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モノやコトが個人に帰属するWeb3の世界。そこで発展するトークンエコノミーについて①

株式会社アトノイの代表・川本栄介が考えるWeb3の世界、Web3が作り上げていく新しい社会。それについて、6回に分けてお伝えしました(記事はこちら)。今回は、そのWeb3の世界を具体的に形作っていくトークンエコノミーについて、もう少し詳しく掘り下げていこうと思います。あらゆるモノやコトが個人に帰属するという大前提のもと、トークンが循環する経済圏は、すべての人が互いを尊重し、等身大で経済活動を行うことができる正直な世界だと考えています。さらに、本来あるべき経済の形へのヒントが詰まっている内容であると自負しています。今の社会やビジネスに閉塞感を感じている方、次のステップを模索している方は、ぜひお読みください。4回に分けて掲載します。

個人に帰属するトークンが作り出す新しい経済圏の確立に向けて

ここ数年で、「トークン」という言葉をよく耳にするようになったのではないかと思います。特にNFTについてニュースなどでも取り上げられることが増えたので、一般の方でも言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。トークンとは、直訳すると「しるし」「象徴」という意味ですが、僕がここで話すトークンはブロックチェーン上で発行されるもので、場合によっては貨幣の代わりにもなり、何かを証明するものにもなります。そのトークンによる新しい経済「トークンエコノミー」が、これからの新しい社会をどう変えていくかを伝えていきましょう。トークンにはさまざまな種類がありますが、それに関してはあとで説明します。

貨幣の代わりになる場合もあると聞くと、商品券やクーポンのようなものを想像する方も多いかと思いますが、それらとの大きな違いは「トークンは個人に帰属する」という点です。商品券やクーポンの場合、発行した人は分かっても、それが誰を経由し、どのようにして手に入れたか、本人以外は分かりません。もし、本人の手元に届くまでのプロセスがあったとしたら、そこに関しては本人も分かりません。しかし、トークンはそれらがすべて分かるのです。ブロックチェーン上で発行された時点から、すべてが記録されていきます。ブロックチェーンに記録された情報は改ざん、削除できないという話はWeb3のほうでも触れましたが、そこに記された記録はすべて個人に帰属させることができます。今の個人の情報、たとえばEコマースでの購買履歴や検索履歴などの情報は、各プラットフォーマーのデータベースに記録されています。それは、Amazonの川本、Yahoo!の川本、楽天の川本といったようにバラバラで、川本自身に帰属はしていません。しかし、トークンに記録されることによって、プラットフォーマーや第三者の管理下にある情報ではなく、川本自身に帰属した情報となるわけです。また、書き換えや削除が簡単にできるSNSなどに記録された情報よりも、トークンに記録された情報は真正性が担保されています。それが確実に個人に帰属することで、一人ひとりのやってきたこと、極端に言えば、嘘偽りのない生き様が記されるということになります。このようなブロックチェーン、トークンの特性を生かすことによって、現在の法定通貨による貨幣経済とは異なる新しい社会や経済圏を創造することが可能な時代に入ったのです。

では、トークンが個人へ帰属することで、経済活動においてこれまでと何が異なるかについて触れたいと思います。たとえば、僕がとても貴重な骨とう品をある店舗で購入したとします。それにはAさんという方が書いた鑑定書が付いていて、それが本物だという証明になるとお店の人は言います。これまでは確かにその鑑定書が証明でした。Aさんがテレビにも出ている有名な人であれば、それも信用の証とされます。しかし、デジタルでコピーペースト、複製がいとも簡単にできてしまう今の世の中、その鑑定書が確かなものかどうかは分かりません。Aさんがテレビに出ている人だからと言って、Aさんの名を語っているだけで本当にAさんが書いたかどうかの真偽も分かりません。最終的には、お店の人と僕との信頼関係の上に、僕が信じるか信じないかを決めることになります。このような信頼や信用の担保が、情報の真正性が大前提にあるトークンを介することで、より確実なものになるわけです。トランザクションをさかのぼっていけば、その骨とう品を誰が、いつ、どこで作ったのかも分かりますし、鑑定書はいつ書かれたのかも分かります。骨とう品がいつどんな人たちの手に渡って、今ここにあるのかという経緯もトークンに記されているので、その骨とう品から広がる物語も読み取っていくことができます。制作者のトークンを見れば、ほかにどのようなものを作っているのかも分かりますし、鑑定者のトークンを見れば、これまでにどのようなものを鑑定してきたのかも分かります。骨とう品にまつわる人たち、ステークホルダーの生き様も見えてくるわけです。このように個に帰属したトークンの記録があることで、その骨とう品はより価値のあるものになるかもしれませんし、中にはその逆で「あいつが鑑定したものは信用ならない、価値がない」とみなす人もいるかもしれません。いずれにしても、真正性の高いトークンに記録されることで、「正直な」経済活動の場が生まれるのです。

また、商取引の場で、相手がどんな人物か、どんな企業か、信頼できるかどうかの確認は大切です。現在は、プラットフォーマーだったり、クレジットカード会社だったり、銀行だったり、信頼のおける第三者が「この人はきちんとお金を払ってくれますよ」という信用を与えることで成り立っています。個人間でのやり取りの場合は、相手のSNSをチェックし、共通の知り合いを探して話を聞くなどして、相手が信用できるかを探ります。ただし、改ざんや編集ができるSNSやホームページの内容を100%信用できるかと言うと、そうではないことを皆さんも薄々は気付いているはずです。しかし、トークンが個に帰属するようになると、改ざんができない状態でこれまでのその人の活動や取引が記されていますから、自分の目で相手が取引に値するかどうか、信用信頼できるかを直接判断することが可能になります。与信の取り方がこれまでとは異なるのです。もちろん、自分も相手に活動履歴などを見られるわけで、そこはお互いさまです。双方にとって時間とコストの大幅削減というメリットが生まれるとともに、改ざんができない状態で記録が残り続けるからこそ嘘に対する抑止力が働きます。

あらゆるモノやコトが個人へ帰属することにより、コミュニケーションの仕方や買い物の仕方も変化していくと考えています。人々は本当に欲しいものを探し出し、一方で売る側は売りたいと思う相手に売りたいものを渡すことができるようになります。トレンドを誰かに操作されることも、押し付けられることもなくなり、さらに、個へコミットが深くなっていくと、既存のコミュニティのほかに、嘘や偽りが(ほぼ)ない、さまざまなコミュニティが次々と誕生するだろうと考えています。

新しい世界の発展には、とにかくトークンが個人に帰属することが本質的に重要です。トークンというものが、ただの表面的な印ではなく、改ざんができないブロックチェーンにトランザクションとして記されているという裏付けに意味があるのです。そのトランザクションがきちんと機能することで、あらゆる課題解決の糸口になっていくと考えています。それぞれの課題を解決するための機能を持ったあらゆるトークンがこれからまだまだ誕生するでしょうし、課題や用途に応じて生まれてくるそれらはアイデア次第でいくらでも増えていきます。とにかく大事なのは、個に帰属しているトランザクションがあるということ。すべてはそこにあります。そして、僕たちが今取り組まなければならないのは、こうしたブロックチェーンやトークンエコノミーを既存のビジネスの中にどう取り入れ、社会の課題解決に導いていくかであり、その仕組み作りなど、まさにチャレンジの段階です。ブロックチェーンという技術と、それを使った新しい世界や経済圏については賛否両論ありますが、いろいろな議論を交わしながら、次の成長フェーズに進むとみています。

②へ続く

<構成・リライト:徳積ナマコ>

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