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パーソナリティのHファクター

今回も出版した本の紹介です。『パーソナリティのHファクター:自己中心的で,欺瞞的で,貪欲な人たち』というタイトルの翻訳書です。

著者はカルガリー大学のキベオム・リー教授とブロック大学のマイケル・アシュトン教授です。ともにカナダの大学に勤めるパーソナリティ心理学者です。

Hファクター

これまでにも,HEXACOモデルについては何度か記事にしてきました。

HEXACOモデルは,ビッグ・ファイブ・パーソナリティにH因子を加えたかたちの6つの次元で人間全体のパーソナリティを捉えようとするものです。ただし対応する次元とはいえ,微妙にビッグ・ファイブ・パーソナリティとは内容がズレるのですけれども。

H: Honesty-Humility(正直さ—謙虚さ)
E: Emotional Stability(情緒安定性)…神経症傾向の逆でBig Fiveとおおよそ同じですが,内容の一部がH因子に入るため完全に同一ではないようです。
X: eXtraversion(外向性)…Big Fiveの外向性とほぼ同じ
A: Agreeableness(協調性・調和性)…Big Fiveの協調性と大体同じですが,部分的にH因子に内容が吸収されているため全く同じではありません。
C: Conscientiousness(勤勉性・誠実性)…Big Fiveの勤勉性とほぼ同じ
O: Openness to Experience(開放性)…Big Fiveの開放性とほぼ同じ

この本は,おそらく日本で最初の,パーソナリティのHEXACOモデルについて解説する本です。やはり情報がなければそれをどう扱って良いのかが分かりません。この本がきっかけになってくれるといいですね。

目次

リーとアシュトンは,大学院生の頃に研究をする中で,Hファクターを見つけ出します。そしてHEXACOと名づけます。うまい名前のつけ方ですよね。“HEX”は6を表しますので,この語感だけで「6つの次元があるんだな」と想像されます。

この発見の様子から,H因子の細かい解説まで充実した内容になっています。

1章 H因子の発見
2章 見逃されてきたパーソナリティ次元
3章 HEXACOパーソナリティの六つの次元
4章 低いH因子の人たちのフィールドガイド
5章 H因子の高さを見分けることはできるのか?
6章 H因子の高い人々は寄り集まるのか?
7章 政治
8章 宗教
9章 お金、権力、セックス
10章 H因子の低い人々の見分け方 ── そしてつき合い方
エピローグ ── H因子の高い人になる

特に

特に細かいのが,H因子(の低さ)と他の5つの次元の組み合わせでいろいろな説明がされているところです。第4章の目次を見るだけでも,よくここまで書いたな……と思えてきます。

4章 低いH因子の人たちのフィールドガイド
 低いH因子・低いE因子:恐れ(もしくは哀れみ)知らずの強欲
 低いH因子・高いE因子:責任逃れと泣き言吐き
 低いH因子・高いX因子:自己愛の暴走
 低いH因子・低いX因子:いやに気取った静かなタイプ
 低いH因子・低いA因子:ただ普通に嫌な人
 低いH因子・高いA因子:怒らないが不誠実
 低いH因子・低いC因子:雇用主にとって最悪の事態
 低いH因子・高いC因子:自己中心的な野望
 低いH因子・低いO因子:浅はかで考えが狭い
 低いH因子・高いO因子:洗練された気取り屋

HEXACOモデルは海外では研究が多く,ビッグ・ファイブ・パーソナリティに匹敵するような地位にあります(すっかり併存していますね)。でも国内の研究ではほとんど見かけません。その一つの理由は,日本語の尺度があるのですが存在をあまり知られていない点にあるのではないでようか。

そこで本書の最後には,無理を言ってお願いをして,HEXACOの尺度も掲載しています。ぜひ参考にしてもらえれば幸いです。

経緯

今回の本は,私が指導したもと大学院生たちが希望して翻訳し,出版まで辿り着きました。

なお……より使いやすいHEXACO尺度を開発しようとも試みていますので,それもお楽しみに。

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