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ペルシャの車窓から(イラン旅行記その③)

↓前回はこちら。

 ペルシャの車窓から最初で最後の今回は、イランの古都、イスファハーンからイラン第二の都市マシュハド行きの夜行列車に”ヒルネ"乗車し、イランの首都、テヘランを目指す。


チケットの手配

 乗車記を始める前に、まずはチケットの手配方法について記しておかなければならない。
 これまでのnoteでも述べたとおり、イランは大米帝国ユニオンの経済制裁を受けているため、基本的に国際クレジットカードが使えず国外からホテルやフライトなどを直に予約することは難しい
 一方で、基本的にイランに旅行に行く人は、金を持て余した有閑人か、バックパッカーみたいなやつであり、その場合は現地で適当に交通手段を手配すれば良い。しかし、GWで無理やり行ってこようという、自分のような日本の漆黒企業労働者の場合は、事前に交通手段を手配しておいた方が良い、ということになる。

 直予約は無理でも、旅行社を通せば、ホテルやフライトの予約は可能である。今回、ホテルに関しては「1stQuest」という旅行会社を通して事前に予約した。ユーロ建てになるが、クレジットカード決済が可能

 またフライト以外の交通手段でいくと、この国はドチャクソアブラデル諸国なので、燃料費が安い上、道路もよく整備されているため、基本的に安く国内移動するなら、高速バスがメインであり、鉄道はマイナーな移動手段になってしまう。
 そんな事情もあり、イランの鉄道事情に関しては情報が少なすぎた。チケットが買えなくても時刻検索くらいはできるだろうと、イラン国鉄の旅客列車を運行しているらしい、Rajaのサイトを覗こうとしても、イラン国外からのアクセスは受け付けていない

https://www.raja.ir/

 そのため、安全策をとって、テヘランからイスファハーンまでの専用車を手配した際に利用した「ペルシアツアー」にて、同時に情報を確認しながら鉄道チケットの手配をお願いした。

価格等について

 今回利用した列車は、NoorTrainという会社の列車である。おそらく、列車単位なのか車両単位なのか分からないが、ベトナムとかと同じような、ツアー会社が借り上げて運行する形態のツアー列車である様子。
 チケットの予約はできないが、列車のサービス内容については、こちらで見られる(ペルシア語だけど)。

https://noortrains.net/

 ちなみに、乗ったのはこの中での真ん中のクラス、5つ星エコノミーだと思われる。
 ペルシアツアーからメールで送られてきたチケットに印字された料金は、1人(1ベッド)あたり、2,526,500イランリヤル。日本円で800円くらいといったところだろうか。やっす!!!
 だが、実際にペルシアツアーに支払った金額は、12,000円である。これは、どういうことかといえばとりあえず、まずは1ベッドあたり3,000円の請求なのだが、貸切でないと当社では手配できないとのことで×4ベッド分で計12,000円の請求と相成った。
 およそ8時間の旅路であり、まぁ貸切なのは気楽で願ったり叶ったりではあるが、それにしても4倍近くとなかなか強気の請求ではある。キセルの増運賃より高い。…とはいえ、極端に情報が少ない中、現地の旅行会社と口角泡を飛ばして英語でバチバチやりあえる身でもないので、もちろん大人しく払った。
 なお、イスファハーンからテヘランなんて本来なら、一番観光客が使うような路線だと思われるが、列車の運行はかなり少なく、日によっては一本も運行がないバスは頻発しているらしいうえに、所要時間も6時間程度と、鉄道より短いので、医者が黙って首をふるレベルの鉄オタでなければ、他の交通手段の方が良いと思われる。

イスファハーン駅

 イスファハーンの街に別れを告げ、街の南の外れにあるイスファハーン駅へ向かう。

イスファハーン駅

 乗車予定の列車は、イスファハン14:30発のマシュハド行き夜行列車。途中のテヘランに22:52に着くそれまでの"ヒルネ"利用である。
 念のため早めに来たが、簡単な荷物検査がある程度だった。中には、待合用のベンチがたくさん並んでいる。

 なお、大きくはないが、土産物や飲食物を売るショップなどもあった。

 ちなみにチケットについては、あらかじめペルシアツアーから送られてきた。eチケット…ではなく、紙のチケットをスキャンしたデータがww これを印刷して持っていけばオーケーらしい。

开始检票!

 若干の不安を抱きつつ、発車時刻が近づき改札が開放されたので通過しようとすると、なんと改札口で止められてしまった!
 どうも、本人確認のために、改札通過前に、パスポートと照合して、チケットに係員からハンコを押して貰う必要があるらしい。本来であれば、荷物検査の時にしてくれるように見えたが、あまりに早く来すぎてスルーされたのかも。
 ということで、慌てて荷物検査のところにいるポリツァ的な人にハンコを押してもらった。

押されたスタンプ

列車に乗り込む

 無事、改札も終え、いよいよ列車に乗り込む。

 外観も内装もかなり清潔であり、なるほど高級列車であるらしい。この快適な列車なら、8時間などすぐ経ってしまいそう。共用のトイレも覗いてみたが、きれいだった。

列車通路
個室全景
通路側の上に荷物棚がある
水やアメニティが用意されている

 個室内には、スピーカーの調整つまみ等も備え付けられている。またコンセントも完備(Cプラグ220V)。

ボリューム&エアコン調整
室内コンセント

 個室内モニタでは、何故か日本の紹介ビデオが流されていたww

 四人部屋なので、2段ベッドになっている。下ろすとこんな感じ。

 寝具も備え付けているが、ヒルネ利用なのでなんとなく遠慮しておいた。枕だけ使わせてもらったけど。

寝具セット

車窓風景

 定刻通りに列車はイスファハーン駅を出発。

 走り出してしまえば、あとは日本と変わらない心地よいレールの音とともに、快適な鉄道の旅となる。だいたいスピードは120kmくらい。

 車窓は基本的にひたすら雄大な砂の大地が続く。たまに街があるとそこが駅。単調ではあるが、やはり鉄道で、それもこうして個室寝台車でただ一人車窓を眺めていると、まさしく、旅という感じがする。

 車窓からは、砂漠の中に未舗装の道があるのが見えるが、こんな道を通る車などいるのだろうか…と思っていたら、砂ぼこりを盛大にあげて走る車を発見。そのまま車のCMにでも使えそうな気持ちの良い走りっぷりである。

 せっかくの貸切なので、持ってきたポータブルスピーカーで、ペルシャ(パルス王国)の風景を眺めながら、ラピスラズリ/藍井エイル(テレビアニメ:アルスラーン戦記ED)を思う存分聴くなどしていた。最高かよ。

車内サービス

 ツアー列車なので、チケットに含まれた飲み物や食事等の配給がある。まず、部屋に置かれていたのは、水とアメニティセット。先ほど写真を載せたが箱の中身はこんな感じ。コーヒー紅茶や、ティッシュ、歯ブラシなどだ。

 また発車して程なく、ポット入りのお湯とフルーツセットが配られた。

 オレンジやりんご、そしてキュウリである。そう、ここイランではなぜかキュウリもフルーツの一種ということになっている。別に特段甘いわけではない。ただ、"胡瓜"という漢字が示すとおり、キュウリはもともとこちらが原産なのかもしれない。それもあってか、美味しいキュウリである。

 また、日が暮れると夕食の配給もあった。チェロウキャバーブ…でいいのだろうか?ご飯に肉を乗せたやつである。香ばしい肉にバターがとてもよくあい、付け合わせのピクルス等とともに、とても美味しくいただいた。

 なお、一応編成内には食堂車のような車両も連結されているが、営業しているのかどうかは不明。

食堂車

テヘラン到着~Atana Hotelへ

 そして、いつの間にかすっかり日も暮れてしまい、街のあかりも増えてきた。

 そして、無事テヘラン中央駅に到着。実は、チケットを手配した際、この列車はテヘランが終点ではないため、アナウンスも全部ペルシャ語だし、ガイドもつけないため、乗り過ごしを心配された。ただ、砂漠の小駅じゃあるまいし、首都の中央駅である。予想通り、降りる人も多く、全く問題なかった。そもそも、到着前にちゃんと個室まで案内しに来てくれたし。

テヘラン中央駅

 イスファハーン駅は案外小さくて拍子抜けしたが、流石にテヘランの駅は大きいにとても賑やか。ここからはライドシェアでホテルに向かうつもりだったが、残念ながら時間が悪いのか捕まらない。仕方ないので、駅の到着口付近にあったタクシーカウンターにてタクシーをお願いしたが、ライドシェアの2~3倍かかった。

 テヘランで泊まったホテルはAtana Hotelという1万円くらいのホテル。キレイでデザイナーズチックなホテルだった。

昼間の写真
部屋の様子
電灯スイッチ類もなんだかお洒落

 テレビ画面には、ホテルのインフォメーション画面が映し出されているのだが、ペルシャ数字が変わっていく様子はちょっと面白いww

おはようテヘラン

 もう、イラン滞在最終日。流石に短すぎて、もっといたかったなぁという感じ。

朝食
個包装のサフランナバット(サフラン入りシュガー)のスティックがあった
イランではこうやってチャイを飲むことが多い

 朝食後は、なんとなくイランのTVなんかを眺めつつ、準備。

テヘラン地下鉄乗車・街歩き

 ついでに、この日の観光についても写真を中心に載せておく。とはいっても、地下鉄に乗ったり、街歩き(バザール歩き)がメイン。

テヘランメトロ入り口
車内の様子
LEDの到着案内がついている編成もある
眠りこけている人もいるあたり、治安は悪くなさそうだ
通路に商品を並べた即席ショップが開店していることもある
こちらはおそらく公式の駅ナカショップ
編成の両端は女性専用車両となっている

 地下鉄駅構内もそうだが、街を歩いていると、楽器を弾く路上パフォーマーなどもみかけた。そろそろリヤルも余ってきていたので、お金を入れつつ、イランっぽい楽器のものを撮らせてもらった。後から判明したが、これは、サントゥールと言うイランの楽器らしい。

 調べたところ、こっちはバイオリンの原型になったケマンチェというトルコの楽器のようだが確証はない。

テヘランメトロ路線図。かなり路線網は充実している。

 なお、テヘランの地下鉄では非接触型ICカードが普及しているようだが、写真を見せて売って欲しいと有人きっぷ売り場で言っても売ってくれなかった。在庫が限られているのかもしれない。仕方ないので、めんどくさいがチケットを都度購入することとなった。

 その他、バザールの風景などもここで載せておく。

"パン粉"

 日中は暑いため、街中に点在するジューススタンドでフルーツジュースを飲んでいた。イランは果物が美味しいのでオススメ。また、イラン、特にテヘランについては、3000m級の山の雪解け水が水道水のもととなっているという特性上、水道水が飲めるところとして知られているため、おそらく衛生上とかも問題ないと思われる。

在テヘラン旧アメリカ大使館

 テヘランに来たら、やはりまずは行っておきたかったのが、こちら。まだアメリカと国交があった頃のアメリカ大使館である。現在はなかなか強烈な反米博物館となっている。

最寄り駅はタレガニ駅
敷地の外壁には反米プロパガンダが描かれている
博物館入り口
有名なドクロ女神
大使館入り口
リベラリズムの終焉

 なかなかこういう反米に振り切った博物館はなかなか観られない気がするので、興味があれば行ってみるのも良さげ。また、純粋にここまで大使館を赤裸々に公開されている場、としても興味深いかも。当時の諜報用機械などを見ることができる。

盗聴防止用の部屋
重要区画の分厚いドア
大使の椅子
博物館の中にもプロパガンダ系が展示されている
アメリカ人でもトランプを"捨てたい"人は多そう()
おそらく米帝と戦った数々の英雄たち、みたいな展示

ゴレスターン宮殿

 一応、世界遺産的なところも観に行った。ガージャール朝時代に築かれた宮殿、ゴレスターン宮殿である。

宮殿入り口

 ただ、なんと入場料が650万リヤル。2000円近くもする。後から調べてみると、その入場料の高さに敬遠する人も多いようだ。リヤルが余り気味だったため、入ったが。

 中は、とにかく頭がおかしくなるくらいキラキラした豪華絢爛な宮殿や、インスタ映えしそうなスポットなど。せっかくなら入ってみるのが良いと思う。

 ペルシャ猫…ではないと思うがペルシャのぬこもいた。

 テヘランについては、こんなところだろうか。特に、地下鉄が便利なのがとても観光には頼もしかった。おそらく、イラン専用の旅行者用プリペイドクレジットカード(そういうものがある)とかがあれば、簡単にICカードなども買えるのかもしれない。まぁ一番は経済制裁が解除されることだが。次回訪れた際には、是非とも挑戦したい。

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