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甘いけれど甘くない。『おやつ屋pokke』が大事にする「行動力」ってなんだろう

ほんのりと甘いお菓子に、かわいい雑貨、ふんわりとやさしい世界観でお客さんを魅了する『おやつ屋pokke』さん。しかし、お菓子作りも店作りも、甘い気持ちじゃできないこと。「美しく泳ぐ白鳥も、水面下で必死に脚をかき泳いでいる」、なんていうように。

今回のhito noteでは、atelier hito(以下、hito)と仕事をした店主さんにインタビュー。hitoさんたちが仕事を通じて新しく何かを始める人たちを応援するように、このhito noteでは空間づくりのことや、これから何かを始めたい人たちの背中を押すような思いやエピソードを伺っていきます。

記念すべき第一弾は、愛知県刈谷市のおやつ屋pokkeの店長である、中川まりほさんです。

中川まりほさん
愛知県刈谷市のおやつ屋pokke(@oyatsu_pokke)の店長。大学卒業後、3年間不動産会社で勤務、その後ケーキ屋勤務と製菓専門学校を経て『おやつ屋pokke』を開業。工房にて日々に寄り添えるようなおやつを手がけている。

東刈谷駅から歩いて約13分。白いビルのテナントの一角にあるおやつ屋pokkeさんにお邪魔したのですが……

店に入った瞬間に夢のように可愛くて甘い香りに包まれる……ここは天国かというくらい心地よい空間!

白を基調にした店内は、アンティークの什器や雑貨、お皿が並べられています。

ということで、hitoさんたちが手がけた内装の話を聞いていきます!

「非日常」的空間で「日常」使いのお菓子を売ること

ーーpokkeさんの店内はおしゃれで個性もあって、素敵で、うっとりしてしまいます……!

中川さん(以下、中川):ありがとうございます。アンティークが好きなので、自分が好きなものを集めて作りました。お皿もフランスに行った時に手に入れたものを使っていて。形や色も特徴的ですよね。

アンティークを置くのも、天井にドライフラワーを飾るのも、日常と違う“異世界感”を大事にしました。

ーー 「日常に寄り添うお菓子」に対して、店内は「非日常」をテーマにしているというギャップがいいですね。

中川:店内に入った時に非日常を味わい、家に帰宅したらお菓子を食べてほっと日常を楽しんでいただく体験がいいなあって。また行きたいって思ってもらえる店にしたいと考えた時に、お菓子だけでなく、店内の空間でも印象に残るお店を目指しました。

ーー日常と非日常のバランス感がいいですね。それにお客さんへの見せ方にこだわり抜いていてすごいなと思いました。

中川:そうですね、空間だけでなく、Instagramの写真やECサイトなど、全て気を遣っています。まだ店舗を構えていなかった時、コロナ禍で出店予定だったイベントがほぼ全滅したことがあって。その時にオンラインでの販売を始めました。

オンライン販売もありがたいことに好評だったのですが、ネットだと対面での接客ができず、お客さまとの対話ができないですし、世界観を伝えるのが難しいじゃないですか。なので写真を綺麗に撮るためにどうしたらいいか考えて撮るなど、見せ方にこだわりました。その分、実店舗にお越しいただいた時の期待感は高いと思うので、自分が納得いく空間にしたいと思いましたね。

ーーそんな中川さんが、店内で気に入っている部分はどこでしょう?

中川:店頭と厨房の間のアーチ型の入り口と、アンティークの窓です。アンティークの窓はいろんな店舗をhitoさん達と巡って入手しました。

ーーそうだったんですね!空間のアクセントになって可愛い……。一方でもっとこうしたかったとか、進める上で悩んだ部分はありますか?

中川:hitoさんとのデザインの話し合いも工事もスムーズだったので、特にないですね。基本的に自分の頭の中にイメージがあって、希望に沿うようにhitoさんたちが考えて進めてくださいました。あ、でもhitoさんからの提案で、トイレがとっても可愛くなりました!

ーー本当ですね!そもそもの話になりますが、hitoさん達との出会いはいつだったのでしょう?

中川:私がちょうど屋号を構えてイベント出店を始めた時でした。hitoさんたちが前の職場でイベントを開催するから出店のお誘いをいただいたのがきっかけです。まだまだ駆け出しの頃にお声掛けいただいたご縁はもちろん、イベントの企画力や実行力、業界問わずいろんな人と繋がりがある社交性をみて、この物件を見つけた時にhitoさんたちに施工設計の依頼をしたいと思い、連絡しました。

連絡してから完成まで約4ヶ月と短期間でお店ができたのも、hitoさんたちが私のやりたいことを汲み取って形にしてくれたおかげだと思っています。

atelier hitoからの建築的な推しポイント

◆意識していたこと
pokkeさんはイベントでの活動が長いこともあり、お店のコンセプトやイメージをしっかりと持たれていたので、提案を考える時間もとてもスムーズでした。 特にpokkeさんが打ち合わせの中でよく話されていた、『非日常』というワードがとても印象的だったので、それに合わせて『夢のような時間が過ごせる場所』を目指して、細部までデザインしました。

◆特に推しの部分
カウンターの形についてです。打ち合わせ当初からpokkeさんの理想とする位置や形状があったため、建築的な視点から使いやすさや作業導線の検討をし、図面上に反映しました。pokkeさんを訪れたお客様が、ついつい多く買ってしまうような、ワクワクする配置になるようなデザインに。カウンターの腰壁は、pokkeさんと一緒に漆喰DIY。コテではなく素手で塗ることで、ナチュラルな表情に仕上がりました。手で塗り広げる漆喰は、なんだかお菓子作りみたいで楽しかったです。

やってみないとわからないから、まず行動する

ーーここまで店内空間のことや、pokkeさんのこれまでのことをお伺いしました。今度はこれからやっていきたいことなど、今後の展望は何でしょうか?

中川:ずっとやってみたいと思っているのは物販です。私たちのお菓子に合った雑貨や食器なども一緒に売っていきたいなと、店を構える前から考えていたので、割とゆとりのある空間にしていて。日常生活の中に溶け込めるデザインでも、ちょっと特別感のあるものをセレクトしたいですね。

ーーお話を伺っていると、「日常に寄り添う」ことを大事にされていて、ご自身の軸がぶれていないことが伝わってきます。それって全て考えて行動しているのか、それとも自らの経験に頼って感覚で行動しているのか、どうでしょう……?

中川:感覚ですかね。今できる最善のことをやると決めて動いています。コロナもそうですが、世の中の状況って変わるじゃないですか。どれだけ計画しても、叶わないこともあって、自分の力じゃどうしようもないことも起こります。それでも無理に進めることはしないですね。私はあまり計画性はないと思っていますが、臨機応変性はあると思います笑。

ーーこれから何が起こるかなんてわからないけれど、今できることを考えて動くってことが大事ですよね。

中川:まず動いた方がいいなと思います。Instagramで時々、質問コーナーをやっていて、その時にもこれから店を構えたい方に行動することを伝えています。私は、家族や周りの目を気にしてできないは、きっと一生できないって思っていて。やってみて本当にダメだった時に、じゃあどうすればいいかを考えればいい。やってないのに、想像してできないって思う行為は無駄じゃないかなと。お菓子作りも店作りも、覚悟がないとできないので。

ーー偏見かもしれませんが、周りの友人をみているとパティシエや料理人って、徹夜で仕込みとか当たり前なイメージがあります。

中川:私もオープン当初は忙しくて寝ていない日が何日間かありました。早朝に店に来て、夜遅くに帰って、2〜3時間寝るみたいな生活を送っていましたが、それでも私の体が丈夫だったので体調は無事でした笑。でも、無理してまでやるのは違うなと思いました。負荷をかけて挑戦することは大事ですが、体を酷使しても、続かないなと。

ーー私も睡眠時間を削って力技でやろうとする時がよくあるのでわかります……。無理はよくないけれど、好きだからやれることなんですよね。

中川:そうそう。この業界だと長時間労働は当たり前のように多くて、でも低賃金も当たり前なんですよね。でもそれを「当たり前だから」という理由にしたくないので、うちのスタッフはちゃんと休みをとってもらうし、勤務時間も守ってもらう。私も以前みたいに無理してまで働かないようにしています。健やかに働ける環境を自分たちで作っていきたいですね。

選んだ道を正解にするために

ーーそうやって違和感のある「当たり前」をそのままにしないって大事ですよね。世の中のマジョリティはあったとしても、何が正解かなんてないですし。

中川:そうですね。よく「お菓子屋さんをやりたいんですけど、何からやればいいですか」って聞かれるんです。でも正しい順番や道のりなんてないですし、その人のゴールがどこにあるかによっても違いますよね。その人の置かれている状況によっても違いますし。

ーーその道の最短ルートを求めたいと言う人は多いですよね。失敗したくなかったり、自信や勇気がなくて挑戦できなかったり、覚悟がなかったり。

中川:何からやっていいかという質問は一番困りますね……。

ーー中川さんがこれからお店を構えたいって方にアドバイスをするなら、何とお伝えしますか?

中川:とにかく「行動する」しかないですね。今できないけれど、いつかやりたいとかだと、 それは叶えられないと私は思ってしまいます。自分を守っているだけで、自分に言い訳しているなって。めっちゃきつい言い方になっちゃいますけど笑。

でも、自分を甘やかすとか、やりたいことに対して妥協しちゃうと、当たり前ですけれど後悔が残ってしまうんです。やりたいことができる環境を作る努力が大事ですし、そうしてやりたいことができるって本当に恵まれているなと感じています。そういう私も自分に言い聞かせながら笑、そして周りに感謝しながらやっています。

行動するってことは、今までの自分やその周りの何かを変えたいから。でも人間は本来、変わりたくない生き物だと思うんです。環境が変わってしまったら、その分適応しなければならないし、習慣を変えていく必要がある。自らを変えることは、エネルギーを要することだから。

それでも変わりたいなら、まずはやってみること。この予測不可能な社会の中で、変化を恐れずに動くことの大切さを、中川さんは教えてくれました。


▽atelier hito 公式サイト


direction:atelier hito
writer:fujico


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