「君は何ができるの?」と問われる世界で
某作家さんの事務所で2年弱、働いたことがある。
私の職歴の中で唯一の「正社員」の過去であり、最長のお勤め年数である。
業務内容は雑用全般、というか世話女房的なことで、その他のスタッフさん達にまみれて、ひたすら先生をサポートするという仕事だった。
入社したとき、ボスである作家先生に聞かれた。
「で、君は何ができるの?」と。
事務所に出入りしていたのは外部委託の“特定の何かができる人”で、私のように(あまり意味のない)学校を卒業したばかりの、何の経験も特技もない人間はとても珍しい存在だったと思う。
「何も出来ません。」と答えるしかなかった。
でも、当時はそれで良かった。
その場所は、何かができるゆえにクセの強い人ばかりだったから、そうではない下っ端の私は場の調整役のような立場に落ち着くことで生き延びた。
あの頃から20年近く経った今、当時と同じ質問をされたとしたらどうだろう?
と考えてみたら、そら恐ろしくなってしまった。
「何も出来ません。」
それは何かを生み出す現場で中年女性が発するのには、あまりにも場違いな言葉だろうし、
「やる気と体力だけなら誰にも負けません(若い時の面接はだいたいコレ)!」
なんていうハッタリも通用しない、老いていくばかりの身体である。
なんでこう長いこと「何か」を身につけることから逃げてきたのかな?
なんて、深層心理を考えてみたくもなるけど、そんな現実逃避はもういいや。
今からでもできる事、できそうな事から続けてみるしかない。
そしてお婆さんになってからでもいいから、
「ワシにもこんなことができます。」って言えるようになろう。
クセのある人たちとチームを組んで何か楽しいことをやるのもいい。
既に、“社会の誰もがクリエイター”みたいな世界になっているのだから、それは難しいことじゃないんだ。
たったひと言、なんでもいいから、
「私はこれが出来ます」って言えるかどうか。
ただそれだけなんだ。
まずは、周りと比較するのをやめて、
小さな行動を毎日続けることに慣れてくことからだな。
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