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語彙力をあげるかもしれない「勝手に考察トレーニング」

これは フェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 2021 7日目の記事です。

コピーライターが、自分の仕事に対する評価でショックを受ける言葉あるあるを言います。

「なんか、どっかで見たことあるよね」

「でも!入れる言葉は決まってるし!文字数もこんなに少ないから表現できることは限られるやん?」などと、一旦は自分を正当化してみたりしますが、こういうフィードバックを受けるときは、自分でもあまり自信がないときが多いです。

言葉をどう組み立てるか、装飾するか。そもそも、その言葉は他に言い換えはできないのか?という発明をするのがコピーライターの仕事なので、それが出来ていないことを素直に認めて、別案を考え続けるしかありません。

そのためにも、言葉、表現の語彙を増やすことを意識して生活しています。語彙が増えると、「これはよくある手法だから避けよう」という判断もできますし、新しい表現の開発にもつながります。これはコピーライターだけではなく、クリエイティブ職につく全ての人に共通することかもしれないですね。

ただ言葉を集めるだけではなく、コピーにこめられた意味を自分なりに、勝手に考察します。合っているかどうかはあまり気にせず、とにかくでたらめでもいいから考察してみることが、語彙力をあげるトレーニングになっているのかなと思っています。

他の方が書いたコピーを評するような立場にはないですし、公の場でこういうことを書くのは苦手で、普段は紙のノートに書き留めているだけなんですが…アドベントカレンダーのネタに悩みすぎてしまったので、勇気をだしてこのテーマで書いてみることにします。


憧れの「倒置法」

ここ数年のポカリスエットのCMは、学生が持つ強さ、輝きが表現されたビジュアルが印象的ですが、自分が主人公になったと感じられるようなコピーワークも素敵です。

今年の春に公開されたキャッチも、とても印象に残るものでした。

手をのばそうよ。届くから。

様々な思いが込められたメッセージだと思いますが、コロナ禍で思い描いた学生生活を送れていない若者を、同じ立場で応援するようなコピーだと私は感じました。

大人にとっても、学生が希望を持って未来をつくることは大きな救いになります。なのでこれは、若者だけに向けられたコピーではなく、幅広い世代を元気にするコピーだと思っています。

また、「手を伸ばせば届くよ。」ではなく、倒置法のような言い回しで「手をのばそうよ。届くから。」と表現することで、上から目線ではなく同じ目線のメッセージになっているのではないかと。

言葉の順番が違うだけで伝わり方が全く異なるのが、キャッチコピーのおもしろいところです。

倒置法って、何となく良い雰囲気になるから手を出してしまいがちなのですが、使い方を間違えるとすべってしまう危険な手法だと私は思っています。なので、こんな風に、さらっと倒置法を使ったコピーを見ると興奮しますね。

続きを想像させるテクニック

記憶に新しいところでいうと、10月に公開された日本ガイシの広告も、倒置法を使ったコピーが話題になりました。

小さな電池です。
可能性の大きさに比べれば。

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謙遜しながらも自社の製品に誇りを持っていることが、押しつけがましくなく伝わる、素敵な倒置法の表現だと思いました。

このコピーで私が好きなポイントは、「まだ続きがある」と感じさせること。たとえば「小さな電池で、大きな可能性をつくっています。」だとすると、そこで物語が終わっているようにも読み取れます。

「可能性の大きさに比べれば〜〜」の後に、様々な出来事が続いていくような、その先を想像させながら体言止めで終わらせるというコピーにしびれます。

かっこいい人に言わせたい

広告ではないのですが、現在放送中のドラマ「アバランチ」は、台詞の言い回しに倒置法が多いなと思って観ています。

第4話で、悪を裁く謎の組織“アバランチ”の秘密に迫りたい福士蒼汰(西條)と、アバランチの主要メンバーである綾野剛(羽生)が対峙するシーンで、綾野剛がこう言います。

「聞きたいか?西條君。なぜアバランチができたかをー。」

日常生活ですんなり言葉にするなら、

「西條君、なぜアバランチができたか聞きたいか?」

という具合になると思うのですが、ドラマのミステリアスな雰囲気の中、タバコをふかしながら綾野剛が言う台詞なら断然、倒置法だと思うんですよね。言わせたくなるの分かる〜〜。

もうすぐ最終回を迎えてしまいますが、台詞にある倒置法を探しながら観るというのも、新しい楽しみ方かもしれません。(?)


ヒット曲に学ぶキャッチコピー

曲のタイトルは、いわば曲をプレゼンするためのキャッチコピー、あるいは要約。ヒット曲のタイトルを考察することも、表現を学ぶ良い方法だと思います。

80年代の大名曲 君に、胸キュン。(YMO)。

サビがそのままタイトルに使われているんですが、歌詞カードをみると、本編の歌詞には「君に胸キュン」と書かれていて、句読点はありません。

広告のキャッチコピーはよく、句読点を入れることでリズムをつけたり、言いたいことを強く表現します。「君に、胸キュン。」も、タイトルに句読点を入れることで、メロディー、歌詞、YMO3人のカリスマも全てパッケージしたような広告的なタイトルにしたのかなと。恐れ多くも考察しています。

もうひとつ、80年代のヒット曲で衝撃的なのは、ハイスクール奇面組のOPでおニャン子クラブのユニット“うしろゆびさされ組”が歌ったこの曲。

渚の『・・・・・』(うしろゆびさされ組)

なぎさの かぎかっこ と読みます。

曲を聞くと分かると思いますが「渚の〜かぎかっこ〜♪」と歌われている「渚の〜」のあと、何かメッセージめいた余韻、余白があるんです。その余白を『・・・・・』(かぎかっこ)と表現するセンス。80年代の秋元康、無双!

最近のヒット曲のことにも触れておきます。

東京リベンジャーズのOP曲としても注目された、Official髭男dismの「Cry Baby」。

1番、2番の歌詞のクライマックスはそれぞれ「土砂降りの夜に 誓ったリベンジ」「光った瞳の中で 誓ったリベンジ」となっていて、東京リベンジャーズのOP曲ということも踏まえて「リベンジ」というタイトルにしたくなると思うんですよね。

タイトルのCry Babyは弱虫/泣き虫という意味で、強さの対局にある表現ですが、「弱いからこそリベンジができる」というメッセージのように感じます。

ストレートなタイトルも良いですが、ストーリーを感じさせるタイトルの付け方は、コピーを書くときの参考になります。アーティストすごいぜ。


全員がしあわせな言葉を選ぶ

昔に比べて、今は表現のチェックが厳しくなったと言われています。

でも、どんどん新しい言葉が生まれているのに、誰かを傷つけるかもしれない言葉、表現をわざわざ使う必要はないと私は思っています。

もし間違ってしまっても、様々なことに目を向けていれば「間違っていた」と気づけますし、たくさんの語彙を持っていれば、訂正するための適切な言葉に言い換えられるはず。

まだ知らないことがたくさんあって、間違ってしまうこともあるかもしれないけど、とにかくたくさん語彙を増やして自分で理解をして、全員がしあわせな言葉を選ぶことを、この先もずっと目標にしていきたいです。


ブランディング部 / デザイン開発部 コピーライター:高島