SAKE DIPLOMA 試験対策を「超える」対策 その8 【発酵と微生物、酵素の関係】

こんにちは。

「あと」です。

いま、この記事を読んでいる方の中で、呼吸をしていない人はいませんね?笑

言うまでもなく、我々は呼吸によって酸素を取り込まなければ途端に死んでしまいます。これは、人間に限った話ではないですね。呼吸をしていない人はいなくても、お近くに犬や猫などのペットがいたり、窓の外に鳥が飛んでいるのが見えた人はいらっしゃるでしょう。そうした生物は皆、呼吸によってエネルギーを得ています。

なぜ突拍子もなくこんな話をしたのか、不思議に思われましたか?

実は、日本酒製造においても、これは大いに関係があるのです。

今回は、日本酒製造には欠かせない、「彼ら」についてのお話です。「彼ら」とは、一体誰なのか。冒頭の呼吸の話が、日本酒とどう関わってくるのか。

ここで、ある言葉を紹介します。


「Omne vivium e vivo」


これは、ラテン語で「全ての生物は生物から発生する」という意味の言葉です。

この言葉を残したのは、フランスの科学者パスツールです。その名前を聞いてピンときた方。もう既にかなりSAKE DIPLOMA認定試験に向けた勉強を進められているのではないでしょうか。彼と日本酒との関わりについては、然るべきタイミングが来たら解説したいと思います。

ここで注目していただきたいのは、彼が残した上述の言葉です。パスツールが、発酵、特にアルコール発酵に関する原理を改名した際に発したとされる言葉こそ、他でもない「Omne vivium e vivo」でした。

果たして、生物が生物から誕生するとは、どういうことか。

この謎を解くにあたっては、発酵という現象そのものに関する理解が鍵となります。

日本酒醸造において欠かせないのが、アルコール発酵です。日本酒は、原料の米に含まれるデンプンを糖化し、その糖からアルコールを得ることで完成します。

この中で、デンプンを糖に変える役割を担うのが麹菌。糖をアルコールに変える役割を担うのが酵母です。冒頭で紹介した「彼ら」という表現は、麹菌や酵母といった微生物のことを表すものとして使用しました。

彼らも生き物である以上、生きていくためのエネルギーを得ねばなりません。

麹菌は、我々同様、呼吸によってエネルギーである酸素を得ています。日本酒醸造においては、そうしてエネルギーを得た麹菌が繁殖するために放出する酵素を用いることで、米に含まれるデンプンを糖に変えているわけです。酵素は、酵母と名前が似ていて混同しやすいですが、微生物ではなくタンパク質に分類されます。日本酒醸造においては、アミラーゼという酵素が米のデンプンを糖に分解する役割を担っています。その他にも、プロテアーゼやリパーゼといった多様な酵素が作用して日本酒が造られていくのです。SAKE DIPLOMA認定試験の勉強中の方は、この辺りの内容は教本P.63~64で触れられているので、しっかり頭に入れておきたいですね。

一方、酵母も酸素をエネルギー源として利用してはいるのですが、なんと彼らは酸素が無い環境でも生きていけるのです!酸素無くしてどのようにエネルギーを得ているのかというと、それが発酵というメカニズムによるものなのです。

ここでSAKE DIPLOMAの教本から、酵母が発酵をエネルギー源として利用することに言及している部分を引用します。P.61です。

(前略)酒類の醸造に使われる酵母は、酸素がない状態や、酸素があっても糖濃度が高い状態では、糖をアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解してエネルギーを得る(アルコール発酵)。

このアルコール発酵の原理を発見したのが、冒頭でも紹介した、パスツールでした。この発見により、発酵とは微生物が生きていくためにエネルギーを得る行為による副産物であることが明らかになったのです。

麹菌による糖化と、酵母による発酵。その副産物として得られる酒。そう、まさに、

「Omne vivium e vivo!」

酒を生物と呼んでいいのかという問題はさておき、我々が口にする酒というものは、麹菌や酵母、そしてそれをコントロールする人間の共同作業によって生まれる、まさに奇跡の産物と言えるでしょう。


注)私は、まだまだ日本酒を勉強したての身であります。記載事項に関しては、自らのSAKE DIPLOMA認定試験合格の武器になったことは事実ですが、専門的見地からすると誤りであることも多々あるかと思います。その際は、ご指摘を頂けると非常に助かります。





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