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イスファハーンは今も世界の半分だった。後編(イラン旅行記その②)

前回はこちら↓


チャイナ?ノー!ジャポネ!

 さて、前回のnoteでいよいよ世界の半分、イスファハーンのイマーム広場にたどり着いたATBさん。この想像よりもよっぽど広い、文字通りの広場に足を踏み入れれば、反対側まで歩いてみたくなるのが人情というもの。とはいえ、その長さはなんと510m。往復すれば1kmというなんとも本当に広いなぁ…と思いつつ、テクテクと歩きはじめた。
 広場内は、広い歩道とそれに囲まれた芝生で構成されており、また、そこかしこにベンチもある。とはいえ、だいたいすでに先客がいるが。

広場の中心には池と噴水

 そして、この広場の中心を陣取っているのは、豪快な噴水付きの池。ライトアップされた夜のイマーム広場によく映える。
 また、広場を歩いていると時折、鈴のような音や、競馬場のパドックのような匂いを感じる。その原因はこちら。

 日中から夜にかけて、観光馬車が広場を半周。一人だし流石に乗りはしなかったけど、それなりに人気な感じだった。一周いくらなんだろね。

 そんなこんなで、広場の反対側まで到達。

 このイマーム広場のまわりはバザールになっているのだが、この広場の反対側部分からは旧市街へ向かってさらにバザールが伸びている。

 さて、上の動画でも出てくるが、やはり珍しい顔立ちの外国人観光客っぽいやつがウロウロしていると気になるらしく、わりと声をかけられる。珍しいものをちゃんと珍しらしがる人々なのだ。ただ、やはりというかだいたい第一声はチャイナ?である。まぁ最近の国際情勢も含めての中国の影響力を考えたら仕方ない。でもたまーに、ジャポネ?と言ってくる人もいて、そうするとおー!と思ってみたり。
 ちなみに話しかけてくるのは、老若男女問わず。若い女子学生のグループなんかからも話しかけられる。学校とかで習った英語を使ってみたい、というのもあるのかも。なので、イランといえども、色々お話したければ、英語は喋れた方が良さげ。私は喋れないのでお話は弾みませんでしたww しかしコンカフェのキャッチでもないのに、こんな異常独身男性にもJKから話しかけてくる街イスファハーン、やはりアッラーの前には人類皆平等であることが根付いており素晴らしい(?

夜のイスファハーン市街

 さて、そんなイマーム広場だが、話しかけてくるのは珍しがる一般人だけでなく、まぁご多分に漏れず観光客狙いのじゅうたん屋なども話しかけてくる。すぐに握手求めてきたり、やたらと馴れ馴れしいのが特徴。特に、イマームモスクあたりは多かった気がする。別に押し売りされるわけでもない、単なる営業なんだけど、だんだん煩わしくなってきたので広場を後にして、夜のイスファハーン街歩きへと繰り出すことに。

 怪しげ…ではないけど、まぁなんか海外にありがちなミニ遊園地。にぎやか。

 こちらは、歩行者専用道路となっている大通り。洗練されたオシャレな街だなぁ…という印象。散歩して、流石に喉も乾いたので、あまり日本ではみかけない、バーベリーのジュースを買ってみた。美味しい!

バーベリーのジュース
人気のお店なのか、並んでいる
しかし、文字が読めなさすぎてなんか脳がバグってきそうww

 イスファハーンには、地下鉄も走っている。今回は使う機会がなかったが、せっかくなので駅に潜ってみた。まぁよくある、新興国の中国製地下鉄みたいな感じ。

地下鉄入り口
メトロマークと案内
路線図。3路線が載っていますが、現在運行しているのは、南北に走る1号線のみの様子。
発車案内
自動改札

 個人的には、イマーム広場近くを走る路線が早く開業してくれれば便利になるなぁ…とも思うが、一方で世界遺産の街ということもあり、そことの保護の兼ね合いも問題になっている様子。なかなか難しいところがあるんだろうな、とは思うけど、なんとかうまい解決策を見出してほしい。

橋のたもとに集まる人たち

 そして、歩行者天国の道をてくてくあるくと、川の近くに到着。イスファハーンの観光名所としても有名な、スィー・オ・セ橋である。

スィー・オ・セ橋

 イラン人にはなぜか、この橋のたもとに集まり、歌などを歌ってにぎやかに過ごす習性があるらしい。しかしまぁ、アーチと夜のライトアップが美しい橋ではある。このように、橋の下にも人はたくさんいるけど、普通に橋自体を渡っている人もたくさんいた。まぁそりゃ橋なんだから当たり前だろうけど。

橋の上

 ちなみに昼間に来るとこんな感じ。まぁ平日の朝なので当たり前かもだが、暑いのもあって人は少ない。イスファハーンは、イラン歴での週末滞在になったけど、だいたいみんな夕方になると、ようやく色んなところから人が湧いてくるイメージww

昼間の様子

Abbasi Hotel Isfahan滞在記

 さて、流石にそろそろ良い時間になってきたので、ホテルへ帰る。

Abbasi Hotelのロビー

 帰る先は、あの最高級ホテルだから、足取りも軽い軽い。ロビーの天井も流石に重厚感。そんな、Abbasi Hotelのロビーにはこんなものが。

Welcome to Abbasi Hotel, the oldest hotel in the world.

 流石にThe oldest hotelは優良誤認表示な気が…ww それこそ我が国の法師旅館とかめっちゃ古いって聞いたけどwwwww まぁ、チャームポイント(可愛らしいところ)ということで一つ。

 ついでに、ロビーの天井には、ひっそりと、最高尊厳えらい人の写真が掲げられているあたりはまぁ、いわゆるそういうイランのアレなところ感も感じられなくはない(?

 ロビーからは、中庭に出ることができる。この中庭にはカフェもあるため、誰でも自由に出入りすることができ、とてもにぎやかだった。

 ぜひイスファハーンに来るならこのAbbasi Hotelへの滞在を強くオススメするけど、滞在しないという場合でもお茶くらいは飲みにきても良いかもしれない。

カフェメニュー。実勢レートで1ドル=470,000リヤルくらい。

 まぁ、こうやって自分の部屋から中庭を眺めながらスナックでもつまみつつ、コーラでも傾けるのが一番だと思うけどね!←

 ちなみに、アメリカと絶交中のイランだが、コカ・コーラはある。イラン製らしい。まぁ、普通にちゃんとコーラで、美味しい。プルタブが昔の感じだけど、それはそれで珍しくてよき。…しかし、なによりこういうスナックやコーラが、ちゃんと100円やそこらで買える世界でありがたい…。アメリカでこれやると500円とか普通に取られるもんな…。

輝く "Made In Iran" の文字。

 ちなみに、コーラなどは外から買ってくる必要があるが、インスタントコーヒやお茶などは豊富に用意されており、電子ケトルも完備です。キャラメルマキアートのようなものもあり、甘くて美味しかった。

  なお、部屋にはクルアーン等々もちゃんと備え付けられています。

 シャンプーや歯ブラシ等のアメニティもちろんあるけど、シャンプー関係はわりと安めな印象。まぁ家でそんな高級シャンプー使ってるわけでもなし、分からんけど。

 一応バスタブ付きの部屋だけど、なんと排水口の蓋がなかったww お湯張るとコストかかるし、使わせねーよという魂胆かな?ww
 ただやはり日中はちょっと暑いし、リラックスしたいので、分厚いタオルで排水口を塞ぎ、無理やり入浴してやりました。ただ、そもそもの水量からしてお湯張りにはかなり時間がかかる。とはいえ、シャワーは普通に使えるし、まぁ及第点かなと。

 その他、周辺の情報に触れると、正面玄関から通りを左に出ると、わりと営業時間が長めのスーパーマーケット…と言っているが実際はコンビニサイズの店がホテルのすぐ近くにあり、結構お世話になった。夜食のスナック等が欲しい時はここに来ると良いかも。食品、雑貨の他にお土産物等も売っていた。

おはよう朝ごはん

 おはようございます。しかし、朝起きて5秒でこの風景は贅沢すぎる…。

 朝のお祈り…はしませんがメッカの方向でも確かめつつ…

メッカはあっちっていうのも示すやつ(多分

 朝のニュース番組を見…

 朝食のお時間です。ビュッフェスタイル。

おかず①
スープっぽい感じ
パンとかナン類
拡大図
ジャム関係
おかず②
ソーセージ
ドリンク
イランは果物がおいしい
その他いろいろ
ライブキッチン(オムレツコーナー)
このオムレツはめっちゃ美味かった
朝食全景

 2連泊しましたが、メニューは両日も一緒だった。ライブキッチンでつくるオムレツが美味しかった。
 しかしまぁ料理はともかく、この朝食会場の豪華絢爛さよ。さすが名門ホテル…。

 なんか写真じゃ伝わらん気がするけどそれはまぁきらっきらしていた。

イスファハーンの本屋さん

 さて、朝食を摂ったら再びイスファハーンの街へと繰り出す。イスファハーンにはイマーム広場以外にも、世界遺産となっているジャーメ・モスク(金曜モスク)や、アルメニア人居住地区などの見どころがある。昨日はイマーム広場に行ったので、今日は別の場所へ――とはならなかった。お土産物を物色したいという理由もあったが、結果的には1日をまたイマーム広場で潰してしまうことになる。まぁ、明日にはこのイスファハーンを発ってしまうわけで、どだい都合2日でこの世界の半分を堪能できるわけがない。それなら、いっそこのイマーム広場に入り浸るというのもそれはそれで良い選択だった気がする。

 イマーム広場に向かう前に、小さい書店があるのが目に入ったので、試しに寄ってみた。

ペルシャ語ナニモワカラナイ(本当

 まぁ、当然のことながら、タイトルさえ読めないし、表紙でなんの本か想像するしかないww しかしそんななか、店舗をぐるっと回ってみると、読める字を発見ww

運は勇者を助く!

 さて、何の本でしょう?ヒントは、この本がある一画を写した次の写真。

 そう。投資系の本だったwww 実際、手に取ってパラパラめくってみたが、ローソク足の解説等々がされていて、イランでも資産所得倍増元年が始まっているらしい←

 閑話休題。昼間の暑い日差しのなか、イマーム広場へと向かう。

 5月上旬といえど、日差しは暑い。やっぱり夜に比べると、人は少ない気がする。しかし、青空の下で、イマーム広場は、それこそ教科書で見た通りの景色が広がっていた。

 陽気な観光客が地球を回す…ことはないが、イマーム広場では、そんな彼らを乗せた観光馬車が走り回りつづけている。まさか、空荷で走るわけはないだろうから、日夜通して乗る人が多い人気アトラクションらしい。お馬さんも、ご苦労さまである。

 この賑やかなイマーム広場もきっと早朝に来てみると雰囲気がまた違うのだろうし、次回イスファハーンを訪れる時には是非とも早朝に散歩してみたいなぁ、と。

イスファハーン土産を物色

 さて、とりあえずイマーム広場を取り囲むバザールで、お土産ものを物色してみる。

 イスファハーンでのお土産もので、調べるとまず出てくるのは、ギャズというヌガーのようなお菓子。Wikipedia先生によれば、「タマリスクの樹液とローズウォーターなどを練り上げた菓子。ピスタチオが入ることもある。」とのこと。ピスタチオが入ることもある、とあるけど、基本的にネットで調べてみる限り、お土産で推奨されているのは、ピスタチオが入っていることが前提だった。ピスタチオもまた、イランの名物である。

 ギャズにも色々なメーカーがある。ネットでオススメされていたメーカーはどこかのお兄さんが大きくパッケージングされたこちら

 いくつか値札が貼ってあるけれど、ギャズに入っているピスタチオの割合によって、値段が違う。基本的に、ピスタチオが多く入っていれば、高級なギャズということになる様子。

 こちらのメーカーのものも含め、何種類か買ってみたが、確かにピスタチオが多く入っている方が、美味しかった…気がする。

買ったギャズ一覧

 ちなみにギャズは小袋分けされているので、職場でのバラマキ土産にピッタリ!…ではあるのだが、まぁなんというか食感は、バラが香る甘い紙粘土であるので、注意。特に常温だと紙粘土感が強まる気がする。ベタベタするし。冷やして食べたほうが食べやすいかも。まぁでも、大量に食べるならともかく、珍しいお菓子風味で、不思議ではあるが美味しいとは思うし、お土産には良いのではないだろうか。

ギャズの小袋を開けてみた

  その他、まぁよくある飾る系のお土産のほか、ハータムカーリーというイランの寄木細工でできた木箱も買ってみた。色々な種類、サイズがあったが、こちらはティッシュボックスが入るというもの。ハンドメイドなので、デザインが同じでも、ちょっとずつ違う。

 これをティッシュボックスに被せるだけで、なんということでしょう…我が家はペルシャに早変わり!。散らかり放題で、ペルシャ絨毯なんかとてもうちの部屋には似合わない…なんて方でも、ティッシュボックスの一つや二つはあるでしょうから、お手軽手工芸品として、オススメです。

その他、バザールの様子
多分権利的にはダメそうww

イマーム広場の観光スポットめぐり

 さて、昨晩はこのイマーム広場の広場部分をうろうろしただけで終わってしまったけれど、このイマーム広場はいくつかの宮殿やモスクに囲まれている。まずは、西に位置するアリ・カプ宮殿を訪れた。ここには、高台のテラスがあり、イマーム広場全体を見下ろすことができる。

アリ・カプ宮殿

 狭い階段に気をつけながら登っていけば、そこには絶景が広がっている。

こんな階段をいくつか登っていく
テラスに到着
ガイドブックでもそのまま使えそうな風景が観られる

 これぞ、イスファハーン、という風景が眼前に広がる。ただ、もちろん風景も素晴らしいのだが、ここは単なるテラスではなく、この、世界の半分を作り上げたアッバース一世の住居とするために建てられた由緒正しき宮殿である。その装飾自体も、もちろん美しいので、せっかくなら観ていきたい。

テラスの天井
吹き抜けの天井
下り階段も狭いので気をつけて

 ちなみに、この宮殿にはもう一つ、最上階に音楽堂があり、そこも見どころらしいのだが、この時は公開休止中で観られなかった。無念。

 さて、お次は、噴水を挟んで反対側に位置するシェイフ・ロトフォッラー・モスク。王族のための専用礼拝堂としてつくられた、小さなモスクだ。

噴水。昼間は稼働していないようです。ちなみに遊泳禁止ww

 小さなモスクとはいえ、その装飾の素晴らしさは、イマーム広場随一かもしれない。

モスクの入り口
モスクの入り口から宮殿を望む

 礼拝堂は天井が孔雀の模様になっているのだが、これが本当に美しい…。写真ではなかなか伝わらないかもしれないが…。例えてみれば、光害のない夜、満点の星空を見上げたときの感動に似ている

 しばし、地面に座り込み、その美しさを堪能してしまった。

 さて、最後は南のイマーム・モスク。こちらはとても大きなモスクである。ここに関してはもう閉まってしまっていたので、翌日に訪れたのだが、ついでに紹介。

大きなモスクである

 ホールでは、音がよく響くようになっているようで、団体ツアーのガイドがいると、よくそのガイド自身の声で音響を実演している様子が観られる。

聖職者とフレンドリーに話そう、というイベントもやっているらしい
もしかすると、これが、そのフレンドリートーク?
工事の足場が見える

 ちなみに、このイマーム・モスクは修復工事かなにかの工事中だった。――それにしても、足場が細い気がする…。現場猫案件なのではないだろうか…。

 ちなみに、これらの観光スポットはそれぞれ入場料がかかる。この時(2023年の5月)は100万イランリアルだった。まぁケタは大きいが、当時のレートでせいぜい300円くらいなのでご安心を。

推しのラジオ #ねむねむなごみん にハガキを送る

 さて、ここイスファハーンでは、観光のついでにやりたいことがあった。それは推しのラジオにエアメールを送ることだ。
 ――海外の旅先から、ハガキを送る。いつかやってみたいなぁと思いつつも、しばらくはきっかけがなかった。このSNS全盛の時代にわざわざハガキを送るべき人は残念ながら私にはいない。家族に送るというのもなんだか照れくさい。だが、ある時、天啓を得た。

声優ラジオにでも送ってみれば良いのでは?

 ラジオくらいの距離感ならちょうどよく送れる気がする。ついでに自分にも出せばよい記念になる。ということで、それ以来、その時送りたいと思ったラジオにエアメールを送ることにしている。
 海外からハガキを送るのは、ハードルが高いと思っている人もたまに見かけるが、観光客が旅先からハガキを記念に送るというのは、世界共通の行動である。書きたいことを書き、宛名にはTo JAPAN と大きく目立つように書いて日本に着きさえすれば、あとは配達するのは日本郵政/JAPAN POSTなので、宛名は日本語で、普通は問題ない。書いたハガキを郵便局や切手を売ってくれるところに持っていけば、日本に送りたいんだなということは言葉で言わなくても分かるレベルなので、どうとでもなります。手軽に楽しめ、充実感も得られるミッションなので、オススメ。

 ただ、ここイスファハーンでは、絵葉書を売っている場所が少なかった。もしかしたら、他にもっと売り場所があったのかもしれないが、少なくともこのイマーム広場ではバザールで1軒、イマーム・モスクに1軒しかなかった。他の観光地だと、それこそ絵葉書なんて掃いて捨てるほど売っている印象なのだが…。

 ちなみに、郵便局はイマーム広場にある。グーグルマップで検索すると出てくる。逆に、地球の歩き方に載っているイスファハーンの中央郵便局は見当たらなかった。

イマーム広場の郵便局

 郵便局の真ん前にポストもあるが、なんとなく直接、郵便局のおじさんに手渡した。

送る前のひとコマ

 イランの郵便事情は、なんとなく不安ではあったが、なんのことはない。2週間ほどで無事に自宅に送った分は届いた
 そして、推しのラジオに送った分は――

 無事、届いたうえになんと番組内でも読んでもらえました。うれしみおさしみ。
 毎週土曜日の夜、25:15から15分間、AM558 FM91.1、ラジオ関西、またradikoやニコニコチャンネルの配信でもお届けしている、西條和のねむねむたいむ。是非、お聴きください。<PR><PR><PR>

ジャパン、グッド。イラン――

 さて、少し休憩もしたいので、一旦ホテルに戻る。歩き疲れたし、流石にライドシェアを呼んだ。
 やはり、外国人は珍しいのか、乗ると運転手からたいてい話しかけられる。どこから来たのか、と問われ、日本と答えればもちろん、いいね!という答えが帰ってくる。だが、ある比較的若いドライバーに出くわした時、その後にボソっと、こう続いた。「…イラン、バッド」
 思わず、そんなことはない、こんなにもイスファハーンは美しいし…と返しそうになったが、流石にそういうことではない。この国の人々が直面する困難にまったく思い当たるものがないとは、単なる一観光客の自分でも流石に言えない。
 一方で、この街の人々が、美しいこの街を誇りに思っていることも確かだ。ある女性ドライバーは、この街の美しさをしみじみと、そして自慢気に話してくれた。
 社会がどうであれ、"波斯"の頃から、あるいはもっと前の頃から連綿と続く、この街の歴史の重みは変わらない。この平和産業たる観光が、永く続き、そして拡がっていくことを願ってやまない。

 ところで、全然関係ないことだが、このイスファハーンでライドシェアを呼ぶと、だいたい半々の確率で、男女のドライバーがくることに、少々驚いた。意識していなかっただけかもしれないが、他の国で例えばGrabを呼べば、ほとんどが男性のドライバーだった気がする。一方で、ここイランは、治安的なものはともかく、男女の区分けに厳格な向きのある国でもあり、同性のドライバーばかりでもおかしくはない。
 また、もちろん、どこの馬の骨かも分からない奴を乗せることになるライドシェア、という仕事のなかでの、女性ドライバー率の高さは、すくなくとも、この街の治安の良さを物語っているようにも感じた。

世界の半分でピクニックを楽しむ

 さて、今日はイスラームの国々での日曜日にあたる、金曜日。行楽日和ですが、ここイランでもっぱら人気なのは、ピクニック。なぜかは分からないのだけれど、イランの人々はとにかくピクニックが大好きらしい。

 暑い日中には人もそれほど多くなかったイマーム広場だが、夕方になるとそこかしこで、ピクニックに興じる人々が現れるようになってきた。

  どこか、このイマーム広場を眺められるカフェはないだろうか…と探してみると、ちょうど北の門の近くに、この広場を上から眺められるおあつらえ向きのカフェを発見。

カフェ入り口
一階の上の屋上がカフェになっている

 世界の半分で、思い思いにピクニックを楽しむ人々。世界でも有数の世界遺産である、このイマーム広場も、この街の人々の前では、ピクニックに最適な、なんかすごく昔からあるらしいばかでっかい単なる芝生広場でしかないのかもしれない。
 しかし、きっとそれこそがこの、イマーム広場の素晴らしさの真髄なんだろうと思う。この、ままならない世界のなかで、いま、ここの、この瞬間にだけは、きっと世界の半分の美しさや幸せが集まっている。そう――

――イスファハーンは今も世界の半分だった

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