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サイバーステップの許されるライン・許されないライン 『滴るあの娘』がe-shopから消えた理由を考える(ネタバレ感想&エロ要素有)


前書き

 近年ではゲーム開発及び販売のハードルが下がり、個人制作でも容易に発表し販売する場が増えている。PCであればsteamには膨大な数のゲームが並んでおり、またCS機においてもハードを問わず数多くのゲームが販売されている。マルチプラットフォーム展開されることも非常に増えた。サイバーステップのPandaShoujo作品は主にニンテンドーSwitchとsteam、そしてDLsiteで展開されている作品群だ。
 今回取り上げるPandaShoujo作品はニンテンドーe-shopから消えた、つまり配信停止措置を受けたゲームである。タイトルは『滴るあの娘 ~Drenched Girls~(steam版のリンク)』。2023年10月26日に配信開始されたが、その後配信停止となり今でもe-shopからは消えたままだ。
 元タイトルは2017年10月27日にノアールソフトより発売された『白濁娘〜気になるあの娘にマーキング〜』(公式サイト。18禁なのでアクセス注意)という。
 今回は滴るあの娘がどうしてe-shopから消えてしまったのか、移植前と後を比べながら考えていきたい。いつものように元になったゲームを原作、PandaShoujo製はPS版と記述する。

ゲームが配信停止となる理由

 割と寛容なイメージのあるe-shopではあるが、やはり問題のある作品に関しては配信取りやめになる事がある。

 例えば権利関係。エイチユーピーゲームズのアクションRPG『ファイナルソード』はBGMがゼルダの伝説の『ゼルダの子守歌』をそのまま流用していたため配信停止となった。権利に問題が無いはずのアセットを購入したところ、アセットショップ側が盗作していたことが後で判明したからだ。現在はBGMが差し替えられて『ファイナルソード DefinitiveEdition』として配信が再開されている。
 またQubicGamesの『One Strike一騎打ち』もファイナルソードと同じく、無許可で別のゲームの音楽を収録していたため一時配信停止、楽曲を差し替える事で配信が再開された。

 レーティングの問題。カナダの個人開発者LocalThunkによって作られたデッキ構築型ポーカーゲーム『Balatro』はギャンブル要素が含まれているという事で、レーティングが突如としてIARC:3+から18+への引き上げが行われ、そのせいでe-shopから姿を消した。この記事を書いている時点でも日本ではSwitch版の配信は再開していない。

 表現の問題。qureateのタワーディフェンスゲーム『Duel Princess』はさすがに内容が性的すぎたのかe-shopから姿を消し、現在ではDLsiteでのみ購入出来る。メーカーの発表では「諸事情」と言っているがエロすぎるからNGを食らったと考えるのが自然だ。

 ではサイバーステップの『滴るあの娘』は一体どこが駄目で配信停止となってしまったのか。やはり元がエロゲーであるがゆえの表現の問題だったのだろうか?

原作について(汚いので注意)

あらすじ
>主人公、白井凌は女好きだが全くモテず
>自身の内に秘める性欲を解消できずに居た。

>ある放課後、クラスでも一目置かれる存在の西墻みことが居眠りをしていた。
>声を掛けても揺すっても起きない彼女を前に、魔が差してしまった凌は…
(公式サイトより一部引用)

 以前紹介した作品のようにリビドーに忠実すぎるあらすじなので、一部だけの引用にとどめておいた。
 今作も実用性に特化した作品となっている。シチュエーション的にかなりマニアックな内容であるため、好き嫌いが極端に分かれると思われる。
 今作は非常に汚いので注意して欲しい

 以下が登場人物の紹介となる。4人しかいないのですぐ終わる。

  • 西墻 みこと(にしがき みこと CV:朝井こもも) クラス委員をしている優等生の女子。しっかり者で明るく優しい性格。読書が趣味。夜更かししたことで寝不足となり、うっかり教室でうたた寝してしまう。

西墻みこと。すごい名字。全国に200人くらいしかいないらしい
  • アスカ=ディアノーズ(CV:いねむりやすこ) アメリカ人と日本人のハーフの女子で、主人公の隣家に住んでいる。明るく人懐っこい性格でスポーツ万能。オタク趣味がある。

アスカ=ディアノーズ。片言の日本語で喋る。日本食は苦手
  • 嶋村 幸穂(しまむら ゆきほ CV:南十字いっせい) 近所のアパートで大家をしている女性。おおらかなタイプで包容力がある。スタイルが非常によく、周囲の男性からは女神と呼ばれているらしい。

嶋村幸穂。アパートをマンションに建て替えるため勉強をしている
  • 白井 凌(しらい りょう) 主人公。女性とあらば名前が分からない相手でもどんどん告白するデリカシー皆無の男。非常に特殊な性癖と旺盛な性欲の持ち主であり、またかなりの変態。

 ゲームを開始してすぐ、主人公である凌の白濁、つまりぶっかけに対する熱い情熱のこもったモノローグが始まる。この時点でだいぶ篩いにかけられている感覚がある。

開始10秒でこれ

 凌はとにかく女の子にぶっかけたくてたまらないらしい。彼女を作ってぶっかける、そのために片っ端から女子に告白しては断られるの繰り返しだ。クラス委員の西墻みことに注意されようがお構いなしで、みこと本人にも幾度となく告白してはにべもなく断られている。

 そんなある日、凌は寝不足のみことが放課後の教室でうたた寝しているところに遭遇する。隙ありとばかりに寝ているみことの顔に向けてぶっかける凌。やってしまったと思ったが、目覚めたみことは自分のされた事に気づいても大事にしないままだった。この時点でかなりおかしな展開なのだが、ここで成功体験を得てしまったことで凌の行動はエスカレートしていく。

みことにぶっかけて逃げてしまった凌
間違いなく犯罪者だよ大馬鹿野郎

 その後、凌はさまざまな手段を用いてみこと・アスカ・幸穂の3人にぶっかけを敢行する。女子更衣室に忍び込んで制服にかけたり、ケースに精液を入れて持ち運び隙を見て背後からかけたり、飲み物に睡眠薬を混ぜて眠らせた相手にかけたり。
 凌のやったことをいちいち列挙していると本当に文章が汚くなるので、残りは割愛させてもらいたい。とにかく凌のやることなすこと全てがぶっかけに結びついており、全編通してやたらと精液が出てくる。そういうコンセプトのゲームなのだから仕方ないのだが

 EDは各キャラクター2種類ずつなのだが、EDの中でも多少差異がある。そこまでの選択肢で

  1. こっそりぶっかけを続ける

  2. 無理矢理続ける

  3. ぶっかけはやめて真剣に交際することを望む

という3種類が定期的に現れ、どの選択肢を選んだかでヒロインのルートが変わる。例えば3.ぶっかけはやめて真剣に交際する事を望むを選び続けると幸穂の個別ルートには入れなくなる。2.の無理矢理続けるを選ぶと攻略対象がアスカと幸穂になるのだが、これはかなり胸くその悪い展開になるのでプレイする際には注意が必要だ。
 以下に各ヒロインのEDを簡単に説明する。

  • みことルート

    • 悪戯ED 今まで凌のやってきた事はみことにバレていた。ぶっかけられるうちにそれが快感に変わってきてしまったみことはこれからも凌に汚されることを望む。凌はみことをいたずら相手としか思っておらず、恋人同士でもない奇妙な関係が続く。

    • 恋人ED ぶっかけをやめて真剣にみことと交際したいと考えた凌は、これまでの態度を改めてみことのみに告白を続ける。3日で折れたみことと交際が始まる。みことは学校を卒業したらすぐに子供を産みたいと言い出し、卒業したらそのまま結婚し妊娠してしまった。

  • アスカルート

    • 断罪ED みことから「アスカは普通に告白するより強引に行った方が可能性がある」と言われた凌は暴走、力ずくでアスカの純潔を奪ってしまう。しかし凌のやったことがみことにバレてしまい逆襲を受け、最後はアスカとみこと二人のオモチャにされてしまった。

    • 恋人ED アスカに真剣に交際を申し込む凌。どうも両思いだったらしくすぐにカップル成立。今までのいたずらの数々を思い出して罪悪感を抱いた凌はアスカとの関係に悩むが、割と簡単に仲直りした。

  • 幸穂ルート

    • 断罪ED 性欲が暴走した凌は幸穂を襲う。強引なやりかたで関係を続けていたが、事態が発覚して警察沙汰に。凌は逮捕され家族からも見放されるが、幸穂はそんな凌を見捨てていなかった。

    • 悪戯ED 凌のいたずらに気づいた幸穂はいつの間にか凌に惚れていたらしく、付き合っているのかいないのかよく分からない状態で体の関係を持つようになる。

原作の感想

 正直プレイするのがしんどいゲームであった。ぶっかけという要素自体は別にいいのだが、主人公である凌のやっていることが悪辣すぎて興奮する以前に引いてしまった。EDもいい加減な出来のものばかりだ。いつの間にか色情狂みたいになるヒロインたちの変節についていくのも厳しい。
 また気になったのは学校側の対応だ。女子生徒の体や持ち物に体液がかけられるという重大事案に対して学校関係者の動きがほとんど描写されていない。凌のいたずらでバケツ一杯の精液風ローションをぶっかけられたみことに対して、「妙な事をするヤツがいるもんだ」くらいの応対で済ませたのを見たときは何かの冗談かと思った。
 無理矢理ルートはアスカ・幸穂ともに本当に胸くその悪い展開が続く。アスカのEDでオモチャにされた凌が「こんなの納得いかない」みたいな事を言っていたが、正直ざまあみろとしか思わなかった。幸穂ルートでは何だかんだで収まるところにところに収まっているのも気に食わない。

 これをどうやってニンテンドーSwitchに移植するつもりなんだ、サイバーステップは。

PS版ではどう変わったのか

 原作が抜きゲーである以上、全年齢向けにするにはかなりの改造が必要になる。PS版にするにあたり、それなりに変更が加えられた。

  • 基本設定の見直し 凌の性癖が白濁から液体に濡れた女の子好きになった。つまり精液ではなく水で濡れていてもOKということだ。ただ、人に水をかける事自体犯罪であることには変わらないので悪質度では変わっていない。

  • 実行できない、しないシチュエーション 飲み物に睡眠薬を混ぜて眠らせる、トイレの覗き、女子更衣室への侵入などの展開は軒並みカットされた。また、居眠りしているみことに対して原作ではぶっかけていたが、PS版ではバケツに汲んだ水をかけようとした時点でみことが目を覚ましてしまい未遂で終わる。原作で容赦なくぶっかけていたシーンでも、「やろうとするが出来ない」または「やっぱりやめておこう」で済ませるシーンが増えた。ただ、このせいでゲーム内の描写と齟齬が出てしまっている(後述)

  • EDの改変 原作では各キャラクターに2種類、合計6つのEDがあったのだが、PS版では幸穂のEDが悪戯EDのみとなり計5つとなった。各EDについて簡単におさらいしようと思ったが、基本的に原作のEDからエロシーンを除いただけのものでしかない。これも前項と同じく、エロシーンをカットしたため描写と齟齬が出てきてしまっている。

 PS版の凌は水をかけるいたずらをしようとするものの、すんでの所で思いとどまるケースが増えたため思った以上に問題となるような行動を起こしていない。「女子生徒へ水をかけるいたずらが頻発している」ような描写がされているのだが、未遂を除けば明確に水がかけられたのは2回だけだ。短期間で2回なのだからギリギリ頻発と言っていいのかどうか迷うところである。また、幸穂に対してはチャンスが幾度もありながら一度も水をかけていない。

 原作のアスカ断罪ルートでは、外道過ぎる行いをする凌に対してみこととアスカによる制裁が行われる。しかしPS版では描写を削ってしまったせいで「ちょっと強引な態度を取ってアスカに言い寄ろうとした」だけの凌が原作と同じように外道のような扱いをされ、最後に報復されてしまう。エロシーンをカットした弊害である。実際強気で行こうとした凌だったが勇気が出ず、原作のように押し倒してアスカの純潔を奪うような無茶な真似はしていない。ことあるごとに二人して何かやっていたようではあるが、描写がないため「なんで凌とアスカはこんなギスギスした空気になっているのか」「みことに撮られた動画とは何だったのか」は分からずじまいだ(原作だと何をしていたかの詳細な描写があるため報復されるのは仕方ないのだが)。

 また恋人EDでのアスカとの仲直りに関しても、「やらかしてしまった事を悔いてアスカに向き合えなかった凌」がいつのまにか仲良くデートして「これからもアスカを大事にしていきたい」と決意表明して終わっている。原作だと仲直りするのに何度かのエロシーンが挟まれていて、このおかげで関係修復が出来ていたのだが。

 総じて言えるのは、エロシーンをカットした後のつじつま合わせの作業が足りていないということだ。全年齢向けとして健全な内容になっているはずなのに、なぜか原作のようなエロゲー感をそこかしこに感じる。エロシーンだけカットしてテキストをそのままにしておけば不自然な展開になるに決まっている。睡眠薬を飲ませられないから凌と一緒にお昼寝すると言い出して寝入ってしまう幸穂、一緒に話をしているうちにいつの間にか居眠りしてしまうみことなど、なんでそうなるのか分からない描写が多い。

結局何が原因でe-shopから消えたのか

 原因については想像するしかないが、おそらく「女性に水をかける」という行為とそれに興奮する主人公という設定そのものが問題視されたのではないだろうか。前述の通り、体液だろうと水だろうと他人に液体をかけることは立派な犯罪である。

 ただ、犯罪者指向のゲーム=配信停止というのも短絡的な考え方なので、他にも何かしらの問題があったと考えた方がよいのかもしれない。Switchで犯罪行為をモチーフにしたゲームなら『シリアルクリーナー ジョージの裏シゴト』なんてゲームだってあるし、有名なHITMANシリーズも配信されている。

 ここからは私の個人的な考えを書きたいと思う。これは私の主観が多分に入っており、また感覚的なものであって証拠や根拠は全くないということをあらかじめ断っておく。
 前項で「全年齢向けとして健全な内容になっているはずなのに、なぜか原作のようなエロゲー感をそこかしこに感じる」と書いた。これがまずかったのではないかと勝手に思っている。取り立てて大きな出来事が起こっていないにも関わらず、やけにじめっとした登場人物のリアクション。断罪EDにおける明らかに性的な被害を受けていそうなアスカの態度。描写がないのになぜか発情し始めるヒロインたち。
 そういうエロゲーの匂いを脱臭しきれなかったのが原因だったのではないかと考えてしまった。実際遊んでみて「これエロシーンがないだけのエロゲーじゃん」と思われてしまった、と考えてみたらどうだろう? DLsiteやsteamでは許されても、天下の任天堂のe-shopでは許されなかったのではないか。

終わりに

 PandaShoujo作品では他にもe-shopで取り扱っていない作品がある。『ハッピーパパサポート!~Sugar Daddy Support~(steam版リンク)』と『コスプレリラクゼーション - Cosplay Relaxation(steam版リンク』だ。これらはどちらも問題点が非常に分かりやすい。前者はパパ活(というより援助交際)を題材にしている、後者は風俗店を題材にしているのが丸わかりだからだ。世界中の老若男女が楽しむニンテンドーSwitchには不向きだったということだ。

 余談だが、私は本作の滴るあの娘をDLsiteで購入してプレイした。しかし本作はこれの原作ゲームと同じく右クリックが左クリックと同じく決定ボタンとなっており大変不便な思いをした。こういうところはちゃんとやってくれと願う次第である。

 最後に、凌の自室のデスクに置いてあるデカすぎるPCモニタの画像を見てお別れにしたいと思う。

滅茶苦茶目に悪そう

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