見出し画像

AM8:52

木曜日、朝8時52分。
いつもなら、園服を着てEテレを見る姫を横目で確認しながらベランダに出て洗濯物を干し、朝の気温をなんとなく肌で感じて重ね着させるかどうかを考えたりしている。

今朝の私は違う。

東海道線の車窓から根府川の海と水平線を眺めている。
それもひとりで。
実家に用ができて、夫に協力してもらい朝早く家を出た。
遊びに行くわけではないけれど、イレギュラーな朝に少しだけ申し訳なさを感じつつ…

驚くほどよい天気。秋の空。キラキラと輝く海。
空いた車内はどこかのんびりした空気が漂っている。
赤いキャスケットの帽子にツイードのジャケットを着たおじいさんが、窓に切り取られた景色に見入っている。まるで一枚の絵画を眺めるかのように。
スマホを弄りがちな自分が無粋に思えた。

ー自分の意思(と家族の協力)で、私は昨日と違う8:52を選ぶこともできるんだー

当たり前のようなことにえらく感動してしまった。
家族の匂いのするリビングで日々決まったリズムで家事をこなす良さもある。
ただ、それとは違うアクションを起こしてみるという選択肢を忘れてはいなかったか。繰り返される暮らしの中で凝り固まる筋肉はなかったか。

おそらくこの電車はこの電車で、日々同じようなリズムで勤めを果たしているのだろうけれど、別の8:52からやってきた私にとっては実に刺激的なヒトコマなのであった。

そして、実家で母が用意してくれたカレーうどんには、一人一本宛ての根深ネギを刻んで炒めたものが入っていて(4人前だったので4本!)、しょうがもまるごと一個くらい入っていて、目からウロコ。そしてすごく美味しかった。(風邪が吹き飛ぶような味!)
誰かの日常は、誰かの非日常になり得るらしい。

時にはいつもと違うアクションをエイ!と選べる私でいたいと思った。
それは巡り巡って、“いつもの暮らし”を豊かにすることにつながるのかも知れない。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?