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日々是好日・心理学ノート

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2021年8月の記事一覧

2021年8月のまとめ

東京オリンピックも終わり,パラリンピックが開幕しています。一方で新型コロナウィルスの感染も広がって,心配は尽きないですね。 本当であれば,研究員として私の研究室に滞在する研究者が海外から来ているはずなのですが,このパンデミックのせいで来日することができていない状況です。学会や研究の打ち合わせで海外に行く機会も失われてしまっています。簡単な打ち合わせはオンラインでもいいのですが,直接訪問する経験は思わぬところで学ぶことも多いものです。 こういうところにも新型コロナウィルスの

本の中の優生学 第3弾

今回も,本の中に登場してくる「優生学」を見ていきたいと思います。今回でこのシリーズも最終回です。 では見ていきましょう。 人種優生学が現れやすい文脈のひとつは「人種」です。この『人種とスポーツ』という本は,オリンピックのときだからこそ読んで欲しい一冊です。おそらくオリンピックの競技を見ていて,知らず知らずのうちに優生学的な発言をしてしまっているかもしれませんよ。  優生学が興隆する20世紀初頭になると,黒人の劣等を遺伝的に裏付けようとする分析が目立つようになっていく。ア

月経前症候群と性格特性

さて,これまでも授業の中で出てきた素朴な疑問に答えるために調べた内容に基づいて記事を書いたことがあるのですが,今回もそのひとつです。 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)という症状があります。PMSとは,「月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの」をいうそうです。そして,精神症状として以下のような症状を伴うとされています。 このような症状を伴うことから,何らかの立ちでPMSがパーソナリテ

マウスピースの洗浄剤

今日は心理学とは関係のない話題について。 訳あって,夜寝る時にはマウスピースを装着しています。ずいぶん長い期間,何年も毎晩つけて寝ていまして,手放すことができません。海外の出張があっても(しばらく行けそうにありませんが),必ず持っていくことにしています。 洗浄同じマウスピースを長期間使用すると,どうしても汚れが気になってきます。 毎日の洗浄には,入れ歯洗浄剤を使うのがいちばん手軽で,出張先でもすぐに使うことができて便利です。機械式のものもあって,超音波で汚れを落とします

禁煙すると衝動性が低下する?

以前も書いたことがあるのですが,私は喫煙者でした。大学院生の頃,学会の喫煙所に行くといつも同じ先生がタバコを吸いに来ていて,そこで知りあって仕事を回してもらったり……ということもありました。 今では,やめることができてよかったと心から思っているのですけれども。 未成年喫煙率たぶん,今の感覚だとだいぶ引いてしまうような統計情報だと思うのですが,「未成年の喫煙」という統計情報が厚生労働省の「最新たばこ情報」というページに掲載されています。 「性別学年別喫煙経験率」のグラフを

HSPに関連するパーソナリティ

感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)は,HSP(Highly Sensitive Person)の背景にある心理的要因として知られています。「繊細さん」なんて呼ばれることもある,あれです。 HSPの概念は,内向的な性格特性に関連するものとして提唱されました。内向的と関連はするけれども,それとは違うパーソナリティ特性です。 内向性の再評価特にアメリカ合衆国は,外向的であることに高い価値が置かれている社会です。私なんかは立食パーティに

ニュースでよく見かける表現

ふだんほとんど使うことがないのに,また本の中でもあまり見かけないのに,ニュースではよく見かける表現というものがあります。 ◎秋波を送る テレビのニュースでもほとんど聞くことはなくて,見かけるのは新聞記事やネット記事(新聞が元の)ではないでしょうか。 漢字の読み方は「しゅうは」です。「あきなみ」って読んでしまったりしていないでしょうか。「しゅうは・を・おくる」ですね。 秋波 「秋波」というのは,「美人のすずしげな目元」「女性が異性の気をひくためにする色っぽい目つき」とい

新型コロナの広がりで人々の移動はどう変化したのか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は,わたしたちの生活を大きく変えてきました。もうこれが「あたりまえ」のようになってしまっていること自体,感染拡大前には予想もできなかったことなのですが……。 移動の制限コロナウィルス感染症によって,世界中の人々に対して影響を及ぼしたことのひとつは,移動の制限です。世界中でロックダウンが行われ,企業も学校も民間機関も閉鎖される,というそれまで誰も経験したことがなかったようなことが世界中で行われています。 どの国でも旅行者は激

自尊感情の不安定さは年齢に伴ってどのように変化するのか

自分自身を評価の対象としたときに,どれくらい自分を好ましく,肯定的に捉えるかという感覚を自尊感情(自尊心,self-esteem)といいます。 これまでにも記事で書いてきたようにも思うのですが,何歳くらいがいちばん自尊感情が高いと思いますか?予想してみてください。 自尊感情の要素自尊感情には,不安定性や随伴性といった要素があります。 自尊感情の不安定性というのは,毎日自尊感情を測定したら,どれくらい日々の出来事で変動するかという要素を指します。不安定な自尊感情の持ち主は

本の中の優生学 第2弾

今回も,本の中に書かれた「優生学」について,見ていきたいと思います。とりあえず今回は,優生学の創始者であるフランシス・ゴルトンに関する引用からスタートです……。 ゴルトン最初にも書きましたが,優生学の創始者はダーウィンのいとこで数多くの学問に影響を与えた,フランシス・ゴルトンです。心理学もゴルトンの影響を多く受けています。私の研究分野も同じです。でもその一方で,優生学を誕生させてもいるのです。  ゴールトンは,1869年に著した『遺伝的天才』の中で,どんな範囲の身長をとっ

大麻の問題が起きにくい性格セット

アメリカのいくつかの州では大麻が合法化されています。そしてそれに伴って,大麻の栽培と販売が一大産業と化しています。合法化されてから,すでに市場規模は2兆円以上に膨らんでいて,大麻を栽培して大金持ちになった人々も出てきているようです。 しかし,明るい側面があれば暗い側面があるのも確かでしょうね。これだけ多くのお金が動いているということは,大麻にお金を落としていく人々がいるということですから。 大麻の乱用何事も,節度を持って接していればいいのですが,どうしてもやり過ぎてしまう

ナルシシズムと攻撃性の関連はどれくらい?

ナルシスティックなパーソナリティ(自己愛的な性格)は,攻撃性との関連が検討されたことでも注目されたパーソナリティ特性だったという歴史があります。 というのもどうして注目されたかというと,ナルシシズムは自尊感情とプラスの関連をもつからです。そして,自尊感情の高さが「望ましい状態」であるにもかかわらず,どうして自尊感情が高いナルシスティックな人々が攻撃的で不適応的なのか,という基本的な問いがあったというわけです。 高くて不安定この研究の文脈のなかで注目されたのが,ナルシシズム

本の中の優生学

今回は,これまで読んだ本の中から「優生学」というキーワードでいくつかの一説を抜き出してみたいと思います。 知能検査と優生学心理学の歴史のなかで,優生学と切っても切れない関係にあるのが知能検査です。  ビネーのテストが出現したころすでに,優生学の考えと結びついた遺伝性の力への無批判な信仰が広くゆきわたっていた。1907年,インディアナ州では優性断種法が州議会を通過した。その後,アメリカの30以上の州がインディアナ州のあとにつづいた。この法律はとりわけ,犯罪者,白痴,痴漢,て

完全主義者はCOVID-19を恐れる

たいていどのような心理特性についても同じことが言えるのですが,完全であろうとする傾向を表す完全主義についても,ときには役立ちますし,ときには問題を生じさせます。物事に取り組み始めれば,完全であろうとする傾向は,その成果のレベルをより高いものに保とうとします。結果として,完成度の高い成果へと結びつくこともあるというわけです。 その一方で,完全主義的であることは非常に高い目標を立てて,その目標が少しでも達成されないと過度に落ち込む,という傾向も持ち合わせています。高い目標はいつ