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むさしの写真帖

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「写真っていうのはねぇ。いい被写体が来たっ、て思ってからカメラ向けたらもう遅いんですよ。その場の空気に自分が溶け込めば、二、三秒前に来るのがわかるんですよ。その二、三秒のあいだに… もっと読む
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#写真の楽しみ方

むさしの写真帖

むさしの写真帖

古いデジカメについて書いています。
ただしこれらの記事は2018年前後のものであるので、カメラのほとんどは手許にないのをご承知おきください。

追記: ネタが尽きたので写真、カメラにまつわること。またアラカンおじさんの日常について書いたりします。(2023年霜月朔日)

幸福論

幸福論

いったい人間(これまた抽象的で申し訳ないけど)は、どこに行くつもりなんだろう、と時々思う。
突然おじさんに真顔で語り始められても困るだろうけれど、ぼくとてたまに、ごくたま〜に真面目に何かを考えたりもするのだ。

物質的にも精神的にも満たされた生活というのがひとつの幸福の指標なのだろうけれど、その正体はいったいどんなものか誰か本当に分かってるんだろうか、と。

たとえば誇らしげに平等を唱える人の生活

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冬に

冬に

ほめたたえるために生れてきたのだ
ののしるために生れてきたのではない
否定するために生れてきたのではない
肯定するために生れてきたのだ
無のために生れてきたのではない
あらゆるもののために生れてきたのだ
歌うために生れてきたのだ
説教するために生れてきたのではない

死ぬために生れてきたのではない
生きるために生れてきたのだ
そうなのだ 私は男で
夫で父でおまけに詩人でさえもあるのだから

谷川俊

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ソール・ライター

ソール・ライター

「雨粒に包まれた窓の方が、私にとっては有名人の写真より面白い」

「私は有名になる欲求に一度も屈したことがない。自分の仕事の価値を認めて欲しくなかったわけではないが、父が私のすることすべてに反対したためか、成功を避けることへの欲望が私のなかのどこかに潜んでいた」

「自分でいい作品だと思うものは住んでいるところの近所で撮ったものだ。ストリートはまるでバレエのようなもので、なにが起こるか予測できない

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無題

無題

高山の そのいただきに額あげて 風の寒きに 触れましものを

若山牧水

地下鉄道にて

地下鉄道にて

ひとり来りて地下鉄道の
青き歩廊をさまよひつ
君待ちかねて悲しめど
君が夢には無きものを
なに幻影の後尾燈
空洞に暗きトンネルの
壁に映りて消え行けり。
壁に映りて過ぎ行けり。

「氷島」萩原朔太郎

逃げ去るイメージ

逃げ去るイメージ

Photography as I conceive it, well, it’s a drawing — immediate sketch done with intuition and you can’t correct it. If you have to correct it, it’s the next picture. But life is very fluid. Well, some

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冬の詩

冬の詩

冬だ、冬だ、何処もかも冬だ
見わたすかぎり冬だ
再び僕に会ひに来た硬骨な冬
冬よ、冬よ
躍れ、叫べ、僕の手を握れ
大きな公孫樹の木を丸坊主にした冬
きらきらと星の頭を削り出した冬
秩父、箱根、それよりもでかい富士の山を張り飛ばして来た冬
そして、関八州の野や山にひゆうひゆうと笛をならして騒ぎ廻る冬
貧血な神経衰弱の青年や
鼠賊のやうな小悪に知慧を絞る中年者や
温気にはびこる蘇苔のやうな雑輩や
おい

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モノクロ

モノクロ

カメラの設定を「モノクロ」にして歩く。
そうすると目は光と影を追い始める。
面白いモンだな、と思う。
その感じが楽しくて、いつもよりシャッターが多い。

秋の聲

秋の聲

秋の日の
ヸオロンの
ためいきの
ひたぶるに
身にしみて
うら悲し。

鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。

げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。

落葉

上田敏『海潮音』より

子育て幽霊

子育て幽霊

ある夜の事。

店仕舞いを終えた飴屋の雨戸を叩く音がする。
主人は何事かと
「どちらさんで?」
と応える。
雨戸の向こうでか細い声がする。
「飴を一つ売って下さいませんか」
こんな夜更けに一体 … と思いながら、主人は雨戸を開けた。
店の前には青白い顔をして髪をボサボサに振り乱した女が独り。
一瞬ぎょっとしたが、それでも女は一文銭を出すので
「一つでよろしいので?」
と聞くと女は何も言わない。

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