伝説のロックバンド「ザ・マスター・ジェイルス」4

今回の登場人物

・ジョン・ペイレン(Vo)
   マックィーンをバンドに誘う

・ジョン・マックィーン(Gt)
   バンドリーダー兼 主人公 兼 語り手

・エド・バルヴィン(Ba)
   常識人

・ジム・ロック(Dr)
   キ〇〇イなドラマー

 そんな感じでメンバーは集まった。でも曲は全然できなかった。作曲担当はジョンだったけど、こいつがまあ才能がなくてさ。

 そりゃ、あいつの歌声は唯一無二で、すっげえいい声だよ。でも曲作りってなるとまるでダメだった。作詞は俺がしてたんだけど、お前のしてることはラクそうだって言われてさ、何回か喧嘩になったよ。


「いいか! 文字なら誰でも書ける。でもメロディなんか書こうとしてみろよ、こんなイカれた作業ねえぜ!」

「お前が曲作りたいって言ったんじゃねえか! 文句あるならバンドなんかやめようぜ」

「ふざけんな! 絶対やめねえぞ」


 まあそんなふうに揉めたあと、色んなロックの代表曲のカバーをやろうぜってことになった。特にマスターズ(※マックィーンとジョンの憧れのバンド)はよくカバーしたよ。

 俺たち四人はザ・コーディーズって名前でバンドを組んで、ジョンの家で練習してた。広さで考えりゃ俺の家でもよかったんだけど、おふくろがうるさいからさ。

 練習のとき、ジムはだいたいいっつもふざけてた。まともにドラムを叩こうとしねえんだ。スティックぶんぶん振り回して、ドラムじゃなくて俺らを叩こうとしてきたりさ。今思えば、ちょっとクスリの影響もあったんだと思う。

 で、ジョンがジムにキレるんだよな。「代わりのドラマー探してくるぞ!」っつってな。そしたらジムは急に強張った顔になって、真面目に叩き始めるんだ。そしたらすげえ上手いんだよ。で、ジョンの気が落ち着く。そしたらジムがまたふざける。その繰り返しだった。

 俺はバンドのリーダーだったんだけど、ほんとに大変だった。ジョンとジムのことは、いつだって俺がなんとかしなきゃいけなかった。あんなでけえガキ二人も連れてさ、毎日色んなレコード会社に行って、契約を頼み込んだんだぜ。エドがいてくれなかったら、マジで心折れてただろうな。


 俺たちは、路上でライブもした。誰もちゃんと聴いてなんかくれなかったけどさ。ジョンは少しでも注目を集めるために、歌いながら自分の頭をマイクでガンガン殴ったけど、キチガイがいると思われて、素通りされるだけだったよ。

「チキショウ、早く有名になりてえ」
 これがあの頃のジョンの口癖だった。


 ジムは、オーナー・レコードとの契約だけは嫌だと言い張ってた。


「おいマックィーン、あれな、契約するならオーナー以外のところな」

「なんで? なんでそんな、あそこにこだわるんだ?」

「だって、あそこはマスターズがいるとこじゃねえか」

 そうなんだよ。オーナーはマスターズを輩出したことですげえ有名な会社だった。だから俺とジョンはむしろそこが良かったんだけど、どうしてもジムと意見が合わなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?