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詩『とあるロック・スター』

誰もが一度は感じたことを
さも初めてのように感じ
誰かが作ったイントロと
誰かが作ったコード進行と
誰かが作ったメロディを
誰かが作ったエレキギターと
誰かが作ったマイクスタンドで
誰かに似た声で歌って
誰かを知らない誰かが
天才と褒め ブチ上がる

バカらしい バカらしい
こんなバカらしいことはない
それなのに それなのに
こんないとおしいことはない

私がこんなことを言っても
あなたはまったく気にしない
あなたはまったく動じない
私の声など聞こえていない
自分のことだけ信じているから

そんなあなたは
2弦のないギターで
全てをまるまる変えてしまった


誰のせいにもできないことを
ヘラヘラ笑って受け流し
誰かが作った信号と
誰かが作った横断歩道と
誰かが作った街並みを
誰かが作った赤チョーカーと
誰かが作ったストアブランドで
誰かに似た靴で歩いて
誰かを知らない誰かが
個性的だと 盛り上がる

バカらしい バカらしい
こんなバカらしいことはない
それなのに それなのに
こんないとおしいことはない

私がこんなことを言っても
あなたはまったく気にしない
あなたはまったく動じない
私の声など聞こえていない
自分のことだけ信じているから

そんなあなたは
威厳のない態度で
私をまるまる変えてしまった

(作成日:2024/8/9)

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