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14歳と17歳の自尊感情はどれくらい遺伝で説明されるのか

自尊感情(self-esteem)は,自分自身に対する肯定的または否定的な態度であると定義されたり,自分自身を評価の対象とした際の全体的な肯定性,などと定義される概念です。日常的には「自己肯定感」と呼ばれるものもに近く,自尊心ともセルフ・エスティームとも表記されます。

自尊感情の高さは幸福感,生活満足度,自覚される健康状態にも関連します。また高さだけでなく,不安定さに注目した研究もあります。時間的に上下動が大きい自尊感情も,ネガティブな結果に結びつきやすいと言われています。

自尊感情の安定性

自尊感情は,青年期から中年期後半にかけて平均値が上昇し,その後老年期にやや低下する変化を示すことが報告されています。また,青年期から中年期にかけて次第に安定度が増していくことも報告されています。

自尊感情は生涯を通じてだいたい0.40から0.65の相関係数,青年期には0.46から0.63くらいの相関係数を示し,まあまあの安定度を示すことがわかっています。そして,性別によって安定度には違いがないそうです。

この変化には個人差があり,安定する人もいればそうではない人もいます。このような違いに,遺伝はどれくらい関与しているのでしょうか。なお,自尊感情の個人差に対する遺伝の影響力は0.29から0.40くらいなのだそうです。そして一番大きな影響を及ぼすのは非共有環境と呼ばれる,個々人に独自の環境要因です。家庭要因はほとんど影響がないそうです。

今回紹介する研究は,ふたごを対象とした縦断的なデータを用いて,自尊感情の変動に及ぼす遺伝と環境の影響を検討するものです。では,こちらの論文でどのような結果が得られたのかを確認してみましょう(Genetic and environmental factors affecting self-esteem from age 14 to 17: a longitudinal study of Finnish twins)。

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