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ナルシストの罪悪感や羞恥心

割引あり

自己愛(ナルシシズム)には,おおきく2つのタイプが存在するという話が,数十年前から言われています。

◎誇大なナルシシズム:壮大さの感覚,自己陶酔,対人優位性,自己顕示
◎脆弱なナルシシズム:不安,対人的な退却,人間不信,脅威の知覚


タイプなのか併存するのか

自己愛の誇大なタイプと脆弱なタイプ,などという表現がなされることがありますが,これらは「タイプ」として固定化したものではありません。理論的なアプローチでも,実証的な研究からのアプローチでも,これらは片方だけの状態をとるのではなく,変動する可能性があることが示されています。

おそらく,基本的な部分は共通していながらも,状況に応じてある程度あちらへ行ったりこちらに来たりというかたちで揺れ動くのでしょう。

直交性

誇大な自己愛と脆弱な自己愛をふたつの軸で表現する,という研究も,国内外で行われています。この2つの軸は直交(たがいに直角で90度の位置関係)にあると仮定されることもありますが,互いに斜めの関係にあるという研究もあるようです。一方で近年海外では,少し違う枠組みでこれらの自己愛を捉えようとする試みも行われています。

ある研究では,自己愛の要素のうち対人的な拮抗(ライバル心や他者への敵視,妬みなど),特権意識(自分が特別扱いを受けて当然),自己重要性(自分は特別な存在)という感覚が中核にあって,周辺に誇大な特徴と脆弱な特徴があるという考え方をしています。自己愛的な人は,自分の自己愛的な感覚を維持するためにさまざまな方略を使いながら自分自身を調節しているということです。

感情

このような調節を行う中で,自己愛的な人物はさまざまな感情を抱くと考えられます。他の人を妬んだり,優越感を抱いたり,劣等感を抱いたり。実際に,どのような感情と関連するものなのでしょうか。

感情と自己愛との関連を検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Self-conscious emotion traits & reactivity in narcissism)。

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