見出し画像

あがく価値

熱のある日に見る夢は決まっている。
その夢を見ながら、脳みその寝ずの番をしている辺りが、「これを見るからには、熱が出ているんですよ。」と眠っている私に告げている。

細い針の小さな小さな穴に、さぬきうどんのような極太の毛糸を通そうとしている。
通るはずはないのだが、通さねばならないと思い決めている。
不可能と知りつつ、手に持った針と糸を置くこともせず、握りしめたまま固まっている。
そして、寝ずの番人もあきれるほどに、私は思っているのだ。
不可能に見えても、何か秘策があるに違いない、と。

けれど、当然ながら秘策など思いつかぬまま、覚醒する。
子供の頃から、ずっと変わらぬ発熱の夢。

下手の考え休むに似たりと言われるが、下手の考えも無駄ではない、と思っている。
考えて導き出した結論の正誤より、下手が下手なりに考えている過程に、何か「あがく価値」のようなものがあるのではないか。

いつか。
あの針にあの糸を通せるかもしれない。
けれど、通せたときが終わり、という気もしている。

読んでいただきありがとうございますm(__)m