンの特徴を定義付けるのは、ブロックチェーン上で働く「スマートコントラクト」と呼ばれるシステムになります。そのプログラミングによってそれぞれのトークンの特性、特徴が決められていきます。

ファンジブルトークン(FT)と呼ばれるものでよく知られているのは、暗号資産(仮想通貨)が挙げられます。ファンジブルとは代替可能という意味で、誰にとっても1トークンは同じ1トークンという通貨の仕組みが適用されます。ですので、ブロックチェーン上には、誰から誰に何トークン移動した記録しか残りません。

最近話題になることが多いNFTは、ノンファンジブルトークンの略。ファンジブルの逆で、代替不可能、非代替性トークンということになります。NFTは唯一性が特徴で、1トークンごとにトークンアドレスが付いています。世界に1つしかないものをブロックチェーン上で証明するというプログラムになっています。分かりやすいところでは、アートやクリエイティブ作品に対して発行されています。昨今は、投資案件で扱われることばかりが目立っており、本来の意味を分からないままNFTを金融商品だと勘違いして購入している人も多く見られますが、NFTは唯一性を証明するためのものなのです。

このほかにも、コミュニティの意志決定の投票権となるGT(ガバナンストークン)、一度受け取ったら他へ移すことが不可能なSBT(ソウルバウンドトークン)、デジタル証券のST(セキュリティトークン)など、さまざまな特徴や条件を定義付けたトークンが世の中にはあります。これらのトークンはすべてスマートコントラクトのプログラムの集合体です。アイデア次第で新しいトークンを生み出すこともできます。つまり、ニーズや用途に応じたトークンをコミュニティや企業で発行していくことも可能なのです。新しいトークンを作った記録ももちろん残りますし、既存のトークンを組み合わせたり、アップデートする形で新たなものを作ったりするのも可能です。もちろんそれらも記録され、きちんと個人に帰属します。

モノやコトをトークン化し、本来の価値を証明。そして自分たちで判断・選択する時代へ

今のネット社会は情報があふれかえっていて、そこから本当に欲しいものを短時間で探し出すのはなかなか至難の業です。検索をかければ確かに情報は出てきますが、その検索エンジンもいろいろな思惑や広告によって操作されているのが、今のネットの仕組みです。確かに提示してもらえるとラクはラクですが、それが世の中のすべてだと思い込むのは少々危険です。情報が画一的になり、ほかを知らないまま、狭い世界で暮らしていることになります。もちろん、操作されていることを分かった上で、買い物をしたり、情報を取りに行ったりしているなら構いませんが…。今のネット社会の閉塞感や飽和状態の原因はここにもあるような気がしています。若いデジタルネイティブ世代と話していると、ネットで検索して出てきたもの、誰かがレコメンドしているもの、イイねがたくさんついているものしか信用しない、ネットに書かれていないものは信用できないと言う子が多いように感じています。自ら調べてみよう、直接見て、聞いてみようという考えはなく、「みんながイイと言っているからイイの」というところで完結しています。そうなると、モノも情報も本来の価値や本質的な部分が薄れてしまうと感じています。

このような状況を変えられるのが、Web3の世界から生まれたトークンエコノミーなのです。トークンは、あらゆるモノやコトの価値や本質的な部分の証明が可能です。モノやコトをトークン化することで、一つひとつの価値をきちんと記録していくことができます。

本来、世の中のモノの価格(価値)は、それを欲しい人とそれをあげたい人(売りたい人)がいて、そのマッチングから価格(価値)が決まる相対的なものだと思います。ですから、絶対的にこれはこの価値ですというものはなく、需要と供給の関係によって決まっていきます。しかし、今は信頼のおける第三者が介在することで、欲しい人と売りたい人で決めることができたシンプルなはずのモノの価値、価格が、「たくさん売って利益を出そう」「多少品質が悪くてもこの価格で売ろう」を効率化するため、トレンドを意図的に作り出す方法やマーケティングに置き換わっていると感じます。たとえば、ラーメン屋やカフェ、レストランなど飲食店の場合、繁盛させるために、店の席数を減らしてわざと行列を作らせるとか、評価系サイトの星の数や評価を作為的に行う、SNSでたくさんイイねが付くようにするなど、経営側や介在する第三者が煽って賑わっている感を出す方法が主流になっていますが、これは本質的な価値という点では価値そのものを見誤っているように思われます。

作為的に作られたトレンドは、ほとんどが一過性です。「映え」ればいいというものが、次々と現れては消えています。消費者側もそこに踊らされ、多くのインスタグラマーやユーチューバーらは「映え」だけを追い求める傾向にあります。そこにはいつまでも満たされない根深い承認欲求が漂い、刹那的なものすら感じます。極端な例かもしれませんが、料理の味にこだわり、お客が店で過ごす時間や空間を大切にしている料理人の店で、「映え」を重視する人たちは、「映え」る撮影に夢中になるあまり、コース料理を一度に出すように頼んだり、ほかのお客を無視した撮影をしたり、料理人や店の想いを無視した行動に出る人がいると耳にしたことがあります。おそらくそれらの投稿からは、料理人の想いや作り手のこだわりなど、本質的なものは微塵も感じられないでしょうし、その店の本質的な部分や本来の価値を踏みにじっているとさえ思われます。これは互いにとって(特に店側にとって)、後味の悪いミスマッチです。

もちろん、とにかく稼ぐために一過性でもいい、「映え」に利用してもらってもいいと、自らトレンドを操作する経営手法もありだとは思います。そこを否定するつもりはありませんし、ときにはそれが必要なこともあるでしょう。ただ、ミスマッチを減らすためにも、選択肢のひとつとして、本質的な部分に寄ったトークンエコノミーの世界があってもいいのではないかと思うのです。マスメディアで打つ広告はすでに限界の域に入っていますし、WEB広告も行き詰まりを感じます。SNSを使った煽りも、本質的な部分からはかけ離れ気味です。多くの人が感じている閉塞感や、移り変わりの早いトレンドを追い続けることによる疲弊感、先が見えにくい飽和状態の売上など、これらを打破するのは1to1マーケティングを可能にするトークンの循環にあると考えています。トークンエコノミーの世界ではトークンに帰属している情報にすべてが記されるので、お互いがそれを見て、直接的に信頼を確認して取引ができます。モノをトークン化することで、その価値もトークンに記されます。さらに、今誰がそれを持っているか、誰から誰に渡ったかなど、どんどん記載されていく情報も価値を決める際の理由付けの一つになります。価値が上がることもあれば、下がることもあるでしょう。価値の裏付けがトークンにあり、そこに第三者の介在はなく、それを見てどう判断するかは自分次第になります。私たちは本質的な価値に目を向け、本当に食べたいものを選ぶ、本当に行きたい店を選ぶ、本当に欲しいモノを買うという選択ができるようになるのです。また、お互いのやり取りで価値・価格を決めることも可能になるのです。SNSの「映え」も否定するつもりはなく、むしろトークンエコノミーにうまく取り入れれば、より良い効果が生まれる気がします。インスタグラマーやユーチューバーらもトークンを持つことで、自分たちのトランザクションに刻むものを厳選し、より本質的な部分に寄った投稿をしていくでしょう。それにより、作為的なトレンドに乗せられ「なんとなくラクだから」「イイねが多いから」という理由で失われた「自身で判断し、選択する」機会が増えていくことになると思うのです。それは、たくさん売るための効率性を追い求めていた売る側にとっても、ミニマムでありながらムダのない効率の良い販売を可能にします。ローコストで最適なマッチングを生み出すことは、買う側、売る側、双方にとってプラスになるわけです。

また、トークンエコノミーの世界が広がっていけば、トークンに刻まれた嘘偽りのない、いいデータが揃うことになります。いいデータが揃った状態で、いつかAIによる良いアルゴリズムが生み出せるかもしれません。そうなれば、広告やマーケティングの世界も次にアップデートしていくのではないでしょうか。

③へ続く

<構成・リライト:徳積ナマコ>

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