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デジタル時代の性格研究

割引あり

心理学の研究での大きな関心のパターンには何があるのでしょうか。

◎行動の記述:人間の行動上の特徴を整理して記述する
◎行動の説明:行動の背景を説明する
◎行動の予測:将来の行動を予測する
◎行動の変化:介入や教育によって行動を変化させる

心理学は非常に幅広い学問ですが,パーソナリティ心理学は,認知,感情,動機づけ,行動などの「個人差」を研究する心理学の基礎的な学問分野だと言われます。特に21世紀に入ってからは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティなどのモデルによって,私たちの個人差を説明する枠組みが発展してきました。


行動の変容

最初に示した関心のパターンのうち,記述や説明や予測の研究はよくおこなわれるのですが,行動の変化に焦点を当てたパーソナリティ心理学の研究は,比較的少ないということが指摘されます。

パーソナリティ心理学の観点から介入を考えるときには,どのような個人差の持ち主がどのような介入によく反応するのかという,介入の効率化に個人差を活用する観点を用いることが可能となります。たとえば,金銭的なインセンティブを用いて健康行動を促進しようとする場合に,パーソナリティ特性によってインセンティブの効果が変わってくることも考えられます。勤勉性が低かったり,外向性が高かったり,神経症傾向が高かったりする個人は,そうではない人よりも,金銭的なインセンティブに敏感に反応しそうです。協調性が高い人は低い人に比べて,人間関係の中のサポートを受けて行動がよく変容するかもしれません。

いわばノイズのような情報の中に,パーソナリティ特性と介入の試みとの組み合わせの効果が隠されているのかもしれません。このような考え方は特に新しいといいうわけではなく,古くから試みられていることです。

Personality Science in the Digital Age: The Promises and Challenges of Psychological Targeting for Personalized Behavior-Change Interventions at Scale

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